TPP交渉参加、閣内に異論相次ぐ 「反対」明言も
野田佳彦首相が交渉参加の意向を固めた環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐり、小平忠正国家公安委員長は22日の閣議後会見で「現行の関税撤廃の交渉なら私は反対だ」と明言した。田中真紀子文部科学相も「現場の声を聞いて決めるべきことだ」と慎重な姿勢を示し、閣内から異論が噴き出した。
民主党執行部は総選挙の公認条件として、党議に従うという誓約が盛り込まれた申請書への署名を求めた。小平、田中両氏は署名したことを明らかにしたうえで、小平氏は「申請書にはTPPのことは書いてなかった。党議拘束でいうと、まだ決まっていない」と説明。田中氏は「自分の考えと署名は矛盾するかもしれないが、有権者の考えを総理に伝えることも閣僚の義務だ」と語った。
TPPの交渉参加については民主党内に慎重論が根強く、マニフェストの書きぶりでも調整が続く。首相の足元の閣内から異論が出たことで、党内の慎重派が勢いづく可能性もある。
米国議会でも問題となっているTPP
交渉参加を衆議院選挙の公認の条件とは、狂気の沙汰
米国でTPPの交渉を担当しているのはロン・カーク米国通商代表である。彼は通商問題に関する大統領の首席顧問およびスポークスパーソンを務めている。TPPの草案はロン・カークと多国籍企業関係者が秘密裏に作成作業を行っている。作成中の草案を見ることができるのは法律で権限を与えられた600人の顧問弁護士である。TPPを巡る権限を持った委員会、上院通商委員会の委員長のロン・ワイデン上院議員は草案にアクセスすることを認められていない。
秘密裏に作成されていた条約草案が今年の春、議会関係者に漏れ、米国内で問題になっている。米国議会の議員にも秘匿されたことが示すように多国籍企業の利益を最大限追求させる手段であり、この条約の行き着くところは企業による国家の支配である。TPPは貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具である。
以下、米国で問題となった事項の一部である。
①国内で操業している外国企業が、主要な諸規制に対して、国際法廷に持ちこめることになっている。国際法廷は国内法に優先し、裁定に違反した場合には、罰金を申し渡す権力を持つことになる。
②TPP草稿は、医薬品のコストを上げ、加盟国に拘束的な著作権施策を採用させかねないような規定を盛り込んでいる。
③表向きは通商条約ということですが、実際は大企業による世界統治の施行である。条約は、全ての加盟国が、全ての法律、規制、管理手順を、26章の極めて包括的な規定に合わせることを要求している。その規定のうちたった2章だけが貿易に関連するものです。他の24章は、大企業に対して多くの新たな特権と権利を与え、政府規制を制限し、政府を束縛する。
④TPP投資条項によれば、実際、外国人投資家に対し、TPP条約をたてに、全ての日本企業が守らなければならない同じ国内規制を守るための費用を巡り、政府に対し民事訴訟をおこし、国のカネを略奪する権利を含め、新たな権利と特権を設けることになっている。実にとんでもないことである。
⑤特許に関する条項では、医薬品価格をつり上げる、製薬大手の特許権延長の規定がある。参加国のなかには基本的に"我々はこんなものはいらない。我々は世界的に施行可能な大企業の権利などいらない。我々にはもっと民主主義が必要だ。もっと説明責任が必要だ。"と主張する市民運動が起きている。
⑥漏洩草案は、米国国内の公益団体の、宗教団体から消費者団体、環境、労働に至る非常に多くの団体の意見は何一つ反映されていない。条約中の、金融制度の安定を確保する為、加盟国が金融規制を施行できるようにしようという案にさえ、米国(ロン・カーク)は反対している。
⑦歴史的な観点で見ると、最近の大規模な地域協定の交渉、つまり、1990年代の米州自由貿易地域(FTAA)は、非常に複雑な条約で、34ヶ国が二年間協議し、全草稿文章が各国で公開された。TPPは、8ヶ国で、もう3年も交渉しているのに、文章一つすら公表されていない。実際、交渉がおえた後いかなる草稿も4年間は非公開という特別協定に署名したことが、とうとう漏洩した。
⑧(TPP草案の作成は)秘密をさらに秘密で隠す。過去に、アメリカも草稿文章を発表した。お世辞にも透明性のお手本などとは呼べないWTOさえ、草案を公開した。 "一体何が起きたのか?" と通商代表ロン・カークは質問された。彼は答えた。 "過去に、例えば、米州自由貿易地域FTAAは文章が公開されて、我々は暗礁に乗り上げた。" 今、ロン・カークらが秘密裏にこそこそやっているのは、その結果を甘受することになる大衆や議会が知ったら、何とかして頓挫させてしまうことになるからだ。
