日本が提供する莫大な資金の分捕り合戦が起こった
拉致問題は“振り出し”へ、事態はさらに厳しいものへ?
① 2013年12月の張氏処刑以降、秘密警察の国家安全保衛部などが大規模な内部捜査に着手した。政権が一方的に断定した「張派によるクーデター」に「主導的に関与した」として、朝鮮労働党や朝鮮人民軍幹部ら約200人と、それに「何も分からずに従った」として、周辺の幹部や家族約1000人を選別して身柄を拘束したという。
「張派摘発団」羅先へ派遣、対立抗争が激化
「韓国の最大の敵は日米」、「慰安婦」を世界記憶遺産へ
(2014年1月16日 読売新聞朝刊7面)
張派粛清に絡み、左遷されたり、身の危険を感じて行方をくらました幹部も少なくない。このため多くの公的ポストで“空席”が生じ、賄賂で役職を買う「売官」も横行し始めたとの情報もあり、権力内の腐敗が進行している。
② 4月1日、北京で行われた日本と北朝鮮の外務省局長級協議で、北朝鮮側が1年以内に日本人拉致被害者らの再調査を終了する意向を伝えていた。日本政府への報告は調査終了まで数回にわたって行われ、最初の報告は「夏の終わりから秋の初めの間」になる見通しであった。政府は調査の実効性が確保できるとして、7月4日の閣議で、人的往来の規制など北朝鮮に対する日本の独自制裁の一部解除を決定した。
合意文を読めば、安倍政権が「拉致進展の対価」を払うことを決めたのは、明らかだ。再調査が始まれば、北朝鮮からはもちろん、日本国内からも、この対価を巡って強烈な異議が出される可能性がある。「人道支援」の中身は明らかにされていないが、その後、後述のように高官の亡命などを契機に北朝鮮内部で権力闘争が起こった。日本が提供する「人道支援」、言いかえれば“金”の分捕り合戦も絡んでいるとみられる。
③ 終戦前後に現在の北朝鮮地域で死亡した日本人の遺族9人が6月28日、北朝鮮北東部清津の羅南地区の日本人墓地とされる山を訪れ、慰霊のための祈りをささげた。北朝鮮側によると、戦後、日本人にこの場所を公開するのは初めて。訪問は遺族の希望に応えたものだが、新たな墓地を公開することで、5月末に拉致被害者らの再調査実施で合意した北朝鮮側が、積極的に対応している姿勢を示す狙いもありそうだ。
北朝鮮政府関係者は6月28日、合意について「全ての日本人が調査対象」と述べ、今後の協議次第では今回公開した場所も調査対象になる可能性を示唆していた。
④ 2014年6月北京で平壌音楽舞踏大学教授失踪事件が起こった。この教授は金第1書記の李雪主の教師を務めたこともあるといわれる。
また、6月ウラジオストクで金正恩第1書記の秘密資金を扱う朝鮮大聖銀行の首席代表が約500万ドル(約5億4000万円)を持ってロシア極東で第三国への亡命を打診するという事件が起こった。
⑤ 国家安全保衛部は、北朝鮮の金正恩第1書記がトップを務める国防委員会直属の秘密警察で、事実上は朝鮮労働党中央委員会組織指導部の執行機関である。その主任務はスパイや反体制派の摘発である。政治・思想犯や脱北者の摘発に加え、海外居住の幹部や拉致被害者ら国内の重要外国人の監視も担当する。在外公館には内部監督のため国家安全保衛部要員を配置し、幹部らの亡命監視も担う。
国外では中国の東北地方、香港、マカオ等でも活動し、脱北者の摘発も行っている。
⑥ これらの不祥事は国家安全保衛部の責任となり、7月から組織指導部が国家安全保衛部の業務検閲を開始した。
⑦ 相次ぐ要人失踪後、国家安全保衛部の海外担当者が、朝鮮労働党や政府幹部の人事を握る党組織指導部によって平壌に召還された。矢面に立たされたのが保衛部内で海外工作を統括する徐大河副部長と姜成男局長である。
拉致被害者調査担当の国家安全保衛部
権力失墜か
⑧ 徐副部長は国防委員会の「日本人問題全般」の特別調査委員会委員長、姜局長は同委員会の拉致被害者分科会の代表である。彼らは日本人調査を主導し、保衛部の局長や課長が外務省の伊原純一アジア大洋州局長らと海外で複数回接触するなど、水面下の交渉を担ってきた。
現在、業務検閲から思想検閲にまで進んでいる。つまり金正恩・第一書記への忠誠心を問われる事態に発展している。
