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【諸宗教の超簡単図解の試み】⑨密教

2011-11-28 01:32:06 | 高森光季>諸宗教の超簡単図解の試み

 密教は、あまりに学問化(哲学化)した仏教に対して、ヒンドゥー的(というよりは普遍宗教的)な「神人交渉」の要素を回復させ、実践的な宗教を打ち立てようとした試みと言えるでしょう。
 密教の世界は複雑絢爛で、凡人の窺い知るところではありませんので、簡単図解などすると非難囂々になることは間違いありません(読者にプロもいるしw)。しかしそれをあえてやってみます。



 至高の存在として、釈迦仏ではなく、大日如来がいます。大日如来は、全宇宙の主であり、全宇宙を包括し、全宇宙を満たしている絶対存在だと言えるでしょう。
 その下に諸仏・諸菩薩・諸天・諸明王のいる超越世界があります。さらにその下に、現世を含む輪廻の世界があり、そこに人間はいる。
 この、たくさんの存在がきらめきひしめく超越世界の強調こそ、密教の一つの特色だと言えそうです。そして、霊学的に見れば、これはまったく正しいことであって、現界を超越する世界はいくつも(幾層も)あり、そこで活動する霊的存在は人知を超えた多様さを持っているわけです。
 そして、密教の最大特色は、修行をすることで、行者は超越界の仏菩薩・諸天明王にも等しい存在になれるとすることでしょう。「入我我入」「即身成仏」は密教の(即身成仏は真言密教のですが)、超難解ではあるものの、最も重要な概念です。それを図解的に単純に言えば、行者は超越界存在になるということになります。
 そして行者によって(あるいは密教教団が提供するシステムやアイテムによって)仲介された仏菩薩・諸天明王の慈悲の力で、衆生に利益(りやく)がもたらされる。これは病気を治したり、天候を制御したり、豊穣をもたらしたりする現世的な効能があるわけです。
 こうした密教の法力実践力は、日本仏教では非常に大きな役割を果たしたようで、他の宗派も密教的実践を取り入れて民衆広宣を計っています。天台密教、禅密、蓮密(日蓮宗系密教)といった具合にです。また、あまり知られていませんが、鎌倉初期、律宗から派生した真言律宗は、叡尊、忍性らの貧者・病者救済活動によって広く大衆の支持を得ました。

 ところで、こういう密教のありようは、実は一般的な「神人交渉」形式、つまりシャーマニズムに近いとも言えます。シャーマニズムは、シャーマンを介して超越世界と現世との交渉を行なう原始的(始源的)宗教システムです。シャーマンは、霊を降ろして身に憑け(憑霊)、あるいは自ら霊界に入り(脱魂)、その交渉を可能にします。



 しかし、密教はもちろん単なるシャーマニズムではないわけで、そこには仏教の遺産がしっかりと組み込まれています。つまり、欲望・執着の断滅、正道(正しい行ない)、菩薩道(利他・慈悲)といった、道徳的・哲学的な研鑽が必須となっているわけです。段階を踏んだ修行システムもあります。
 多様な超越世界・超越存在の受容、超越世界と現世との実践的交渉、そして厳しく統御された道徳性。そういう意味では密教は一つの究極的な宗教の姿と言えるかもしれません。
 ただし、密教は基本的に「達人宗教」です。中心はあくまで修行をして「入我我入」ができる宗教者であるわけです。そこから一般人にどう向き合うのか。どういうことが真の「慈悲」なのか。そのあたりも難しい問題になるかもしれません。


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