三菱UFJ信託銀行から「ものすごい!」相続税の節税商品が登場しました。暦年贈与信託「おくるしあわせ」です(発売は今年6月のようです)。この商品が来年(2015年1月)からの相続税増税を見据えた商品であることはいうまでもありません。
相続税の節税対策のひとつが生前贈与(贈与税が課税されない金額の)を活用して、相続税の対象となる資産を減らしてしまう方法です。しかし、贈与は思いのほか手続が複雑で、「贈与になっていなかった」、「贈与すべき人に贈与できていなかった」、「贈与の時期を誤った」など、結局は相続税対策として有効でなかった、最悪の場合には墓穴を掘ってしまう(余分な税金を払う羽目になる)ことさえあります。
この商品は完璧です。見事です!完璧に贈与ができます。踏むべき手続を全部踏んでいます。
来年(2015年1月)からの相続税増税で一番戦々恐々としているのは、財産が1億円前後で、基礎控除や小規模宅地等の特例だけでは相続税が課税される水準の人たちです。役所や有名企業に学校卒業後就職し、それなりの地位に昇進して定年まで勤めた人たちがこれに該当すると思います(さらに親からの遺産を受け継いでいる)。
「無事定年まで勤め退職金も手にした。住宅ローンも完済した。子供も独立した。残る心配は・・・、相続税で財産が減ることかな?」
「汗水垂らして、上司のいじめや客からの情け容赦のないクレームにも耐え、やっと手に入れた財産を1円たりとも減らしてなるものか!」
「暦年贈与信託!これだ!これでいこう!」
この商品の狙いだと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
★税理士法違反では?
税理士法で「税理士の業務(第2条)」と「税理士の資格要件(第3条)」が定められています。贈与の手続の過程で銀行は、相続税と贈与税についての相談を受けたり、説明をしたりすることになります。これが税理士業務に該当するとすれば、銀行は税理士ではないので、この商品の販売の過程で税理士法に反したことになります。
このように商品やサービスの販売の過程で、相談に応じたり説明をしたりするケースはほかにも多数あります。例えば、「住宅メーカー」「不動産会社」「証券会社」「保険会社」がそうです。よくあるのは、販売の際の「税に関する説明」を顧客が誤解して(よく聞かずに)行動してしまい、思いもよらない課税が生じるというパターンです。現状、このようなケースの場合、「税についての最終的な確認は、税務署あるいは税理士」と「明言あるいは明示」していますので、税理士法違反にはならないようです。
この暦年贈与信託は、すでに多くの金融機関が販売し好評を博している教育資金贈与信託と並んで利用されることが予想されます。
「銀行に相談すれば、私程度の財産なら相続税も贈与税もゼロにしてもらえる!」
これは、税理士が行っている相続税対策そのものです。昨年(2013年)、税理士法が約10年ぶりに改正されましたが、改正作業の過程でこの件(税理士以外が税務に関する相談に応じること)については全く議論されませんでした。次の税理士法改正は10年後だと思います(今までおおむね10年ごとに改正されてきました)。昨年の改正で、この件を俎上に載せるべきだったのではないでしょうか?
10年後、相続税と贈与税に関する業務は、銀行の独壇場になっているかもしれません!
銀行という大企業ならば、画一的なサービス【注】を、安定して、しかも長期にわたって提供することができます。「近所の税理士に相続税対策のこと頼んだら、相続を迎える前にその税理士が先に死んでしまった」、大変よくあることです。税理士法人(複数の税理士の共同事務所)、しょせんは吹けば飛ぶような中小零細企業で内紛による分裂は頻繁に起きています。
税理士にとって銀行はケンカを売る対象でもないでしょうね。相手が強すぎます!
【注】税理士が不信感を抱かれる一因は税理士によって見解や能力が異なるということです。大企業たる銀行であれば研修やマニュアルによって、「よい意味での画一的サービス」を提供することができます。
相続税の節税対策のひとつが生前贈与(贈与税が課税されない金額の)を活用して、相続税の対象となる資産を減らしてしまう方法です。しかし、贈与は思いのほか手続が複雑で、「贈与になっていなかった」、「贈与すべき人に贈与できていなかった」、「贈与の時期を誤った」など、結局は相続税対策として有効でなかった、最悪の場合には墓穴を掘ってしまう(余分な税金を払う羽目になる)ことさえあります。
この商品は完璧です。見事です!完璧に贈与ができます。踏むべき手続を全部踏んでいます。
来年(2015年1月)からの相続税増税で一番戦々恐々としているのは、財産が1億円前後で、基礎控除や小規模宅地等の特例だけでは相続税が課税される水準の人たちです。役所や有名企業に学校卒業後就職し、それなりの地位に昇進して定年まで勤めた人たちがこれに該当すると思います(さらに親からの遺産を受け継いでいる)。
「無事定年まで勤め退職金も手にした。住宅ローンも完済した。子供も独立した。残る心配は・・・、相続税で財産が減ることかな?」
「汗水垂らして、上司のいじめや客からの情け容赦のないクレームにも耐え、やっと手に入れた財産を1円たりとも減らしてなるものか!」
「暦年贈与信託!これだ!これでいこう!」
この商品の狙いだと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
★税理士法違反では?
税理士法で「税理士の業務(第2条)」と「税理士の資格要件(第3条)」が定められています。贈与の手続の過程で銀行は、相続税と贈与税についての相談を受けたり、説明をしたりすることになります。これが税理士業務に該当するとすれば、銀行は税理士ではないので、この商品の販売の過程で税理士法に反したことになります。
このように商品やサービスの販売の過程で、相談に応じたり説明をしたりするケースはほかにも多数あります。例えば、「住宅メーカー」「不動産会社」「証券会社」「保険会社」がそうです。よくあるのは、販売の際の「税に関する説明」を顧客が誤解して(よく聞かずに)行動してしまい、思いもよらない課税が生じるというパターンです。現状、このようなケースの場合、「税についての最終的な確認は、税務署あるいは税理士」と「明言あるいは明示」していますので、税理士法違反にはならないようです。
この暦年贈与信託は、すでに多くの金融機関が販売し好評を博している教育資金贈与信託と並んで利用されることが予想されます。
「銀行に相談すれば、私程度の財産なら相続税も贈与税もゼロにしてもらえる!」
これは、税理士が行っている相続税対策そのものです。昨年(2013年)、税理士法が約10年ぶりに改正されましたが、改正作業の過程でこの件(税理士以外が税務に関する相談に応じること)については全く議論されませんでした。次の税理士法改正は10年後だと思います(今までおおむね10年ごとに改正されてきました)。昨年の改正で、この件を俎上に載せるべきだったのではないでしょうか?
10年後、相続税と贈与税に関する業務は、銀行の独壇場になっているかもしれません!
銀行という大企業ならば、画一的なサービス【注】を、安定して、しかも長期にわたって提供することができます。「近所の税理士に相続税対策のこと頼んだら、相続を迎える前にその税理士が先に死んでしまった」、大変よくあることです。税理士法人(複数の税理士の共同事務所)、しょせんは吹けば飛ぶような中小零細企業で内紛による分裂は頻繁に起きています。
税理士にとって銀行はケンカを売る対象でもないでしょうね。相手が強すぎます!
【注】税理士が不信感を抱かれる一因は税理士によって見解や能力が異なるということです。大企業たる銀行であれば研修やマニュアルによって、「よい意味での画一的サービス」を提供することができます。