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「フェルメール」「メーヘレン」は外国語でどう発音するか:オランダ語のVとGの発音について

6月10日の世界ふしぎ発見に登場したオランダの画家、ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)とハン・ファン・メーヘレン(Han van Meegeren)。

オランダ語ではVとGの発音に特殊な事情があるので、外国語では彼らの名前をどう発音しているか気になって、ユーチューブで聞いて調べてみました。

オランダ語のVの発音は過去にオランダ語という記事でも述べたように、[f]に聞こえることがよくある。辞書や語学書での発音記号は/v/と書かれていて、発音記号が/v/でも発音を示すカタカナは「フ」になっていることも多い(一応「ヴ」を使っているものもある)。
実際の発音は地域や個人、語句の中の位置関係によってまちまちだ。位置関係では、無声子音の後のVは濁らないことが多い。また、Forvoで聞いてみたところ語頭でも濁らず[f]に聞こえる人が多かった(一部の人は[v]と濁っていた)。有声音(特に母音)に挟まれたVはほぼほぼ濁って発音される。人によりけりというところもあって、同じ単語でもFと同じように発音する人もいれば、英語のVと同じようにガッツリ濁って発音する人もいる。[f]と[v]の中間のように聞こえることもある(この場合、無声音だが[f]より息が弱い)。
地域的な傾向としては、北に行くほど/v/が無声化することが多く、南に行くほど無声化することが少ないようだ。オランダ北部ではドイツ語圏から近いためか濁らない[f]で発音されることが多く、ベルギーではフランス語圏から近いためか[v]と濁って発音されることが多い。

オランダ語のGは辞書や語学書によって/ɣ/で書かれていたりCHの音と同じ/x/で書かれていたりする。前者はガ行、後者はハ行に近い音だが、オランダ語の場合はたとえ発音記号に/ɣ/を使っていてもハ行を使っていることが多い。
Gに関してはベルギーの一部地域で濁った[ɣ](ガ行に聞こえる)の発音も聞かれるが、それ以外ではおおむね濁らない[x]で発音される。

「Vermeer」の発音について英語版ウィキペディアや英語版ウィクショナリーによると、オランダ語の発音は[vərˈmeːr]でフルネームの「Johannes Vermeer」は直前の無声音[s]の影響でVが無声化して[joːˈɦɑnəs fərˈmeːr]になるとのこと。英語の発音は[vɚˈmɪəɹ ヴァミア]または[vɚˈmɛəɹ ヴァメア]とある。しかし、ユーチューブで聞くと、[vɚˈmɪɚ ヴァミア]と発音していたのもあったが、濁らずに[fɚˈmɪɚ ファミア]と発音していたものの方が多かった。
イタリア語、ポルトガル語でも濁らずに「フェルメール」と発音していたものが多かった。またイタリア語ではHを発音しないが外来語では[h]を発音することもあるようで、ファーストネームのJohannesは「ヨハネス」と発音していた。
フランス語ではだいたい「ヴェルメール」と濁って発音していた。
スペイン語ではVも/b/と発音し、その流れだと「Vermeer」は[beɾˈmeɾ ベルメール]という発音になる。ユーチューブで聞いてみると、[beɾˈmeɾ]と発音する人も[feɾˈmeɾ フェルメール]と発音する人もいた。

一方、「Meegeren」(オランダ語発音[ˈmeːxərən])は英語で['meɪgəɹən メイゲレン]と発音していたのと['meɪxəɹən メイヘレン]と発音していたのがあった。[x]は英語にない音だが、外来語では使うこともある。

GとVの発音に関して昔と今とではどうかというと···

Gは昔は[ɣ]という濁った音で発音していたと考えられる。古くは破裂音/g/でそれが摩擦音化して/ɣ/に、それがさらに無声化して/x/になったと思われる。

Vは古くから濁るか濁らないかで揺れていたようだ。
英語で「魚」はfish、「きつね」はfoxだが、オランダ語ではそれぞれvis、vosというふうに、英語の語頭のFはオランダ語ではVで対応しているものが多い。これらの多くは古オランダ語でFで書いていたが中期オランダ語Vに変わった(/f/と発音していたものが/v/と発音するようになったため。しかし、従来通り[f]と発音する地域もあり、これが現代のオランダ語にもつながっている)。また、同じ単語でFで書かれたりVで書かれたりという表記揺れも見られた。
VはGとは逆に今より昔の方が[f]のような濁らない発音が多く聞かれ、今の方が[v]「ヴ」と濁って発音する方向にシフトしているようだ。英語、フランス語、イタリア語などの外国語との接触の影響もあるだろう。

ベルギーのオランダ語圏(ベルギー北部)を中心とする地域名はフランダースと呼ばれる。Flanders(フランダース)は英語で、フランス語ではFrandre(フランドル)とFで始まるが、オランダ語ではVlaanderen(フラーンデレン/ヴラーンデレン)とVで始まる。オランダ語のVが濁って発音されることが比較的多い地域なのに。

江戸時代にオランダ語から日本語になった言葉
ガラス < glas
ゴム < gom
鳳五郎(ほうごろう) < vogel
ヘット < vet
フラフ < vlag
これらを見ると当時のオランダ語の発音がどうだったか、だいたい想像できる。Gは基本的にガ行、Vは基本的にハ行で受けている。

オランダに「Vitesse」というサッカーチームがある。日本では普通「フィテッセ」と言うが、「ヴィテッセ」や「ビテッセ」という表記も見られる。ユーチューブの実況動画で聞いてみたら「フィテッセ」に聞こえた。ギリシャ語表記も「Φίτεσε(Fitese)」だし、やはりオランダ語のVはFのように聞こえるという認識があるようだ。

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