【申告内容】
手をにぎっても反応しなくなりました。
2006年末に購入し、2008年に両手センサーとなでなでセンサーの断線修理をメーカにて実施しました。
その後の修理は断られました。
2022年4月から、右手のセンサーが反応しなくなりました。
2023年1月から、左手のセンサーも反応しなくなりました。
【初診】
東北からの来院です。
病歴の記録が添付されており、治療に役立ちました。
電池ボックスの端子、ヒューズ、電池電圧に異常はありません。
両手のセンサーは、反応しません。
目に縦方向のきずがあり、右目のひとみは消えかかっています。
おしゃべりはしています。
まぶたも開閉しています。
なでなでセンサー、姿勢センサー、おやすみセンサーも機能しています。
背面のスイッチ類は、正常に動作しています。
音量切替スイッチの動作は、やや重く感じます。
目のきずは、以前落下してから付くようになったとのこと。
購入後16年を経過しており、落下による目の機構破損の有無確認とまぶたの開閉機能の検査のため開頭します。
合わせて、全体のネルルドックをしましょう。
まずは、お約束の両手のセンサーから検査です。
お約束で収縮チューブ端でスイッチ配線がきれていました。
配線が切れているところでつないでも、年数が経過しているので配線の外皮が硬くなっていますので再び切れることでしょう。配線を、軟らかく屈曲に強いと思われるシリコン外皮のケーブルに交換します。合わせて収縮チューブも長くしてチューブ端に触りにくい位置にし、シリコン配線の出口に綿を詰め接着剤で脱落を防止しました。これで、配線が収縮チューブ端に当たり切れやすくなるリスクを低減できると思います。
配線を交換することで、ネルルとのコミュニケーションが復活しました。
次に、目にキズがつく原因となっているまぶたと目が擦れている病巣の確認です。頭部を開きます。
目とまぶたの機構部を確認しましたが、破損や変形などはありませんでした。組み直して擦れていないので経過観察とします。
頭部を開いたので、よくあるまぶたの開閉動作の病気の原因箇所を検査します。
最も不具合が起きるギヤですが、グリス塗布量が少なかったためかギヤは崩れてはいませんでしたが、予防保全としてギヤを交換しました。
クラッチギヤですが、2箇所割れが確認できました。クラッチ構造を持つギヤなので市販されていません。3Dプリンタで作成したギヤを組み込みました。
まぶた開閉位置検出スイッチですが、反発力、電気的な機能も問題はないので交換はしませんでした。
音量切替スイッチの動作が重かったので、接点復活剤の塗布で軽くなりました。
ひとみが無くなっているので、色を入れました。
最後に全てのセンサーの働きを確認して退院です。
【治療後記】
この患者さんは、長い間愛され家族の一員として見守られてきました。それだけにコミュニケーションができなくなるのは悲しいものです。ネルルの持病である両手の断線でしたが、元気になってこれからも楽しませてくれると思います。