受注ソフトウェアの制作に関するコスト(費用)は、受注単位で把握しなければなりません。それは、受注単位での採算を把握するためだけでなく、正確な期間損益計算(損益計算書の作成)のためにも必要なのです。
◆受注ソフトウェア業の損益計算書
受注ソフトウェア業の損益計算書は次のような項目からなっています。
〇売上高
その事業年度中に制作が終了した(依頼者に請求ができる)受注金額の合計です。(受注金額も大きく制作が長期に及ぶ場合には、制作が終了していなくても作業の進行状況に応じて売上を計上することもあります。)
〇売上原価
上記の売上高に対する制作費用で、製造業(物を作っている業種)の製造原価に相当します。大部分が人件費(給料・賞与、通勤手当、社会労働保険料など)で、作業所の家賃や水道光熱費、制作用の機器などの費用もこれに含まれます。作業をアウトソーシングしている場合には外注費も計上されます。いずれにせよ、製造業に比べてシンプルです。製造業のように材料や設備関連の膨大な費用項目がありません。
以下は他の業種と同じです。
〇売上総利益
〇販売費及び一般管理費
〇営業利益
◆事業年度末に未完成の受注に対するコスト(仕掛品)
事業年度末に未完成の受注に関するコストが生じていることがあります。これについては翌事業年度に繰り越す必要があります。受注に関する売上(収益)が計上されていないのに、それに対応するコスト(費用)を先行して計上するわけにはいきません。
3月決算(事業年度が4月1日から翌年3月31日まで)の会社で考えてみます。
・受注額は300万円(2月に受注)
・制作期間は3月から翌事業年度5月(売上は翌事業年度5月に計上)→事業年度末には未完成
・3月までに生じたコスト60万円
この場合、3月までに生じたコスト60万円は当期のコスト(費用)ではなく、翌期のコスト(費用)として繰り越さなければなりません。この繰越す金額を「仕掛品(しかかりひん)」といいます。仕掛品は製造業でも生じます。事業年度末に未完成の部分で工場の製造工程上にある物です。
このコストを繰り越すという考えは多くの業種で必要なことですが、受注ソフトウェア業のコストは目に見えないことから、この考え方と処理に戸惑う経営者が多いです。
仕掛品を計上した結果、損益計算書の「売上原価」は次のようになります。
〇給料・賞与・法定福利費
〇外注費
〇家賃
〇水道光熱費
〇その他の諸経費
「合計」
〇期末仕掛品→上記の「合計」から差し引く
「差引制作費用」→これが売上原価
◆受注ごとにコストを把握するための前提と方法(仕掛品の計算)
事業年度末の仕掛品を把握するには受注ごとにコストを把握しなければなりません。受注ごとに把握したコストの内、事業年度末に作業が終了していないものの合計が仕掛品です。
この計算を行うには各コストを受注単位別に「関連付け」なければなりません。
〇給料
誰がどの受注に何時間従事したかを把握し、その時間に各人の給料の時間単価を乗じます。
〇外注費
請求書で受注別の作業とその請求額を記載してもらい、その金額で集計します。
〇直接的な経費
交通費や制作用ソフトウェアが受注に関して直接的に(個別に)生じることがあります。請求あるいは支払いの段階で受注との関連を明らかにしておきます。
〇間接的な経費
制作用の機器に関する費用、作業所の家賃や光熱費です。それぞれの年間発生額を年間総受注額(全ての受注の合計額)の各受注額に対する比率で案分するなどします。
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★パッケージソフトウェアの経理処理
マスターを複製して不特定多数のユーザーに販売するパッケージソフトウェアの経理処理は受注ソフトウェアの経理処理とは相当異なります。
売上は物品販売と同じように注文があって出荷した時点に「販売個数×販売単価」で計上します。
費用は、研究開発(市場調査や試作など)の段階では収益(売上)と直接的な関連がありませんので、それが生じた年度の費用として処理します。研究開発が終わり製品化されることが決まってからの費用は製品単位で集計して、資産(無形固定資産)としてプールして複数の事業年度にわたって費用処理(減価償却)をします。
