ギムレットは飲めない

入院中に「村上春樹」訳の「ロング・グッドバイ」を読んだ。

「レイモンド・チャンドラー」を読んだのは30年ぶりくらいだろうか?

高校生の頃に翻訳の大御所「清水俊二」さん(戸田奈津子の師匠) 訳の「長いお別れ」を読んで以来、「さらば愛しき女よ」など「チャンドラー」と「フィリップ・マーロウ」ものを読むようになった。

小説中に度々出てくるウイスキーやギムレットのなんたるかは当然のごとくよくわからない若造ではあったが、大人の男、騎士道精神、権力に屈しないタフさ、男女の機微、などというものに引かれたのか、英語も読めないくせにペイバーバックを持ち歩き、電車の中でペラペラめくるような生意気なガキだった。

ハードボイルドな生き方、なんてものが夢物語だと思い知る前のいい時代だった。

「ダシール・ハメット」の「サム・スペード」や「コンチネンタル・オプ」、「ミッキイ・スピレイン」の「マイク・ハマー」、そして「ロバート・B・パーカー」の「私立探偵スペンサー」等々、いっぱい読んだし、登場人物が飲みまくる酒に興味津々だった。

六本木でバイトをしている時「事件記者」に登場するバーに連れて行ってもらったり、ウイスキーのイロハを教えてもらった今は無き「BAR twin」のマスターにカスタムメイドのモデルガンを作って貰ったり、ハードボイルド小説はイコール＝ウイスキーだった。

あれから40年も経ち、酒はオリンピックプール2、3杯分ほども飲み、ポンコツな体はハードボイルドな傷跡だらけで、目下のところ11月1日から酒を絶っている有様。

「ロング・グッドバイ」の中でアル中の作家「ロジャー・ウェイド」が「マーロウ」に向けていう、

「酔っぱらいは何ひとつ学ばない。酔っぱらいはただただずるずると崩壊していくだけさ。その崩壊の過程のある部分は、なかなか愉快なものだ。しかしそれ以外の部分はとんでもなくおぞましいものだ」

というセリフが身にしみる昨今。(悪魔のお爺ちゃん、アンタもご同様だ。だからあえて言おう「ギムレットには早すぎる」と。)

また「ロング・グッドバイ」の中でもうひとりの主人公とも言える「テリー・レノックス」はギムレットに一家言あって、

「本当のギムレットはジンとローズ社製ライム・ジュースを半分ずつ、他には何も入れない」

などというが、「マーロウ」にはそんなこだわりはない。

レシピ本では、

「イギリス海軍の軍医「ギムレット卿」が、ジンの飲み過ぎを憂慮し、健康維持のためにライム・ジュースを混ぜて飲むことを提唱した」ということで、シェイカーにドライジンとライムジュース(生のライムを絞るのもあり)、シロップを入れてシェイクしカクテルグラスに注ぐ、という別段小難しいものではない。

シェイクしないで同じ材料を氷を入れたグラスに注げば「ジン・ライム」になる。

どっちも好きだ。

好きだから辛い。

なぜって、免疫抑制剤を一生飲み続ける身には、ライムが御法度だからだ(￣◇￣;)

クリニックで配布された「グレープフルーツ以外で避けたほうがよい果実と摂取してもよい果実について」というチラシにはこうある。

摂取してもよい果実は

みかん、伊予柑、デコポン、ポンカン、金柑、イークワーサー、かぼす、すだち、オレンジ

とあり、

避けたほうがよい果実には

夏みかん、ブンタン、晩白柚、ザボン、ダイダイ、八朔、ゆず、ダイダイ、そしてライムがあった。

だから、ギムレットはダメ(T_T)

コロナビールにライムをさすのもだめΣ(￣。￣ﾉ)ﾉ

鍋に柚子胡椒を入れるのもダメ！(◎_◎;)

ということなのだ。

う～ん、ポカリスエットにもグレープフルーツの成分が入っているからダメだし、もっと他にもNG食品があるかもしれない。

今度クリニックで詳しく掘り下げて聞いてみないと、迂闊に口に入れられないではないか😟

しかし目下のところはどんな酒も飲む気がしないのだが、お正月には風呂に入って日本酒をクイッとやる習慣は守りたいと思ったり、まだ人の来ない開けたばかりの静かなBARで一杯やりたい望みはあったり、焼酎も新しいものを仕入れる予定はあるし、かあちゃんの下戸な腎臓が拒まない限りはやがてお酒を嗜むのだ。

「村上春樹」の翻訳は良い👍(彼のベストセラーな小説は一冊も読んだことはないのだが・・・)、今度「さらば愛しき女よ」や「大いなる眠り」も読んでみよう。

珠玉の名言・名セリフが蘇る。

「タフでなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない」

「静かなバーでの最初の静かな一杯　　こんなすばらしい一杯はない」

そして、

「To say Good bye is to die a little・・・・さよならをいうのは、少しのあいだ死ぬことだ」

友よ、また会おう👋