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【諸宗教の超簡単図解の試み】⑤グノーシス・カタリ派

2011-11-16 00:28:21 | 高森光季>諸宗教の超簡単図解の試み

 あまり広く知られていないものですが、グノーシス主義というものがあります。おそらくギリシャや中東でキリスト教より古く発生し、キリスト教の隆盛とほぼ同時期に隆盛になってきたもので、キリスト教はこれを「不倶戴天の敵」としてきました。また、その流れを引いて12世紀に南仏で隆盛したカタリ派というものがあります。これも正統キリスト教会は「異端」と断じ、虐殺・殲滅しました(アルビジョワ十字軍)。
 けれども、イエスの思想には、いくばくかグノーシスに通じるものがあります。「霊こそ本源」「人間は霊」という考え方です(このあたりについては「霊学的イエス論」(16)参照。だからこそ、「敵中の敵」と見なされたのかもしれません。

 グノーシスは、「現世否定」と「輪廻」を主張していました。カタリ派も全部ではありませんが、輪廻を認めていました。仏教の影響があるのではないかと言う学者もいます。しかし、別に「現世否定」や「輪廻」は仏教の専売特許というものでもないと思います。霊的真理は様々な形であちこちに顔を出すものだからです。



 グノーシスは、もともと世界は神の世界、本源的世界しかなかったとします。そして、神の子供のような存在である「アイオーン」の一人が、いたずら心から間違って作ってしまったのが現世だと言います。現世は不完全な苦しみの世界、死と再生の世界なので、叡智(グノーシス)によって本源的世界のあり方(霊=永遠の生命であること)を再獲得して、そこへ戻ろうというのが主旨です。
 カタリ派はもっと不思議な神話を持っていて、ユダヤ教の神ヤハウェはこの悪の世を創った悪の神だとします。人はもともと天界にいた天使だったのですが、ヤハウェの奸計によって強引に拉致され、この世に捕らわれています(ただし拉致されたのはその人の魂=アニマだけで、霊=スピリットは天界に残っています)。本源的あり方を忘れた人間=アニマは、むなしく苦しみの生を輪廻し続けます。しかし、救済者イエスによってもたらされた叡智を知り、禁欲を貫いた覚者(「完徳者(ペルフェクティ)」と呼ばれます)の指導および秘儀伝授によって、天界のスピリットとの結びつきを取り戻せば、死して後、本源の世界である天界に戻ることができるとします。
 いずれも、この世は真実ではない悪の世界と捉え、真実の霊的世界へ(死後)戻るということを中核に置いた思想です。
 死というものはなく、魂は何度もこの世に生まれ変わる、そしてそのあり方自体が地獄のようなものだということになります。「現世=地獄」です。そして、覚者の教導によって、「自らが霊であることを自覚」し、諸々の物質世界の欲望を断てば(ここは仏教と通じます)、天界にいる霊とのつながりが回復し、死して天界=故郷に戻ることになるわけです。
 徹底した「霊界本源主義」です。ユダヤ教が(そしてそれを受け継いだ正統キリスト教が)、死後世界には無関心で、非常に現世的な宗教だったのとは、まったく正反対です。カタリ派が旧約聖書の神ヤハウェはイエスの言う神ではなく、悪の神だとしたのは、ある意味、自然なことだったと言えるでしょう。
 これもまた奇形的と言えば言えるでしょう。しかし、非常に面白い捉え方だと思います。人間は本来、霊である。そして死はない。それはイエスも持っていた考え方ですし、さらにはスピリチュアリズムにも通じるものがあるとも言えます。


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