神は人間を救わない。というより救えないのだ。
それは人間の親が我が子を本当の意味で救えないのと同じである。
あの世に地獄はない。
よって、神が人間を罰することもなければ、救うことがないのは当たり前である。
「では神様って何の為にいるんだ?」と思うだろうか?実はそんな疑問が浮かんでくること自体が間違っている。
真実は、神様は人間の為に存在しているのではなく、人間が神様のために存在しているのだ。あらぬ方向へ進化して行く今では過去形で「いたのだ。」と言うのが正しいだろうか?
人間が神様のために生まれたのは、丁度人間が自らの子供を欲っして産むのと同じようなことである。
どんな子供も生まれたくて生まれたのではなく、親が産みたいから産んだのであって、言い換えれば子供は親の欲のために無理やり生存させられたのである。よってその最大の我儘を成した親は、子供の犠牲にならなくてはならない。親が子供の犠牲になることは至極当たり前のことなのだ。そして、最大の我儘を聞いてくれた子供を真に幸せにすることが親の役目なのだ。
では、親は犠牲になってまで何のために子供を欲するのか?
真っ新な心を持った人間ならすぐこう答えられるであろう。
「半人前が一人前の真人間になるためである」と。「そしてその喜びを、やがて親になる子供へプレゼントする為でもある」とも。
それは丁度、神がより格式高い神になるために人間を産んだのと同じことで、神もまた自然界の上を目指すことが心からの喜びなのである。
それがどうであろう?今の人間ときたら・・・・・
子供に虐待する親、子供に自分の我儘や理想を押し付ける親、子供に孤独という最大の悲しみを我慢させてまで働きに出る親、過保護に育てあげたあげく最期には放置する親。最初から全く育てる気もないのに出来たから産むだけという親。
神様は考えた。そして空想した。
もしも、空の人を地球に沢山送ったなら、人間たちのヘドロを沢山吸い取って人間の心がキレイになるのだろうかと。しかしそれには、空の人の原料である雲を大量に使ってしまうし、地上に降ろされた空の人があまりにも可愛そう過ぎる。とすぐにその考えをとりやめる。
それどころか、空の人の実直でけなげな生活ぶりを毎日見ていると、むしろ空の人をあの汚れた人間界から救ってやりたくなってきてさえいるのだ。
神はふとこんなことを思った。
「空の人だけの惑星を作ったらどんな世界になるのだろう?
もしかしたら、素晴らしい世界が出来上がるのではないだろうか?」
神様はその世界を見たいと心から思った。
早速、遣いの者を集めて会議を開き新しいプロジェクトについて話あった。
神様「ワシは新しい惑星に新しい世界を創ろうと考えている。」
遣いA「どのような世界でしょう?」
神様「今人間の住んでいる地球という惑星にモニターの空の人を送っておるが、様子を見れば見るほど人間はあらぬ方向へ進化しつづけている。これは親であるワシの責任だから、もちろん地球にいる人間の方はワシが最後まで責任をもって観察しつづけよう。しかしだ、別に新しい世界を作ろうと考えたのだ。それは、空の人だけの世界だ。」
遣いB「はぁ?空の人は神にはならない人ですぞ?それの世界を作ってどうなさるのでしょう?」
遣いC「そうですよ。おかしなことを言いますね。私は反対です。それこそ、終わりのない課題を背負ってしまうことになってしまいますぞ。」
神様「ワシに終わりなど最初からない。」
遣いC「そうは言いましても、神様、あなただっていつ引退したくなるか分からない。課題を放棄した神様がどれだけいらっしゃったことか。」
神様「それは否めない。しかし、ワシの課題は人間の成長を見届けることだったが、もうそれは望めない。これからも見届けるが、ワシがどうこうできるものでもない。このまま永遠に過ごせと言われてもワシにも酷なのじゃ。」
遣いD「分かりますとも。新しい課題を作ることは良い事です。それに、空の人たちがどのような世界を作るかは、私にも興味があります。賛成します。」
1000人の遣いとの話し合いと多数決の結果、賛成が多かったため空の人だけを集めた世界を作ることにした。
その内容はと言えばこうだ。
まずは生まれたての真っ新な空の人だけを集めて生物として生活することができるかどうか様子を見る。次にもし必要があれば地球に住んでいる空の人を呼び寄せて一緒に住まわせてみる。
何のノウハウも与えない。神様は今まで通り手をださない。
以上だ。
