叔母が諦めとともに結婚して二年が過ぎた。
東京支店を立ち上げたけど売れない。
なんせ叔父は変わってる。
学生なら許されても社会人としては無理だった。
そのうち岩手の本家が倒産。
そのショックで叔父は心臓マヒを起こした。
命は助かったが叔母は母親と心臓の大手術をかかえる夫を持つことになったのだ。
夫の実家からは援助はない。
あるのはもと芸者だった養母の銀座へのこねたけ。
ホステスはしたくなかった叔母は会計専門係りになった。
数字には強い。美人だ屁理屈をいうのも面白いとお客さんが店に出ろよと口説き出す。
夫の手術にお金はかかるし叔母は店に出るようになった。
憎いとまで思った養母は「好きでしよ。かぼちゃこしらえるわ」と後ろを向いて五分の間にひつそりと心不全を起こして亡くなったの。
銀座を辞めて乾物屋が軌道にのりはじめてやっとホッとした私の40歳の時だったわ。
人間って5分で死んじゃうのよ。
かぼゃは長いこと食べなかった。
憎いなんていっててもね、お袋はいい女よ。優しくて単純。
私はこれでもあの母が好きなんだよ。親戚は信じないけど。
私は信じてる。
叔母と養母は仲の二人だ。
戦争もなく女性の職種が今のように確立してたら叔母は「全く、お袋は」と文句をいいなから楽しく過ごしてしたにちがいない。