「なによ。その、計画を邪魔する娘達って」
どういう言い方したんだ、そいつは。
「そう。で、その、魔術師の姿を見たの?」
「はい」
「で、どんな格好?」
「それはですね、せーのっ」
「「だぶだぶ灰色の。首から提げた銀のメダル。小柄で貧相な中年男」」
グルラディーヌとチョウカ、二人の声が見事にハモる。
「ってことは、まさか、さっき言っていたおかしな鳥の大群ていうのが・・・」
「まぁ、普通の鳥ならば、暗闇の中で人を襲って飛んだりしませんよね。なんと言っても鳥目って言葉があるくらいですし」
事の重大さがわかっているのかいないのか、のんびりした口調で話を進める。
「その鳥って、蝙蝠とか梟なんかの間違いなんて事は・・・」
梟はともかく、蝙蝠なら夜大群で飛び回ったりしてもおかしくない訳で・・・。
「でもですねぇ。火を噴いたりしませんよね、蝙蝠だって。いくらなんでも」
再度、顔を見合わせる二人の少女。
「成る程、そちらにも関わっていましたか」
すでに話をする相手は、グルラディーヌと決めたらしく、彼女にばかり話しかける。
「で、なんだって魔術師なんかに関わる破目になったんです?」
「ん、魔術師のところにいた女の子を村まで送って行っただけ。そしたら、いきなり魔犬けしかけられた」
もちろん、それだけではなかったが、あまり褒められたことではないような気がしたので黙っていた。
「魔犬をけしかけられた、・・・その魔犬は、どうしたんです?」
驚きの声をあげるチョウカに
「勿論、倒したわよ」
グルラディーヌがあっさり答える。そして、
「で、そちらさんこそ、どうして魔術師なんかに関わったりしたの?」
というグルラディーヌの問いに、チョウカの視線がレトに飛ぶ。
「それが、魔術師に盗まれた宝石を取り戻して欲しいって、依頼を受けたんだが・・・」
チョウカの視線を受け、レトがぼそぼそと説明を始める。
と、ある神殿に収められている宝石が魔術師に盗まれたので、それを取り戻して欲しいと依頼を受けたレト。魔術師が住むという森へ向かう途中、チョウカと出会った。聞くと彼も同じ依頼を受けていると言う。
魔術師の攻撃をかわしながら何とか宝石を取り戻し依頼主へ返したものの、魔術師の怒りを買った二人。火を吹く魔鳥をけしかけられ、一晩中逃げ回る破目になったというのである。
「それでその、火を吹く鳥は、倒したの?」
恐る恐るといった感じのグルラディーヌに、
「いや、何と言っても大軍だったし、空飛ぶのが相手じゃ手も足も出ないっていう状態だな。はっきり言って、逃げるだけで精一杯だった」
がりがりと頭を掻きながら、レトが答える。
と、言うことは、また今夜、その火を吹く鳥が襲って来るかもしれない訳で・・・。