先月の話になりまするが、大型連休に入る前の平日、国立新美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」を観たのでございます。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2019/wienmodern2019/
日本・オーストリア外交樹立150周年記念の展覧会、ウィーンの世紀末文化を「近代化への過程」という視点から紐解きますのじゃ。
19世紀末だけでなく、18世紀の啓蒙思想時代から始まって、何と約400点も展示。
これを観た前日には、東京都美術館「クリムト展 ウィーンと日本 1900」を観たのじゃが、本展でもクリムト作品が数多く展示されておるぞよ。
構成はざっくり以下の4章じゃが、その中でもテーマが細かく分けられて、わかり易うござります。
お気に入りや気になった作品も色々あるのじゃが、ごくごく一部をリスト順に。
【第1章:啓蒙主義時代のウィーン 近代社会への序章】
・マルティン・ファン・メイテンス《幼いヨーゼフ2世を伴ったマリア・テレジア》
マリア・テレジアが描かれた大きな作品のゴージャス額縁の上部に、王冠のついたダルマ型の小さな額縁があり、幼いヨーゼフ2世が描かれておりまする。
【第2章:ビーダーマイアー時代のウィーン ウィーン世紀末芸術のモデル】
ビーダーマイアー時代のシンプルなデザインの銀器やら、家具やら、ドレスや帽子やらも展示され、部屋の様子や街の様子を描いた絵画もあり、興味深うござります。
・《ボール・ドレス》
玉虫色のタフタのドレスで、大きくV字に空いた襟、細く絞ったウエストから広がるスカート、袖はシンプルな半袖。
・ヴィルヘルム・アウグスト・リーダー《フランツ・シューベルト》
・《フランツ・シューベルトの眼鏡》
お馴染みシューベルトの肖像画と、シューベルトが実際に着用していた眼鏡が並んで展示。
眼鏡は絵に描かれたものとは異なりまするが、たいそう小さな丸眼鏡で、シューベルトはいつでも作曲できるよう、眠る時もかけていたそうな。
【第3章:リンク通りとウィーン 新たな芸術派パトロンの登場】
・フランツ・ルス(父)《皇后エリーザベト》
レースを多用した白ドレス姿の、たいそう愛らしく美しいエリーザベト。
・グスタフ・クリムト《旧ブルク劇場の観客席》
遠目で観て写真と見紛うたグワッシュの絵。クリムトと知ってちとびっくり。
【第4章:1900年-世紀末のウィーン 近代都市ウィーンの誕生】
いよいよ19世紀末ウィーン登場で、テーマも6つに分けられ、ウィーン分離派の作品も数多く展示。
・オットー・ヴァーグナー《カール・ルエーガー市長の椅子》
近代建築の先駆者ヴァーグナーの作品も多く展示されておりまする。
ローズウッドに真珠母貝の象嵌。オリエンタルな雰囲気も漂う椅子。
・オットー・ヴァーグナー《美術アカデミー記念ホール:模型》
カエデ材と、金鍍金されたブロンズによる模型で、装飾がたいそう美しい建物じゃ。
《美術アカデミー記念ホール設計計画》と共に展示されておりまする。
・グスタフ・クリムト《愛》(「アレゴリー:新連作」のための原画 No.46)
画面が縦に3つに区切られ、金色の両端にはピンクの薔薇が余白を持って描かれておるのが日本チック。
・グスタフ・クリムト《パラス・アテナ》
右手に「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」の化身を持ったパラス・アテナ。
《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》は、東京都美術館「クリムト展」で現在展示中じゃが、この素描が第4章にあるぞよ。
・マクシミリアン・クルツヴァイル《黄色いドレスの女性(画家の妻)》
緑の植物柄のソファに座って両手を広げて座るご婦人の黄色のドレスが目を引きまする。
・グスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》
この作品のみ写真撮影可なのじゃ。
わたくしが行った時はこんな感じでたいそう空いており、ひとり占め状態で堪能できたぞよ。
部分。文様も美しいのぅ。
・《グスタフ・クリムトのスモック》
クリムトが来ていた青いスモックで、両肩に刺繍が施されておりまする。
この辺りには、エミーリエ・フレーゲ関連のものも色々展示されておりました。
ちなみに特設ショップでは、クリムトのスモックと同じデザインのTシャツが販売されていて手に取ったのじゃが、クリムトとペアルックになった己の姿が頭をよぎり、そっと手放したのでございます。(ごめんよクリムト~)
・ルドルフ・カルヴァハ《ユーモラスなグリーティングカード》(ウィーン工房ポストカードNo.29.33.49)
ウィーン工房のグラフィックも色々あり、カルヴァハのカラーリトグラフのカードは面白可愛いのじゃ。
・エゴン・シーレ《ノイレンバッハの画家の部屋》
窓もドアも描かれておらぬエゴン・シーレの部屋で、サインが3つも書き込まれておりまする。
会期は8月5日まで。ご興味ある方はぜひ。
展示数が多いゆえ、いらっしゃる方はお時間に余裕を持っての。
ロビーには、ベーゼンドルファーのクリムトモデルが鎮座ましましておったぞよ(写真撮影可)
ピアノでまず思い浮かぶ3大メーカーが、スタインウェイ&サンズ、ベヒシュタイン、そしてウィーン生まれのベーゼンドルファーじゃが、このクリムトモデルは世界限定25台で、屋根の内側にはクリムトの《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I》がゴージャスに再現されておるのじゃ。
脚の上部にも金箔を使用。
うぬぬ~、欲しいぞよ~。せめて弾かせてたもれ~(こらこら)
ピアノの展示は、本日5月6日まで。
2階のサロン・ド・テ ロンドで、クルツヴァイルの《黄色いドレスの女性(画家の妻)》をモチーフにしたコラボスイーツを食べようと思うたが、パッションフルーツのケーキで酸味がありそうゆえ断念したのでありました。