⑨ 張氏が握っていた多大な外貨利権をめぐって保衛部トップの金元弘部長と黄炳瑞朝鮮人民軍総政治局長の対立が表面化し、金部長側が押され、孤立状況にあるという。
黄炳瑞は金第1書記の最側近とされ、組織指導部出身であるため、要人失踪を理由にした保衛部への締め付けは、この対立を反映している可能性がある。
⑩ 組織指導部は、国家安全保衛部が抑えている対外利権を「金正恩・第一書記の手に戻す」という名目のもとに切り崩しにかかっているが、最終的な目標は、日本が北朝鮮に提供する巨額の資金を、国家安全保衛部が独り占めすることを阻止し、その利権を抑えることにある。それゆえ、組織指導部が最終的に処分する対象は、金・国家安全保衛部長とみられる。
⑪ 2014年10月5日、香港・フェニックステレビ(電子版)によると、英紙デイリーメールは記事で、「北朝鮮の金正恩、政権を失い操り人形状態」と伝えた。現在北朝鮮の実権を握っているのは労働党組織指導部で、北朝鮮国内で何かしらの内乱が起きていると観察される。
このため拉致被害者の再調査どころではなくなり、振り出しに戻ったとみられる。
中韓「反日共闘」で日本孤立化を推進
中国と韓国が、歴史間題で「反日共闘」路線を鮮明にしている。ハーグ核安全保障サミット参加のためオランダを訪問したパク・クネは日米韓首脳会談に先立つ3月23日午後(現地時間)、中国の習近平と首脳会談を行った。
先に口を開いたのは習近平だった。習は「私がハルビンに安重根義士記念館を建設するよう直接指示を与えた」として「これは両国国民の絆の強化に寄与するだろう」と話した。習はまた「朴大統領が西安近郊の光復軍駐屯地に記念碑の設置を希望した」として「私たちはこれを積極的に建設しており、近く竣工して除幕する予定」と強調した。
これを受けてパク・クネも「両国国民みなの尊敬を受ける安重根義士を賛える記念館の設置は韓中友好協力関係の良い象徴になる」としながら「西安の光復軍第2地帯の記念碑設置が順調に進んでいるのも意味深いこと」と答えた。
中韓の対日共闘のシンボル・テロリスト記念館
日本政府がテロリストである安重根義士を共通の話題として「両国国民の絆の強化」「両国国民みなの尊敬を受ける人物」という肯定的な言葉をやりとりしたのは、日本を狙ったものである。パク・クネは習と会談することで日米韓首脳会談に応じたが、それでも日本の過去の歴史を否定する動きを決して容認はしないというメッセージを日本に送ったのだ。パク・クネには中国という「友軍」を得ておく必要もあった。中国も、日米韓会談が中国を孤立させるような会談になってはならぬという点を、日韓に対しメッセージとして発する意図があったもと見られる。
安重根は、初代首相の伊藤博文を暗殺した人物であり、記念館開設を称賛するのは、日本にとって受け入れ難い。習氏には、日米韓3国連携にくさびを打ち込む狙いがあった。日輯関係が悪化する中で、米国の仲介努力によってようやく実現する日米韓首脳会談に冷や水を浴びせる形になった。
習がパク・クネに日本の建設中だと述べた記念碑は2014年5月、光復軍第2支隊の所在地だった西安市に設置された。光復軍の記念碑は反日の新たな象徴となる。
「光復軍」は日中戦争当時、中国に派遣されていたアメリカ戦略事務局(OSS、のちの中央情報局)のドノバンが朝鮮人や日本軍捕虜(日本軍には朝鮮人もいた)から選抜した者を蒋介石軍が支配している西安に送り訓練、育成した部隊である。ドノバンと金九は協約を結んで特務工作訓練を実施し、1945年8月初め、「光復軍」を山東半島から日本国内へ進入する作戦を計画していた経緯がある。計画を実行する直前に日本軍が降伏したため、作戦は実行に移されなかった。
このように「光復軍」は中国国内で結成されたが日本軍と戦ったことはなく、終戦とともに米軍に武装を解かれ韓国へ帰国した。言ってみれば“幻の韓国軍”である。 韓国のパク・クネがこれに「光復軍」に拘るのは、朝鮮半島統一に向けた“神話”作りとみられる。朝鮮半島を日本から解放したのは「光復軍」とそれに続く大韓民国であり朝鮮半島を統一の主体は韓国であると主張するための布石であろう。
習近平は、「光復軍」の石碑を“西安”に建てることによってパク・クネの望みに応え籠絡するとともに米国に対しても対日包囲網形成に加われというサインを送ったものと観察される。