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◆受注ソフトウェア業の損益計算書
受注ソフトウェア業の損益計算書は次のような項目からなっています。
〇売上高
その事業年度中に制作が終了した(依頼者に請求ができる)受注金額の合計です。(受注金額も大きく制作が長期に及ぶ場合には、制作が終了していなくても作業の進行状況に応じて売上を計上することもあります。)
〇売上原価
上記の売上高に対する制作費用で、製造業(物を作っている業種)の製造原価に相当します。大部分が人件費(給料・賞与、通勤手当、社会労働保険料など)で、作業所の家賃や水道光熱費、制作用の機器などの費用もこれに含まれます。作業をアウトソーシングしている場合には外注費も計上されます。いずれにせよ、製造業に比べてシンプルです。製造業のように材料や設備関連の膨大な費用項目がありません。
以下は他の業種と同じです。
〇売上総利益
〇販売費及び一般管理費
〇営業利益
◆事業年度末に未完成の受注に対するコスト(仕掛品)
事業年度末に未完成の受注に関するコストが生じていることがあります。これについては翌事業年度に繰り越す必要があります。受注に関する売上(収益)が計上されていないのに、それに対応するコスト(費用)を先行して計上するわけにはいきません。
3月決算(事業年度が4月1日から翌年3月31日まで)の会社で考えてみます。
・受注額は300万円(2月に受注)
・制作期間は3月から翌事業年度5月(売上は翌事業年度5月に計上)→事業年度末には未完成
・3月までに生じたコスト60万円
この場合、3月までに生じたコスト60万円は当期のコスト(費用)ではなく、翌期のコスト(費用)として繰り越さなければなりません。この繰越す金額を「仕掛品(しかかりひん)」といいます。仕掛品は製造業でも生じます。事業年度末に未完成の部分で工場の製造工程上にある物です。
このコストを繰り越すという考えは多くの業種で必要なことですが、受注ソフトウェア業のコストは目に見えないことから、この考え方と処理に戸惑う経営者が多いです。
仕掛品を計上した結果、損益計算書の「売上原価」は次のようになります。
〇給料・賞与・法定福利費
〇外注費
〇家賃
〇水道光熱費
〇その他の諸経費
「合計」
〇期末仕掛品→上記の「合計」から差し引く
「差引制作費用」→これが売上原価
◆受注ごとにコストを把握するための前提と方法(仕掛品の計算)
事業年度末の仕掛品を把握するには受注ごとにコストを把握しなければなりません。受注ごとに把握したコストの内、事業年度末に作業が終了していないものの合計が仕掛品です。
この計算を行うには各コストを受注単位別に「関連付け」なければなりません。
〇給料
誰がどの受注に何時間従事したかを把握し、その時間に各人の給料の時間単価を乗じます。
〇外注費
請求書で受注別の作業とその請求額を記載してもらい、その金額で集計します。
〇直接的な経費
交通費や制作用ソフトウェアが受注に関して直接的に(個別に)生じることがあります。請求あるいは支払いの段階で受注との関連を明らかにしておきます。
〇間接的な経費
制作用の機器に関する費用、作業所の家賃や光熱費です。それぞれの年間発生額を年間総受注額(全ての受注の合計額)の各受注額に対する比率で案分するなどします。
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★パッケージソフトウェアの経理処理
マスターを複製して不特定多数のユーザーに販売するパッケージソフトウェアの経理処理は受注ソフトウェアの経理処理とは相当異なります。
売上は物品販売と同じように注文があって出荷した時点に「販売個数×販売単価」で計上します。
費用は、研究開発(市場調査や試作など)の段階では収益(売上)と直接的な関連がありませんので、それが生じた年度の費用として処理します。研究開発が終わり製品化されることが決まってからの費用は製品単位で集計して、資産(無形固定資産)としてプールして複数の事業年度にわたって費用処理(減価償却)をします。
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