「機龍警察」の新作が早く読みたいワテクシは思い出したように本屋に行ってチェックをするのだが、「月村了衛」は次々と別の問題作を発表してその度にお買い上げしてしまう。
前作「脱北航路」は、どちらの政府も煮え切らない「拉致問題」をよくぞここまで書きましたと唸るエンターテインメントだったが、今回の「香港警察東京分室」も平和ボケした日本にグサリと問題提起するエンターテインメントだった。
「香港警察東京分室」なんて往年の香港映画か⁉️というタイトルだが、これはしっかり警察小説で「分室」は通称で正式名称は「警視庁組織犯罪対策部国際犯罪対策課特殊共助係」と長ったらしく、この「特殊共助係」というのが曲者で互いの組織に累が及ばないための「相棒」の「特命係」みたいなもんだ。
だから部署は本庁ではなく古書店街・神保町の雑居ビルで、香港警察から派遣された5人の捜査官と日本警察の曲者の5人がペアを組み、本来なら捜査権も武器使用も認められない香港チームとギクシャクしながら事件解決にあたっていく。
香港から来た捜査官の任務とは、2012年に香港で起きた大規模な422デモを扇動した首謀者であり、日本に逃亡する際に殺人を犯して香港警察から追われている大学教授で民主活動家の「キャサリン・ユー」を確保して香港に送還すること。
しかし香港側に何か裏があるという疑念を捨てきれない刑事たちは信頼関係が築けず、刑事たちの背景もまた香港側から疑念を持たれていて、そうこうしているうちに信頼関係もへったくれもないとんでもない事件・ドンパチが立て続けに起こり、香港側も日本の刑事もそれぞれの特技を駆使して危機を乗り越えていく・・・。
「ポリス・ストーリー/香港国際警察」の「ジャッキー・チェン」をキャステイングしたいような活劇、また活劇でこれまた一気読み必至の一冊。
しかし「香港国家安全維持法」が成立し「一国二制度」の終わる香港、「民主はないが自由はある」香港を愛する登場人物が語るセリフは重みがある。
日本人は自由のない社会、特定の政治勢力に支配された社会を当たり前のように受け入れていると糾弾し、
「この国は香港と同じ道を辿っている。しかも恐ろしいまでの早足で、なんの疑いも抱かずに。(略) あなた達は権力に対してどこまでも従順であるばかりか、抵抗する人、疑問を投げかける人を皆で嘲る。進んで自由を投げ出そうとする。香港人の私にはまったく信じられないことだらけです! 断言しますが、日本は香港よりもたやすく独裁主義、全体主義の手に落ちるでしょう。いや、すでにそうなっていると言った方がより実情に近いはずだ」
と平和ボケした頭に痛いセリフを吐く。
最近のニュースやワイドショーレベルでも、中国が警察拠点を密かに日本の各所に設置していると報道されたが、現実とフィクションがシンクロしてありえねードンパチにもリアリティを持たせる。
さらに平和ボケした頭に「2047年問題」を突きつける。
今から24年後の2047年に香港の一国二制度が消滅するのだが、すでに中国は強引に一国二制度を有名無実にしてしまっているわけで、その日の前に利権と派遣を巡って「中南海」では激烈な権力闘争が繰り広げられているというわけだ。
「その駒として動かされているのが日本と日本警察である・・・」
ん〜〜っ、ありそうなこった、外に弱腰のくせに民を顧みない政府、キャリア警察の腐敗は下々にまでバレている有様だから、「2047年問題」を対岸の火事と知らん顔するのはヤバいんじゃないかい。
この現実を突きつけられた刑事たちと香港の捜査員たちはどう行動するのか⁉️
身長150センチほどの小柄で天然を思わせる「分室」管理官の水越警視がいい味を出していて、もしこの本がシリーズ化したらいつか『機龍警察』の沖津部長と共演してくれるとらさらにオモロイんだけどなぁ。
一気読み必至‼️