パク・クネは、日本を差し置いて習とは何度も会談している。中国との関係強化が、対北朝鮮政策や、経済協力でも重要であると考えているのだろう。これと対照的に、日本に対しては、いわゆる従軍慰安婦問題などで条件を付けて、日韓首脳会談の開催を事実上拒んでいる。この背景には、中韓共闘の対日外交に米国を巻き込む可能性を見出しているからとみられる。
中国の裁判所は先に、戦時中、強制連行された中国人元労働者らが日本企業を相手取り、謝罪と損告賠償を求めた訴状を初めて受理した。韓国でも元徴用工が同様の裁判を起こしている。いずれも、日本との国交正常化の際の約束を根底から揺るがすものである。
7月3日、習近平は国賓として韓国を訪問した。中国の狙いは日米韓の連携にくさびを打ち込むことである。中国の習近平国家主席がソウルを訪間し、韓国のパク・クネと会談した。北朝鮮政策で、朝鮮半島での核開発に断固反対する方針で一致した。中国の最高指導者が、伝統的友好国の北朝鮮より先に韓国を訪れるのは初めてだ。「韓国重視」と「中韓協調」を演出した。
習近平は訪韓直前に韓国紙に寄稿し、アジアの安全保障で中韓の共同対処の重要性を強調している。「アジアの安全はアジアの人々が守る」という自らの「アジア安全観」に基づく提案で、米国を排除しようとする意図が明らかである。
中国は、経済面で対中依存を深める韓国との関係を強化し、中国主導の秩序作りへ韓国の取り込みが狙いとみられる。
共同声明の付属文書に、いわゆる従軍慰安婦問題に関する資料の共同研究の実施斌盛り込まれた。中国は既に、慰安婦の関連資料について、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録申請している。韓国も、同様の申請を準傭中である。(上掲、1月16日付読売新聞)
両国が、自ら都合良く解釈した歴史カードに墓づく「反日共闘」を拡大し、国際社会での世論戦を展開することは、日本にとって憂慮すべき事態である。パク・クネは、中国による日米韓の分断工作に対し歴史分野では積極的に呼応した。
中露も“歴史問題”で対日共闘へ
全国人民代表大会常務委員会は2月27日、9月3日を「抗日戦争勝利記念日」、12月13日を南京事件の「国家哀悼日」にそれぞれ定める議案を採択した。特定の外国がかかわる歴史を、法律で国家記念日と定めるのは中国では異例だ。
9月3日を「抗日戦争記念日」としたのは、日本政府が降伏文書に調印した1945年9月2日の翌日で、当時の国民党政権が各地で祝賀行事を挙行したため。共産党政権も、1951年に同日を対日戦勝記念日と定めており、これを踏まえた形だ。
また、「国家哀悼日」に定められた12月13日は、37年に旧日本軍が南京を占領した日で、中国側では「約40日にわたる大虐殺が始まった日で、30万人以上の中国人が殺された」と主張している。
半世紀以上も前の出来事が起きた日を今となって記念日にしたのは、習近平が主導する対日強硬路線の一環とみられる。
5月に訪中したロシアのプーチン大統領は、習近平との首脳会談で中露戦略連携パートナーシップを謳い上げ、共同声明で「戦勝70周年」を祝う記念行事を、中露共同で行うことを発表している。
「第二次大戦における欧州及びアジアの戦場でのドイツ・ファシズム及び日本軍国主義に対する勝利70周年を慶祝する活動を共同で行い、歴史を歪曲し、戦後国際秩序を破壊する企みに引き続き断固反対していく。」
7月12日付の中国紙・環球時報によると、ロシアのセルゲイ・イワノフ大統領府長官は、中国の習近平、栗戦書中国共産党中央弁公庁主任と会談し、中露両国の関係強化を確認した。 栗主任は9日、「イワノフ長官は党中央弁公庁が接触した初めての外国大統領府の長官だ。われわれは中露両国首脳がより緊密な関係を築くための懸け橋となる」と述べた。
イワノフ長官は「ロシアと中国は来年、合同で第2次世界大戦の対日戦勝記念日を祝うことになっている。すでに両国で合同委員会を設置し、対日戦勝記念日祝賀に向けて意見交換を行っている」とした上で、「若い世代や世界の人々に第2次世界大戦の歴史を伝えることは非常に重要だ。ロシアはドイツに勝利した5月9日と、日本に勝利した9月3日を戦勝記念日として祝う」と語った。