早速神様一同は、住み心地のよさそうな(H2Oの水と窒素空気でなくてもよい)惑星を探し出すと、雲の粘土を製造し1000体の空の人を創った。地球に送った空の人同様、一応は男女半数づつ創ったが性格の違いは個人のものだけで、男女の考え方の違いは全くなしにした。全ての能力においては、これまで通り人間の平均値をとった。
時は経ち、新しい世界を創って100年ったっても空の人たちの世界は、平和で楽しそうにつつましく暮らしていた。土をかまくらのような形にして家を建て、ドアや窓枠には寿命直前の年取った木を乾燥させて使った。
花を飾りたいときは庭や家の中に種を植えた。
言語はずっとひとつの言語を使われた。空の人は最初から超能力を持っていない。人間のように最初一体だったわけではないので、心は通じ合わない。だからこそ言葉はとても重要なものとなった。話すときは誤解のないように説明するし、無駄なことは言わない。もちろん、嘘や”からかい”も全くなかった。
心が真っ新な為か、誰も変なプライドを持っていないため、本当のことを指摘しても怒るものはいない。それどころか、言葉で本当のこと以外なにを言うのか?というのが彼らの気質だった。
ひとりひとりが自分の性格に合ったことを仕事にし、ものの価値は通貨で測った。
仕事の大変さは、かかる時間と、体力と、必要とされる知識数、そして就業できる人数とその時代の社会に必要とされる指数で測った。よって社長より技術者の方が沢山給料をもらっているということも稀ではなかった。
通貨はモノの価値を測るためのものであり、足るを知る空の人は誰も独り占めしようとは考えなかった。それより、誰もが困らない社会を彼らは目指した。誰かが困ってしまう社会は社会ではないという考えを彼らは自然と持っていた。
しかし、動物たちの”(地球の言葉で言う)弱肉強食・食物連鎖”は自然の道理であるのでそれはそれで自然であったし、自分たちの価値観を動物に押し付けるなんておこがましいことをする者は居なかった。
ソラが来たのは世界ができて30年後のことだ。
地球にいたソラは色々な経験をしてひどく傷ついていた。ある日、人間界に疲れ果て自死しようとしたため、神様が呼び寄せた。
かつて地球でスターだったあのスポーツ選手も、体が不自由になったら誰も見向きもしなくなったばかりかバッシングを受けるようになり、心が荒んでいたため呼び寄せた。
二人の空の人は、地球との落差に戸惑いながらも穏やかな老後を過ごした。老人になって初めてきた惑星なのに懐かしささえ覚えたし、生物として共感できることが沢山あった。二人とも元々真っ新な人なので、言葉を覚えるのも早かった。
家を買う時にはお金はいらない。空の人の中でもリーダーにあたる人が大工を呼び寄せてみんなで暇な時に作る。
家が完成したとき、ソラも元スポーツ選手も、覚えたての言語で心から感謝を伝えた。それだけで、空の人たちは喜び、その喜びの心で音楽を奏で、誰かがおいしいものをおすそ分けしてくれ、自然と新築祝いのパーティーになった。
空の人たちは正直が故に誰も無理をしない。自分の能力を過度に出力したりしない。無理をしないから、無理やり「ありがとう」と言われたがったりもしない。全てをそのまま受け止め、他の者の幸せに共感し、悲しみにも共感し、それを自分の中で2倍にも3倍にも膨らませることができるのだ。よって、人間界にはないような、きめ細かな感情を表現する言葉も存在していた。
後に車もつくられるが、最初から洗練された車が作られた。生き物や物質に対してセンサーがついている上に、地面に接着せず走るので、小さなゴムボールが急に飛び出してきても飛び越える。絶対に生物を轢かない車が完成するまで製品化しなかったくらいだ。
パソコンも後にできるが、最初からほとんど故障しないパソコンが作られた。水に浸しても落としても壊れなかった。しかもOSを更新すれば永遠に使えたし、新しいOSが発明されると、元のOSと共有できるようにした。
もしもこの暮らしを人間が見たら、「平和過ぎてつまらない」とか、「そんなことはあり得ない」とか思うのだろう。しかし、彼らには多いにこれが普通のことであると同時に幸せだった。
ソラも自分ができることを考えた。この世界には年齢で定年になったりしない。能力がある限り使えばいい、使えば使うほど磨かれるのだから。そして疲れたら休めばいい。そういう考え方の世界なのだ。
だからソラは死ぬまで自分ができることを考え実行し、また沢山休養しゆっくり過ごした。地球で子供ができなかったソラは、空の人たちの子供たちの面倒を見ることにした。
