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支流からの眺め

ホタテ貝からみえる脱中共国・脱低価格

 福島の処理水放出に抗議して、中共国が日本の水産物を全面輸入停止している。非科学的なのを承知の上で、政治的な取引に利用したいのだろう。最大の輸出品はホタテ貝で、中共国内で加工されて米国などに輸出されていたらしい。人件費節約のために国外で加工するのは企業としては合理的であるが、何かが間違っているように感じる。ここに2つ問題が見える。

 まずは、移転先が中共国ということである。多くの消費財(百均の雑貨、衣料品、陶磁器、木工品、食器、家具、眼鏡、家電製品)や工業部品(自動車や電子機器に使用される部品)もそうである。隣国の産業育成を助けると言えば聞こえはいいが、日本に落ちるべき人件費や再投資が大量に流出している。更にあろうことか、中共国の軍備増強に手を貸すことになっている。

 もう一つは、低価格志向である。一円でも安い生産価格や採算度外視の小売店を称賛する価値観である。確かに低価格は生産者にも消費者にも極めて重要な価値であろう。しかし、歪な競争を強いて安物を溢れさせるのでは、誰もが貧しい「共同貧困」になるだけである。デフレ社会から長く脱却できないのは、資本の流出だけでなく、この心理的態度も原因ではないのか。

 グローバル化に伴う問題とも関連している。グローバル化とは、何かが国境を越えて地球規模になること(地球一体化)である。端的には、人件費や原材料の安い国で生産して利潤を得る産業形態である。物資の流通を介して富の分散と共有が進み、人材、技術、文化の交流も促される。うまくすれば、各国間の協力関係が強まり、世界の平和に役立つことが期待される。

 その一方で、国家主権が脅かされる(自国のことが自国で決められない)危険がある。今回の事例も、貿易関係を質にして脅されている。パンデミックの際も、人の交流が感染症の拡大を招き、物資(マスク等)の相互調達の関係が安全保障上のリスクとなった。更に、国内産業の衰退や固有の文化の崩壊が進めば(最悪には、軍事侵攻)、国の存立が脅かされかねない。

 人類皆兄弟は遠い。利益を共有できる最大の単位は国家であり、国同士の友好より国民の利益が優先されるべきである。とりわけ、中共国との関係は非常に太くかつ非常に危うい。関係をもつ主な動機は低価格であろうが、これを見直し、生産者はイイモノ作りに専念し、消費者は相応の価格を負担し、国内産業の育成と人件費の上昇を図るべきだろう。ホタテ貝も国内での加工を期待する。

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