「まあ持ち家なんだから、焦らずゆっくりリハビリしてからお店やれば良いんじゃない」
顔見知りの方からそう言われた。
ありがとうございますと会釈して別れたが、店は持ち家ではない。
しかしそれほど親しくない人に内情を話しても詮無いことだし、「お大事に」という気持ちに頭を下げるのみだ。
店を休業して1年と10ヶ月ほど、体力的にはずいぶん回復したけれど、精神的、金銭的にはかなりヘロヘロだ。
いつ再開できるか定かではないが、維持しなければさらに遠ざかってしまうから、まったく営業利益もないのに家賃や水道光熱費を払い続け、保険やリース料などの維持費も払ってきた。
それに加えて昨年はトイレのリフォーム代や厨房の解体費も支払ったから、しばらく延ばし延ばしにしていた決算をえいやっと片付けて、その深刻な数値に愕然としたのだ。
わかっちゃいてもヘナヘナとへたり込んでしまいそうな現実にため息をつき、青色申告に書類を出したその夜、ずっと封を開けていなかった「想天坊」を冷やで
グビッとやった。
なぜか「吉幾三」の「酒よ」が脳裏に浮かび、つい盃が進んでしまった。
書類を提出したときに質問されたのは、ずっと休んでいるのに期末棚卸高が前年とさほど変わってないのは何故か、食品関係はとっくに無いはずだということ。
そりゃあ生鮮も冷凍物もとっくに無いけれど、封を切っていない酒はかなりあるわけで、あとテイクの容器もごそっとあるわけで、それに「魔王」だとかプレミアの付いた焼酎もそこそこあるからそれなりの金額になると説明した。
そして売り上げもないのに仕入れ金額があるのは何故か、と。
そりはですね、やがて再開したときのために試作を何度もして、長年取引をしているお店で仕入れて顔つなぎをしていたからなのですよ、と話したら、それは仕入金額ではなく試作材料費として計上しましょうと直された。
時どき腕が鈍んないように、フライパンやホットプレートでお好み焼や焼そばはやっていたし、食べたいとご要望の松本の「ジョニー」さんのとろころには牛すじ大根煮をクール便で送ったりもした。
でもさ、何もかも値上がりして、ホントにため息ついちまうよ😮💨
そんな時は「高田渡」の「値上げ」を口ずさんでしまう。
値上げ【高田渡】with 高田漣 2003 @吉祥寺音楽祭(貴重映像)(歌詞付)
しかし昨今の値上げは尋常じゃないから、「高田渡」が生きてたらもっとキツイ歌になっていたかもしれないよなぁ。
自然もなんだかおかしなことになっているせいか、近所の公園にサギがいた。
近づいてもじっと動かず、最初は置き物❓と思ったが、さらに近づくと動いた。