空の人たちは子供を犠牲にしてまで無理して働く必要がなかった為、子供の面倒を家族以外の誰かに見てもらうという概念はなかったのだが、ソラが子供に関わりたがったので、その考えに共感しそれを実現させるにはどうしたらいいかを皆で考えた。そして、通貨を出してソラに見てもらうことにした。この狭い惑星だけの価値観で生きるよりは、子供たちにもよい経験になるだろうと一石二鳥と思うところもあったからだ。
ソラは地球の歌を教えたり、積み木やあやとりや洋服の作り方などを子供たちに教えた。
元スポーツ選手も、同じように自分のできることを子供たちに伝承した。空の人たちは運動をする必要はなかったが、地球のスポーツは真新しいゲームとしては楽しかった。しかし相手を打ち負かしてまで争って勝つという考え方を理解できなかったので、そのゲームはただただ楽しいものになった。
神様はその惑星を愛した。手を出すことはないし声をかけることもなかったが、いつも幸せな気持ちでその惑星を観察した。
一方地球では、人間社会の末期を迎えていた。
貧富のさが益々大きくなり、情報も健康も教育もお金を持っている者しか良いモノを得られない状態になっていて、教養はないが非常に頭の良い行動力のある若者が、”誰もが人間らしい生活ができる世界”を求めデモンストレーションをすると一気にその運動が広まった。
そこで、お金持ちから支援を貰っている地球統一大統領としては、彼らを一層せざるを得なくなってしまった。お金持ちはお金を出すから彼らを一層しろと要求した。
そしてとうとう地球大統領は、我が身の保身のために世界各地の核を爆発させたのだ。
お金持ちはみな、沢山の空気と水と食料が保存されている地下シェルターへ逃げ込んだ。地上には毎日のように死の雨が降り、大地は荒れ果て、シェルターのない貧困な者は数十年かけて全て亡くなった。
木は全て焼け果て、花は咲かず、動物たちもほぼ絶滅した。
その後、お金持ちたちは、何万年も地下で過ごしたが、そこでも新たな争いがあったかなかったかは、神様の目には届かなかった。
おわり
それは人間の親が我が子を本当の意味で救えないのと同じである。
あの世に地獄はない。
よって、神が人間を罰することもなければ、救うことがないのは当たり前である。
「では神様って何の為にいるんだ?」と思うだろうか?実はそんな疑問が浮かんでくること自体が間違っている。
真実は、神様は人間の為に存在しているのではなく、人間が神様のために存在しているのだ。あらぬ方向へ進化して行く今では過去形で「いたのだ。」と言うのが正しいだろうか?
人間が神様のために生まれたのは、丁度人間が自らの子供を欲っして産むのと同じようなことである。
どんな子供も生まれたくて生まれたのではなく、親が産みたいから産んだのであって、言い換えれば子供は親の欲のために無理やり生存させられたのである。よってその最大の我儘を成した親は、子供の犠牲にならなくてはならない。親が子供の犠牲になることは至極当たり前のことなのだ。そして、最大の我儘を聞いてくれた子供を真に幸せにすることが親の役目なのだ。
では、親は犠牲になってまで何のために子供を欲するのか?
真っ新な心を持った人間ならすぐこう答えられるであろう。
「半人前が一人前の真人間になるためである」と。「そしてその喜びを、やがて親になる子供へプレゼントする為でもある」とも。
それは丁度、神がより格式高い神になるために人間を産んだのと同じことで、神もまた自然界の上を目指すことが心からの喜びなのである。
それがどうであろう?今の人間ときたら・・・・・
子供に虐待する親、子供に自分の我儘や理想を押し付ける親、子供に孤独という最大の悲しみを我慢させてまで働きに出る親、過保護に育てあげたあげく最期には放置する親。最初から全く育てる気もないのに出来たから産むだけという親。
神様は考えた。そして空想した。
もしも、空の人を地球に沢山送ったなら、人間たちのヘドロを沢山吸い取って人間の心がキレイになるのだろうかと。しかしそれには、空の人の原料である雲を大量に使ってしまうし、地上に降ろされた空の人があまりにも可愛そう過ぎる。とすぐにその考えをとりやめる。
それどころか、空の人の実直でけなげな生活ぶりを毎日見ていると、むしろ空の人をあの汚れた人間界から救ってやりたくなってきてさえいるのだ。
神はふとこんなことを思った。
「空の人だけの惑星を作ったらどんな世界になるのだろう?
