カフェ・ミーシャの看板を見つけ、そっとドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
元気の良い声が、ミイコを迎える。
「あれ、あずまみいこ ちゃん」
黄色いエプロンをかけた朝倉君がカウンターの奥から出てきた。
「いつもの、お願い」
言って、カウンターを通り過ぎ、奥の席に座る。
例のコーヒー券を使いきった今、他に客のいない時は、そこがみいこの指定席になっていた。
「お待たせしました」
持って来てくれるのは、勿論、浅倉君。
・・・と言っても良いのだろうか。彼は、現在、家出中の為、宇佐美智史 という偽名でアルバイトをしているのだ(もっとも、ここの店長は、彼の従兄なのでネタばれなのだが)。それだけでなく、借りているアパートの部屋にある表札も宇佐美になっている。
それは、一週間ほど前、隣の空いていた部屋に新しい住民が引っ越してきた。一体どんな人かな? と部屋から覗いてみると、なんか見た事のある顔、・・・と思ったら、浅倉君だった。
見られたのを知った浅倉君は、必死になって彼女を拝み倒した。そして、その十分後、みいこの手には、例のコーヒー券が・・・。
こうして、彼女は、カフェ・ミーシャの常連となったのであった。
「ところでさ」
コーヒーを運んできた浅倉・・・ではなく、宇佐美に声をかけた。
「なんか、あたしの名前呼ぶ時、ひらがなで発音してない?」
う 、と詰まって、動きが止まり、
「それは、 つい。あのノートのインパクトが強すぎて・・・」
もそもそと、口の中で呟く。
そう、例のノートをコピーしたのを渡そうとした時、表紙に「あづまみいこ」と書いてあるノートを見られてしまったのだ。すぐに、「東 緑依子」と説明したのだが、それ以来、彼は、緑依子を「みいこちゃん」と呼ぶようになってしまったのだ。
ちなみに、緑依子は、彼をトシ君と呼ぶようになった。これなら本名のアサクラマサトシと偽名のウサミサトシのどちらでも通用する。それに、店内でもトシと呼ばれているので、そのまま使わせてもらっている。
・・・店長の場合、子供の頃の癖でつい、“坊”と呼んで嫌がられている。
「ところで、トサカ君のライブに出るの? エミ達が騒いでたけど」
「う~ん、それなんだけど、いつの間にか出ることに決まってた・・・何でだろう?」
腕組みをして首を傾げる彼の弁によると・・・。
ノートをとってくれたのは、みいこちゃんだし、予定が合えば、出てもいい・・・かな。と言ったのだと主張したのだが、戸坂君は、すでに決まったたから。の一言。
おまけにそこへ集まってきたメンバー達に「トサカから聞いたよ。ライブ出てくれるんだって、助かるよ。今回出られないメンバーがいるんだ。よろしく頼むな」
と先に言われてしまったのだ。さらに、
「たのむよ。これから、おまえのバイト先の店の常連になるし、ライブ後の打ち上げもお前の店でやるからさ」
とまで言われてしまい、嫌とは言えなくなってしまったのだ。
「トシ君って、・・・もしかして、押しに弱かったりする?」
そう、ミイコに言われたのだが、自分が押しに弱いのではなく、自分の周りに押しが強い人間が集まってしまったのではないかと思ってしまうトシであった。
「いらっしゃいませ」
元気の良い声が、ミイコを迎える。
「あれ、あずまみいこ ちゃん」
黄色いエプロンをかけた朝倉君がカウンターの奥から出てきた。
「いつもの、お願い」
言って、カウンターを通り過ぎ、奥の席に座る。
例のコーヒー券を使いきった今、他に客のいない時は、そこがみいこの指定席になっていた。
「お待たせしました」
持って来てくれるのは、勿論、浅倉君。
・・・と言っても良いのだろうか。彼は、現在、家出中の為、宇佐美智史 という偽名でアルバイトをしているのだ(もっとも、ここの店長は、彼の従兄なのでネタばれなのだが)。それだけでなく、借りているアパートの部屋にある表札も宇佐美になっている。
それは、一週間ほど前、隣の空いていた部屋に新しい住民が引っ越してきた。一体どんな人かな? と部屋から覗いてみると、なんか見た事のある顔、・・・と思ったら、浅倉君だった。
見られたのを知った浅倉君は、必死になって彼女を拝み倒した。そして、その十分後、みいこの手には、例のコーヒー券が・・・。
こうして、彼女は、カフェ・ミーシャの常連となったのであった。
「ところでさ」
コーヒーを運んできた浅倉・・・ではなく、宇佐美に声をかけた。
「なんか、あたしの名前呼ぶ時、ひらがなで発音してない?」
う 、と詰まって、動きが止まり、
「それは、 つい。あのノートのインパクトが強すぎて・・・」
もそもそと、口の中で呟く。
そう、例のノートをコピーしたのを渡そうとした時、表紙に「あづまみいこ」と書いてあるノートを見られてしまったのだ。すぐに、「東 緑依子」と説明したのだが、それ以来、彼は、緑依子を「みいこちゃん」と呼ぶようになってしまったのだ。
ちなみに、緑依子は、彼をトシ君と呼ぶようになった。これなら本名のアサクラマサトシと偽名のウサミサトシのどちらでも通用する。それに、店内でもトシと呼ばれているので、そのまま使わせてもらっている。
・・・店長の場合、子供の頃の癖でつい、“坊”と呼んで嫌がられている。
「ところで、トサカ君のライブに出るの? エミ達が騒いでたけど」
「う~ん、それなんだけど、いつの間にか出ることに決まってた・・・何でだろう?」
腕組みをして首を傾げる彼の弁によると・・・。
ノートをとってくれたのは、みいこちゃんだし、予定が合えば、出てもいい・・・かな。と言ったのだと主張したのだが、戸坂君は、すでに決まったたから。の一言。
おまけにそこへ集まってきたメンバー達に「トサカから聞いたよ。ライブ出てくれるんだって、助かるよ。今回出られないメンバーがいるんだ。よろしく頼むな」
と先に言われてしまったのだ。さらに、
「たのむよ。これから、おまえのバイト先の店の常連になるし、ライブ後の打ち上げもお前の店でやるからさ」
とまで言われてしまい、嫌とは言えなくなってしまったのだ。
「トシ君って、・・・もしかして、押しに弱かったりする?」
そう、ミイコに言われたのだが、自分が押しに弱いのではなく、自分の周りに押しが強い人間が集まってしまったのではないかと思ってしまうトシであった。