日米共同統合演習始まる、離島防衛想定した訓練実施
陸海空の自衛隊とアメリカの4軍、あわせておよそ5万人が参加する大規模な共同統合演習が、5日から、沖縄県など日本各地で始まった。長崎・佐世保市では、国内で唯一、離島防衛機能を持つ部隊「陸上自衛隊・西部方面普通科連隊」が、海上で離島防衛を想定した訓練を行うため、5日朝、駐屯地から海上自衛隊の基地に移動し、輸送艦での出発に向けた準備を行っている。
日米共同統合実動演習は、2年に1度行われており、今回は、沖縄・九州を中心に、日本各地と周辺海空域に自衛隊3万7,000人余りと、アメリカ軍およそ1万人が展開して、12日間にわたり、実施される。
海洋進出と軍備増強を進める中国をけん制して、日米の共同行動能力を示す狙いもあるものとみられるが、過剰な摩擦を避けたい日本政府の意向も表れ、当初、計画されていた沖縄県の無人島を使用しての離島防衛訓練が見送られたほか、演習全体が異例の全面非公開となっている。
沖縄は訓練に反発した
”火薬庫”とは対応を誤れば、爆発する危険があるという意味だが、日米同盟において沖縄は今、混迷の地であり”火薬庫”である。日米共同統合演習の一環として、11月に予定していた沖縄・渡名喜村の無人島を使った離島奪還訓練が中止となった。オスプレイの配備、米兵による女性暴行事件で沖縄の反発が強まり、訓練の実施は難しいとの判断からだ。
中国の海洋進出を抑止し、南西諸島の防衛強化が目的だったが、上陸訓練は中止となった。それ以上に日米の共同訓練で緊張が高まれば、日中、そして沖縄の三者にとって好ましくないという意見を地元が示したことは注目しなければならない。
日中が衝突すれば、真っ先に被害を受けるのは自分たちとの思いからであるが、米軍基地ばかり押し付け、負担軽減の願いも聞き入れないのであれば、南西諸島重視という防衛政策は受け入れないとの沖縄県民の意思表示といえる。尖閣諸島を巡る対立に加え、東シナ海で大規模な軍事演習を行うなど中国の脅威が増大する中で発せられた沖縄から発せられたメッセージは重い。
今後、事件や事故が起これば、その都度沖縄が反発し、日米同盟は形骸化する。沖縄の県民が日米同盟の否定に向かえば、元も子もない。沖縄をこれ以上混迷の地としないためには、「沖縄の問題」を自分たちの痛みとして、政治も国民も受け止めなければならない。
(参照)沖縄米兵集団強姦事件、沖縄県民の安全を守れずして離島奪還訓練は意味がない!遠因は対日侮蔑 2012-10-17 23:02:32
米国も反発した
無人島への上陸訓練が沖縄県内の反発に加え、アメリカ軍兵士による女性暴行事件が起きたことや中国に対する配慮など岡田副首相の意向で中止になった。
これに対し、米国側は、日本が決めたなら、戻せとは言わないが、なぜ中止しないといけないのか理解しかねると強い不快感を示し、中国をけん制するための訓練なのに、本末転倒だと疑問を抱いている。
訓練演習一つやるにも政府内部の意見が分裂していては米国は、日本が尖閣諸島の防衛に本気なのかどうか疑念を持つ。たとえ日米両軍が離島防衛の訓練を実施しても、政府間の信頼が無ければ日米同盟は形骸化する。演習の実施をめぐって日本政府に尖閣諸島防衛についての戦略がなく、閣僚相互の意思統一が無いことが露呈した。中国に日米政府間や日本政府内部の矛盾を見せれば牽制効果を減殺する。日本側のこのような動きは武力衝突に至れば日本政府は腰砕けになることを暗示させるものであり、米軍の後ろ盾がない自衛隊は所詮、“張子の虎”であることを中国に知らせることになった。
中国は消耗戦を仕掛けている
政府の尖閣諸島国有化を引き金とした中国の官日デモは収まったが、領土問題をめぐる中国の対日強硬姿勢に変化はない。特に、尖閣諸島周辺の日本の領海や接続水域では中国公船・艦艇の立ち入りや通過、接近が常態化しつつあり、退去を求める海上保安庁巡視艇とのイタチごっこが続いている。世界のメディアへの中国側の主張広告の大量掲載といった国際キャンペーンも長期化の気配が濃厚だ。
尖閣諸島周辺での中国公船の執拗な航行と、取り締まりに出動する海上保安庁巡視船の攻防がイタチゴッコの様相を呈している。中国の艦船は東シナ海を自由に巡航し、日本に追跡させる。日本政府が中国の海洋活動を監視する必要があると考える限り、接続水域や領海への侵入を繰り返すことにより日本の実効支配を崩しつつある。中国は出動し続ける海上保安庁や、長期的には海上自衛隊も恐らく消耗し、日本側は戦意喪失、中国の意に従うという結末を描いて領海や接続水域への侵入を繰り返しているものと観察される。
中国側は尖閣諸島が中国大陸に近いという地理的に優位な地位にあり、海軍、監視船及び漁船も数的に日本を圧倒している、また台湾と連携して挑発行動を、いつまでも続けることが可能である。執拗に“ジャブ”を繰り出すことにより日本は疲労困憊、降参することにならないか。
日清戦争敗北の屈辱を晴らす機会を求めている中国は、挑発行動をエスカレートさせつつある。中国との駆け引きは東シナ海という海上だけにはとどまらない。中国が尖閣諸島上陸に出てきた場合の対応をはじめ、尖閣問題をめぐる外交交渉の場での落としどころの検討など、日本としては対策を練り、迅速な行動に移す準備をしておかねばならない。
(参照)森本防衛相、「都の尖閣上陸を許可すべき」と発言、好戦国家中国との武力対決の覚悟はあるのか! 2012-07-21 23:40:01