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お好み夜話-Ver2

Moby-Dick 白い呉爾羅⁉️

NET(現テレビ朝日)「日曜洋画劇場」(初回放送1968年5月)が先か、「少年マガジン」(1968年33号から37号に5回連載 梶原一騎:構成、影丸譲也:作画)が先だったか今となってはもう覚えていないが、どちらも昭和の良い子にガツンと衝撃を与えてその後50年以上も心の中にセントエルモの火を灯し続けた。

 

ところがいざ原作の「ハーマン・メルビル」の「白鯨 / Moby-Dick」となるととても一筋縄では読了できず何度も挫折して、最初に手に取った中学生の頃の本は諦めたままどこかへ紛失し、その後も何度か読もうと試みたもののやはり途中で放り出し、なんとか読み終えいま我が家にあるのは新潮文庫の昭和53年7月の29刷。

「白鯨 / Moby-Dick」が出版されたのは1851年(嘉永4年)で、時代背景もさることながらまあその語り口には神話や創世記、聖書などからの例えが多く、いちいち巻末の訳注(上巻だけで23ページにもなる)を引かなけりゃチンプンカンプンでちっとも読み進めず、鯨の分類や捕鯨についての考察もかなりの分量で語られ、なかなか昭和の良い子が熱狂した1956年公開の「ジョン・ヒューストン」監督作品やマンガ版のような、白い悪魔・「レヴィアタン」とも称される巨大なマッコウクジラとの戦いで片足を食いちぎられ、復讐に燃えるエイハブ船長とその狂気に憑かれた捕鯨船ビークォド号の乗組員と白鯨の死闘のところだけを切り取って描いた海洋冒険活劇のシーンには至らない。

しかし白鯨との闘いだけを描いた海洋冒険小説だったら世界10大小説などと謳われなかったろうし、登場人物のひとり一等航海士「スターバック」の名がコーヒーチェーンの店名になったかどうかは怪しい。

難解で読みにくくてもその薀蓄とフロンティアスピリットから、神話を持たない新興国アメリカのバイブルになったのかもしれない。

 

ある日、昭和の良い子に強烈な印象を与えた「少年マガジン」のマンガ版「白鯨」が少年画報社から20世紀漫画叢書」となって復刻していることを知り、どうしてももう一度読んでみたくなってポチッして入手した。

これだ‼️

セントエルモの火をつかむ狂気のエイハブ船長、「クィークェグ」の棺桶につかまってただ一人生きのびる「イシュメル」、すべてを海の藻屑と消し去る白い悪魔、銛や槍を何十本も打ちこまれても死なないモービィ・ディックは、さらがら白い呉爾羅として子供心に刻まれたのだ。

 

それからまたしばらくしてふと立ち寄った本屋で「夢枕獏」の「白鯨 MOBY-DICK」を発見、なんと「ジョン万次郎」がエイハブ船長の捕鯨船「ピークオッド号」に乗っていただと⁉️

こ、これは読まずにおられんばいと即購入。

でもすぐに読もうと思ったが、ちょっと頭を冷やして調べてみた。

「白鯨」という架空の話しと、漂流した土佐・中浜の漁師「万次郎」の接点はどこか❓と。

すると、「白鯨 / Moby-Dick」が出版された1851年(嘉永4年)当時アメリカの捕鯨船がマッコウクジラを捕るために小笠原辺りまで航海していたことは珍しいことではないと知り、事実「万次郎」は漂着した鳥島でアメリカの捕鯨船ジョン・ホーランド号に助けられたのだから、もしそれが「ピークオッド号」だったら・・・、そういうお話しができると思いついた「夢枕獏」はさすがだ👏

 

そうと知ってもまだすぐには読まず、今度は「ジョン・ヒューストン」の「白鯨/Moby Dick」をあらためて観ることにした。

う〜ん、いろいろ賛否はあるようだが昭和の良い子のエイハブ船長は「グレゴレー・ペック」で決まり、マンガ版のエイハブもこれですよd( ̄  ̄)

白鯨に絡めとられたエイハブの手がおいでおいでするように浮き沈みするシーンは、良い子にはトラウマになっちまいますぜ‼️

この映画の脚色はなんと「レイ・ブラッドベリ」で、船乗りが航海の前に祈る教会の神父が「オーソン・ウェルズ」だと今更ながらに認識した。

そしてその教会の壁に掲げてある碑に「killed by a Sperm Whale on the coast of Japan」とあるのを発見し、

直訳すれば「日本の海岸でマッコウクジラに殺された」となり、これはやがて「ピークオッド号」とエイハブ船長が白鯨のために殺されることを暗示しているのではないか!(◎_◎;)

ボーッと観てたらわからなかったことが時間と年齢を経て見えてきたぞ、ってことで「夢枕獏」版「白鯨 MOBY-DICK」を読み始めた。

 

う〜ん、オモロイぞ、さすが物語り作家「夢枕獏」、若きヒーロー「ジョン万次郎」はエイハブに次ぐ銛うちとして活躍し、「メルヴィル」の原作がより分かりやすく噛み砕いて頭に入ってくる。

そして捕鯨船よりも大きい(推定体長55メートルほど)白鯨という怪物は、もはやクジラというよりも白い呉爾羅=ゴジラだとあらためて思い至ったのであった。


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