さて8月は夏休み特集としていつもと趣向を変え、ウクレレならぬスヰンギン・ギターの音盤を週刊更新で紹介してみたいと思う。
最初の一枚は、ジャンゴ・ラインハルトの実弟、通称”ニンニン”ことジョゼフ・ラインハルトの1970年アルバムから始めよう。少年時代から偉大過ぎる兄=ジャンゴのリズム・ギター役を担い続け、プロ活動に転じてからはしばしば姿をくらませステージをすっぽかす"自由人"である兄の代役として、時にはリード・ギターも引き受けることもあったようだ。戦前の時点で既に兄の元を離れ自身のグループを率いての録音(SP盤)も残していたが、戦後兄の没後は、しばらく演奏から遠ざかっていた時期もあった。
60年代前後には、再び自身の名義で数枚のアルバムを吹き込んでおり、そのうちの一枚が本作。バイオリンが加わる理想的なフォーマットで兄ジャンゴの人気レパートリーを再演した出来の良い追悼アルバムで、タイトルの意味は「ジョゼフ、ジャンゴの為に弾く」といったところ。ジプシーの人々が暮らす移動式住居(幌馬車隊のキャビンを固定したもの)に腰かけた初老のジョゼフが、アーチトップギターを弾いているジャケット写真がまた渋い。
オリジナル盤は1967年にフランスの「Nouvelles Galeries Et Magasins Modernes」なるレーベルからリリースされた「Hommage À Django Reinhardt」というタイトルのレコードだが、拙宅の個体は1970年のフランス・JBというレーベルからの再発盤で、タイトルも異なる。 ヨーロッパのジャズレコードにはしばしばある事だが、再発のたびにジャケットのデザインやタイトルまで変わるので要注意だ。
A1 Nuages
A2 Melodie Au Crépuscule
A3 Minor Swing
A4 Djangology
A5 Daphné
A6 Tears
A2 Melodie Au Crépuscule
A3 Minor Swing
A4 Djangology
A5 Daphné
A6 Tears
B1 Manoir De Mes Rêves
B2 Place De Brouckère
B3 Violons (Written-By – J. Reinhardt)
B4 Bric A Brac (Written-By – J. Reinhardt)
B5 Triste Mélodie (Written-By – J. Reinhardt)
B6 Menuet (Written-By – J. Reinhardt)
B2 Place De Brouckère
B3 Violons (Written-By – J. Reinhardt)
B4 Bric A Brac (Written-By – J. Reinhardt)
B5 Triste Mélodie (Written-By – J. Reinhardt)
B6 Menuet (Written-By – J. Reinhardt)
A面からB面前半まではジャンゴの人気曲がずらりと並び、B面の後半4曲はジョゼフ氏の自作曲を収録。B4は戦後にジョゼフがよく演奏していたシグニチュア・チューンといえるものだ。
演奏メンバーは以下
Lead Guitar – Joseph Reinhardt
Violin – Villersten Viviani
Violin – Villersten Viviani
Rhythm Guitar – Adel Henri
Contrabass – Caratini Patrice
Drums – Hayat Guy
Contrabass – Caratini Patrice
Drums – Hayat Guy
バイオリン、リズム・ギター、ベースという戦前ホットクラブ風のジプシー・ジャズ編成に加えて、本作ではドラムが加わりジョゼフもエレクトリックを弾いているのが戦後折衷スタイルといったところ。
深めのリバーブをかけたジョゼフのギターが紡ぎだすフレーズには兄ジャンゴとは異なるダークな個性があった。1982年に69歳で亡くなり、兄ジャンゴの隣に埋葬されている。