この条約で理解すべき本当に重要なことは、TPPの狙い貿易ではなく、セメントのような作用である。TPP条約のセメントが一度固まってしまえば、全加盟国が条約変更に合意しない限り、規則を変えることが出来なくなる ということである。
⑨漏洩した章によると司法は二重構造となる。国民は国内法や裁判所を使って、権利を守り国民の要求を通そうとする。大企業は別建てに、利害相反の規制法などおかまいなしに、民間の弁護士を三人雇う。この大企業はいんちき国際法廷に、政府を引きずり出し、この三人の勝手に集めた弁護士が、規制によって生じた経費を還付すべきだと主張したり、自分たちがいやがっている規制が、加盟国内の企業全に適用されるものと全く同じであるかどうかと、全く無関係に、それで不当な扱いを受けていると主張したりする大企業や投資家に、無制限の額の税金で、政府が賠償するよう命じる権利を持つっている。
これに似た幾つかのものを含むNAFTAの制度のもとでも、有害物資規制、都市区画法、材木規制を巡って、既に3億5000万ドルが、政府から大企業に対して支払われている。
⑩この条約漏洩が非常に重要な理由は、これが最後の条約交渉になる恐れがあるからである。NAFTA以来、政府規制を押さえ込み、どん底への競争を煽る、貿易協定を姑息に利用する大企業に、多くの人々が巻き込まれてきた。こうした新条約は、益々大胆、大規模に、政府規制を緩和し、大企業に権限を拡大してきた。
このTPP条約は、究極的には、企業の新権利と特権を保証する世界的協定になりかねない。決済制裁と貿易制裁がその強制手段である。占拠運動や世界中の運動が、さらなる権力と支配力を要求しているまさにその時に、TPPが強制力のある世界統治政権に発展する恐れがあると言っても誇張ではない。
⑪条約交渉のゆくえによっては、これらの規定は、既存の国内法の改変を要求するだけではない。進歩的な良い法規は廃止させられてしまう。また将来、新たな法律さえ制定できなくなる。
⑫TPP条約は、NAFTA式の海外移転を推進するあらゆる企業の特権を含んでいる。より徹底的で、あらゆる種類の新たな大企業特権が含まれており、医薬品価格をつり上げるための、医薬品や種子の独占権を延長する権利や、後発医薬品開発や医薬品共同購入を阻止する権利さえある。
⑬金融規制も緩和させられる。加盟国は危険な金融商品やサービスを禁止することが許されない。
⑭TPPは我々が地方財政についてまで干渉している。全米中の、搾取労働撤廃運動や、生活賃金を求める運動や、グリーン購入運動をしている人々にとって、TPPは、地域産業優先を禁じます。納めた税金を自分の州へと再循環させる"バイ・ニューヨーク"州優先も、"国産品愛好" も許されず、製品が含むべきリサイクル成分等の環境への配慮や、人権への配慮も許されないくなる。
⑮TPPは大企業に途方もない権力を与える。ここまで過激になれたのは秘密だったからである。他国の国民もこんなものを望んではいない。主として米国が、最も過激な条項を推進している。
TPPは次のような結果をもたらす。これに賛成できるだろうか!
●環境や労働条件を保護する為の法律等が大企業の利益を妨げる場合、大企業が国家を訴えることが可能になる。
●裁判官の大半が顧問弁護士という私企業法廷をそうした訴訟審問の為に作り出す。
●医薬品の特許有効期間を延長し、価格を高いままにし、必要とする人が医薬品を入手できなくなる。
●自国製品購買促進の働きかけは不可能になり、より大規模な雇用の海外発注をもたらす。
●大手金融業のため更なる規制緩和をする。
●インターネットにおける言論の自由、プライバシーや適正手続きの権利を損ない、人々の革新する力を阻害する。
以上、米国内でもTPPは大きな問題があると指摘されている。加盟各国の国民が正しいと考える意見とも無関係に、企業利益を最大化するための条約がTPPである。TPPの下、多国籍大企業は、個々の国家より大きな権力を得ることになる。
TPPは大企業による歴史上最大の権力簒奪であり、貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具である。このようなTPPの中身を議員にも国民にも知せることなくTPP交渉参加に賛成することが衆議院選挙で公認する条件にするのは、狂気の沙汰である。
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