もしかしたら、素晴らしい世界が出来上がるのではないだろうか?」
神様はその世界を見たいと心から思った。
早速、遣いの者を集めて会議を開き新しいプロジェクトについて話あった。
神様「ワシは新しい惑星に新しい世界を創ろうと考えている。」
遣いA「どのような世界でしょう?」
神様「今人間の住んでいる地球という惑星にモニターの空の人を送っておるが、様子を見れば見るほど人間はあらぬ方向へ進化しつづけている。これは親であるワシの責任だから、もちろん地球にいる人間の方はワシが最後まで責任をもって観察しつづけよう。しかしだ、別に新しい世界を作ろうと考えたのだ。それは、空の人だけの世界だ。」
遣いB「はぁ?空の人は神にはならない人ですぞ?それの世界を作ってどうなさるのでしょう?」
遣いC「そうですよ。おかしなことを言いますね。私は反対です。それこそ、終わりのない課題を背負ってしまうことになってしまいますぞ。」
神様「ワシに終わりなど最初からない。」
遣いC「そうは言いましても、神様、あなただっていつ引退したくなるか分からない。課題を放棄した神様がどれだけいらっしゃったことか。」
神様「それは否めない。しかし、ワシの課題は人間の成長を見届けることだったが、もうそれは望めない。これからも見届けるが、ワシがどうこうできるものでもない。このまま永遠に過ごせと言われてもワシにも酷なのじゃ。」
遣いD「分かりますとも。新しい課題を作ることは良い事です。それに、空の人たちがどのような世界を作るかは、私にも興味があります。賛成します。」
1000人の遣いとの話し合いと多数決の結果、賛成が多かったため空の人だけを集めた世界を作ることにした。
その内容はと言えばこうだ。
まずは生まれたての真っ新な空の人だけを集めて生物として生活することができるかどうか様子を見る。次にもし必要があれば地球に住んでいる空の人を呼び寄せて一緒に住まわせてみる。
何のノウハウも与えない。神様は今まで通り手をださない。
以上だ。
早速神様一同は、住み心地のよさそうな(H2Oの水と窒素空気でなくてもよい)惑星を探し出すと、雲の粘土を製造し1000体の空の人を創った。地球に送った空の人同様、一応は男女半数づつ創ったが性格の違いは個人のものだけで、男女の考え方の違いは全くなしにした。全ての能力においては、これまで通り人間の平均値をとった。
時は経ち、新しい世界を創って100年ったっても空の人たちの世界は、平和で楽しそうにつつましく暮らしていた。土をかまくらのような形にして家を建て、ドアや窓枠には寿命直前の年取った木を乾燥させて使った。
花を飾りたいときは庭や家の中に種を植えた。
言語はずっとひとつの言語を使われた。空の人は最初から超能力を持っていない。人間のように最初一体だったわけではないので、心は通じ合わない。だからこそ言葉はとても重要なものとなった。話すときは誤解のないように説明するし、無駄なことは言わない。もちろん、嘘や”からかい”も全くなかった。
心が真っ新な為か、誰も変なプライドを持っていないため、本当のことを指摘しても怒るものはいない。それどころか、言葉で本当のこと以外なにを言うのか?というのが彼らの気質だった。
ひとりひとりが自分の性格に合ったことを仕事にし、ものの価値は通貨で測った。
仕事の大変さは、かかる時間と、体力と、必要とされる知識数、そして就業できる人数とその時代の社会に必要とされる指数で測った。よって社長より技術者の方が沢山給料をもらっているということも稀ではなかった。
通貨はモノの価値を測るためのものであり、足るを知る空の人は誰も独り占めしようとは考えなかった。それより、誰もが困らない社会を彼らは目指した。誰かが困ってしまう社会は社会ではないという考えを彼らは自然と持っていた。
しかし、動物たちの”(地球の言葉で言う)弱肉強食・食物連鎖”は自然の道理であるのでそれはそれで自然であったし、自分たちの価値観を動物に押し付けるなんておこがましいことをする者は居なかった。
ソラが来たのは世界ができて30年後のことだ。
地球にいたソラは色々な経験をしてひどく傷ついていた。ある日、人間界に疲れ果て自死しようとしたため、神様が呼び寄せた。
かつて地球でスターだったあのスポーツ選手も、体が不自由になったら誰も見向きもしなくなったばかりかバッシングを受けるようになり、心が荒んでいたため呼び寄せた。