来年行われる「対日戦勝記念日」は中露が共同して行われる。1945年まで韓国は日本領土の一部であったから対日戦勝国ではないが、パク・クネは中国から招待されれば参加する可能性がある。中露そして韓国が “対日戦勝記念日” で対日包囲網を形成しつつあるかに見える。
拉致被害者の帰還が先か、南北朝鮮の統一が先か
ジワリジワリ形成される対日包囲網
中国は、昨年9月に北京で、北朝鮮の金桂寛第一外務次官を招いて6か国協議10周年のシンポジウムを開くなど、政府高宮の往来も復活していた。中国にとって北朝鮮の体制維持は大前提であったが、体制の急激な変革や過度の中国依存を恐れ経済開放に慎重な姿勢は崩すことなく、逆に中朝接近に熱心な張成沢を粛清した。
中朝関係は冷却しているが中国は、いずれ崩壊するであろう金正恩体制を支えることを避け韓国に接近し韓国の抱き込みにかかっている。中国中国主導で朝鮮半島を統一させる基本方針に変わりはないとみられる。
中朝関係の冷却により追いつめられた北朝鮮が活路を開くためすり寄ってきた相手が日本である。拉致被害者等の日本への帰還と交換に提供する“人道援助”や資金の獲得が狙いである。
小泉政権時代外務省の田中均と北朝鮮の“ミスターX”・・・・“日本側がミスターX”と呼んでいた。ミスターX自身は「金哲(キムチョル)」と名乗っていたが、秘密警察である国家安全保衛部の柳京(リュギョン)副部長と・・・・との間で、日本が莫大な資金を提供することが決まっているからである。そのため今年6月、日朝交渉で拉致問題解決に向けた合意があり北朝鮮が拉致被害者等の“再調査”開始した。
北朝鮮の港湾、鉄道、道路、発電所等日本統治時代のオンボロ
整備の金がない、どこの国も金を出したくない
田中均はミスターXに多額の資金提供を約束した
ナンポ港、ウオンサン(元山)港などの整備のために・・・・・。
(IDE-JETRO)
これにより、北朝鮮内部では日本が提供する莫大な資金を、どの勢力が手にするのかということが現実の問題として浮上するようになった。拉致被害者等の調査特別委員会を主導する国家安全保衛部が独り占めするかと思われたが、6月に北京へ出張していた音楽大学教授の失踪事件や金正恩の“金庫番”のロシア亡命事件で事態が急変した。国家安全保衛部の責任が問われ、拉致被害者調査を担当する国家安全保衛部が権力を失いつつある。そのため拉致被害者の再調査は中断し、日本への報告ができなくなったものと観察される。
5月末日朝間で合意した拉致被害者等の再調査は北朝鮮内部の権力闘争で、とん挫し振り出しに戻った。北朝鮮にとって日本は対中、対米と渡り合うためのカードであるから、金正恩が失脚し体制が変われことになれば、生殺与奪の力を持つ中国にすり寄る可能性もある。
中国は北朝鮮のインフラを整備をしたいが金を出したくない
拉致被害者問題解決に向けた日朝交渉の進展につれ中韓や米国も、自国抜きで話が進むことに反対するようになった。日本が北朝鮮に提供する莫大な資金のもたらす経済的政治的影響が極めて大きく、東アジアの勢力バランスを大きく変えるので、日朝を除く6者協議参加国は、北朝鮮が核兵器を放棄することなく日朝が結びつき日本が莫大な資金を提供することは許さないであろう。
ロシアも朝鮮半島に進出するための布石を打っている
中韓は歴史カードで反日共闘している。2015年以降、米陸軍が韓国から逐次撤退すれば、韓国は安全保障の観点からますます中国になびく。中国は来年、ロシアと対日戦勝記念行事を行う。米国は慰安婦や竹島そして東海表記では韓国寄りの反応を見せている。安倍首相の靖国神社参拝にも「失望した」との文言を使って反対の意思表示をした。“歴史カード”を軸にした中韓の対日共闘に米国やロシアも加わった対日包囲網がジワリジワリ形成されそうな状況に見える。
日本にとっては拉致被害者の帰還が先であるが、日朝以外の6者協議参加国は南北朝鮮の統一が先であろう。拉致被害者等の帰還問題は、振り出しに戻っただけでなく、朝鮮半島の統一や北朝鮮の核放棄等の解決に向けた交渉の過程で解決されるのではないかと考えられる。
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