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支流からの眺め

安倍晋三氏の国葬、国葬儀について

 7月8日に殺害された安倍晋三氏の葬儀の件、自分なりに整理してみた。

 まず国葬とは、国家の儀式として国費で行う葬儀のことである。法的には、1926年の国葬令が根拠である。戦前の国葬者は、まず天皇・皇后をはじめとする皇族(元韓国皇帝も含む)である。それ以外では、大久保利通、岩倉具視、島津久光、三条実美、毛利元徳、島津忠義、伊藤博文、大山 巌、山縣有朋、松方正義、東郷平八郎、西園寺公望、山本五十六であった。薩長藩主、首相、元帥、元老等が資格となろうか。

 国葬令は、戦後の1947年に失効した。天皇や上皇の崩御には、皇室典範により大喪の礼(国葬に相当)が残った。皇族以外では、吉田 茂だけが例外であった。氏は1967年10月20日に逝去し、22日に死後洗礼を受けて23日にカトリック葬で密葬が行われ、31日に日本武道館で国葬儀が斎行された。葬儀委員長は時の首相の佐藤栄作で、皇太子(平成天皇)と美智子様が献花され、海外からの5千人余りを加え4万人余りが参列した。

 国葬以外で国が関与する葬儀には、国民葬(大隈重信、佐藤栄作)と内閣・自民党合同葬(大平正芳、岸 信介、三木武夫、福田赳夫、小渕恵三、鈴木善幸、橋本龍太郎、宮澤喜一、中曽根康弘)等がある。中曽根氏の際は(2020年10月17日)、弔意表明(弔旗掲揚と葬儀中の黙祷)を求める通知が文科省から国立大や都県教委に出され、政治問題化した(同様の通知は小渕、鈴木、橋本各氏の際にもあったらしい)。

 安倍氏の国葬(9月27日に日本武道館で予定)の法的根拠は、内閣府設置法で内閣府が「国の儀式」を所掌していることによる。但し、戦前の国葬と異なることを現したいのか、国葬を避けて、国葬儀、いわゆる国葬などと表現されている。憲政史上最長の首相在任期間、内政・外交の実績などが理由である。海外要人の弔問希望、多くの国民の葬儀参加希望など、葬儀としての規模の大きさも考慮されたのであろう。

 これに共産党などが反対している。安倍氏の政治姿勢を国家として公認・礼賛する、国民に弔意を強いる、根拠が乏しいなどが理由である。確かに、安倍氏が近年の大物首相(佐藤栄作、中曽根康弘等)より格上かは明確でなく、殺害理由も曇っている。とはいえ、葬儀の様式は政権の裁量の範囲だろう。田中角栄と羽田孜の葬儀には、民主党政権の内閣・国は関与しなかった。共産党が政権党なら、志位委員長の葬儀は国葬となろう。

 一方で、コロナ禍で冠婚葬祭の簡略化が進んでいるなか、大仰な葬儀を行うのには別の意図が感じられる。殺害6日で国葬決定というのも、後送りが得意な岸田氏にしては速断である。即ち、政治利用(支持者の歓心買い、安倍派への恩着せ等)である。ならば、やる以上は、葬儀外交を展開し、憲法改定の機運を盛り上げるなど、国益に叶うように利用してもらいたい。それこそが安倍氏への最大の供養になる。

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