二人の空の人は、地球との落差に戸惑いながらも穏やかな老後を過ごした。老人になって初めてきた惑星なのに懐かしささえ覚えたし、生物として共感できることが沢山あった。二人とも元々真っ新な人なので、言葉を覚えるのも早かった。
家を買う時にはお金はいらない。空の人の中でもリーダーにあたる人が大工を呼び寄せてみんなで暇な時に作る。
家が完成したとき、ソラも元スポーツ選手も、覚えたての言語で心から感謝を伝えた。それだけで、空の人たちは喜び、その喜びの心で音楽を奏で、誰かがおいしいものをおすそ分けしてくれ、自然と新築祝いのパーティーになった。
空の人たちは正直が故に誰も無理をしない。自分の能力を過度に出力したりしない。無理をしないから、無理やり「ありがとう」と言われたがったりもしない。全てをそのまま受け止め、他の者の幸せに共感し、悲しみにも共感し、それを自分の中で2倍にも3倍にも膨らませることができるのだ。よって、人間界にはないような、きめ細かな感情を表現する言葉も存在していた。
後に車もつくられるが、最初から洗練された車が作られた。生き物や物質に対してセンサーがついている上に、地面に接着せず走るので、小さなゴムボールが急に飛び出してきても飛び越える。絶対に生物を轢かない車が完成するまで製品化しなかったくらいだ。
パソコンも後にできるが、最初からほとんど故障しないパソコンが作られた。水に浸しても落としても壊れなかった。しかもOSを更新すれば永遠に使えたし、新しいOSが発明されると、元のOSと共有できるようにした。
もしもこの暮らしを人間が見たら、「平和過ぎてつまらない」とか、「そんなことはあり得ない」とか思うのだろう。しかし、彼らには多いにこれが普通のことであると同時に幸せだった。
ソラも自分ができることを考えた。この世界には年齢で定年になったりしない。能力がある限り使えばいい、使えば使うほど磨かれるのだから。そして疲れたら休めばいい。そういう考え方の世界なのだ。
だからソラは死ぬまで自分ができることを考え実行し、また沢山休養しゆっくり過ごした。地球で子供ができなかったソラは、空の人たちの子供たちの面倒を見ることにした。
空の人たちは子供を犠牲にしてまで無理して働く必要がなかった為、子供の面倒を家族以外の誰かに見てもらうという概念はなかったのだが、ソラが子供に関わりたがったので、その考えに共感しそれを実現させるにはどうしたらいいかを皆で考えた。そして、通貨を出してソラに見てもらうことにした。この狭い惑星だけの価値観で生きるよりは、子供たちにもよい経験になるだろうと一石二鳥と思うところもあったからだ。
ソラは地球の歌を教えたり、積み木やあやとりや洋服の作り方などを子供たちに教えた。
元スポーツ選手も、同じように自分のできることを子供たちに伝承した。空の人たちは運動をする必要はなかったが、地球のスポーツは真新しいゲームとしては楽しかった。しかし相手を打ち負かしてまで争って勝つという考え方を理解できなかったので、そのゲームはただただ楽しいものになった。
神様はその惑星を愛した。手を出すことはないし声をかけることもなかったが、いつも幸せな気持ちでその惑星を観察した。
一方地球では、人間社会の末期を迎えていた。
貧富のさが益々大きくなり、情報も健康も教育もお金を持っている者しか良いモノを得られない状態になっていて、教養はないが非常に頭の良い行動力のある若者が、”誰もが人間らしい生活ができる世界”を求めデモンストレーションをすると一気にその運動が広まった。
そこで、お金持ちから支援を貰っている地球統一大統領としては、彼らを一層せざるを得なくなってしまった。お金持ちはお金を出すから彼らを一層しろと要求した。
そしてとうとう地球大統領は、我が身の保身のために世界各地の核を爆発させたのだ。
お金持ちはみな、沢山の空気と水と食料が保存されている地下シェルターへ逃げ込んだ。地上には毎日のように死の雨が降り、大地は荒れ果て、シェルターのない貧困な者は数十年かけて全て亡くなった。
木は全て焼け果て、花は咲かず、動物たちもほぼ絶滅した。
その後、お金持ちたちは、何万年も地下で過ごしたが、そこでも新たな争いがあったかなかったかは、神様の目には届かなかった。
おわり