お好み夜話-Ver2

名人と素人の差

「とうちゃん、今年の冬はしばれるね」

「んだなぁ」

「はやくおうちに帰りたいよぉ」

「泣き言いうんでね ! 」


前略おふくろ様。
せっかく芋掘りに来たというのに、まだ僕たちは1本も掘り出していないわけで・・・・。

千曲川の脇にあるこの畑には、およそ600本以上の芋が眠っているそうな。

アルプスやその周辺の山々が雪化粧をしている、霜柱が5センチもたっているような朝、親戚の「青木さん」から作業着も長靴も手袋も貸してもらって、やる気満々で畑まで連れてきてもらったが・・・

ちょいと引っ張れば、ズボズボと土の中から掘り出せるなんて軽く考えていたら大間違い。

寒さで硬くなった表面の土をスコップですくい取り、ちょろっと出ている芋のシッポを見つけたら、慎重にあわてず騒がず、手前から深く掘っていくのだ。

5、60センチも掘れば芋の2/3が現れるが、それで簡単に引っこ抜けるもんじゃない。
へたに揺すったら途中からパリッと折れてしまうし、スコップが軽く触れただけでも表面は削りとられてしまう。
いやがうえにも慎重に、ひたすら棒倒しのように手前の土を深くほって、自然に抜けるようになるまで我慢する。
短気な者には耐えられないほど、根気のいる仕事だ。

深く穴を掘るには、自分の足場も確保しながらでないと、掘り起こした土を穴の外に出すのが大変だ。
そのコツがのみこめるようになる頃には、汗ばみ、何本も芋を折ったり、欠いたりした。
 
1メートルも掘って、ようやく立派なお芋ちゃんをゲット。

ここでくたばったら、一石二鳥だ。
自分で墓穴掘って、おさらばさ。

モグラオヤジ、芋とともにここに眠る。 アーメン てなもんだ。


オヤジが悪戦苦闘している隣で、じつに気負いなく、黙々と芋を掘り続けている「名人」がいた。
「名人」のスコップは、持ち手の柄が長年の間にすり減って細くなっている。
土竜の手のように馴染んでいるスコップで、淡々と、まるで力まず土を掘り、その穴も掘り起こされた土も、じつにきちんとした姿で、見事な長さの芋を次々に収穫しているのだ。

見ていると、少し掘っては休み、掘り出しては休みしているのに、穴を掘る速度はオヤジよりも速いのだ。
ちょっと意識して、「名人」に追いつけ、追いこせと、スコップを振るってみたが、その差は縮まなかった。

「名人」の動きには無駄がなく、オヤジのように、力任せに土を掘り出しているのではない。
たとえるなら、カンフーの達人と腕力のみのチンピラとの違いといえばいいか、あとで「名人」のお歳を聞いてぶっ飛んだ。
御歳89歳だそうな !!

これぞまさに「名人」と素人の差であった。
継続こそ力なり !!

来年もまた、掘らしてもらおう。
旨いものを食べるには、それなりの努力が必要ということを教えていただきました。

収穫なり。
収穫なり。


「青木さん」どうもお世話になりました。
たくさんどうもありがとう。
来年もお世話になります。


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