今日は祖母のご機嫌伺い。
市内に一人で暮らしている。
すぐ近くにいる叔母が入院してしまったので、お守役仰せつかった。
日常生活は自立できている。
掃除などはヘルパーにお願いしているので、
時折重たい物などの買出しと、諸手続きの同伴をするくらいのカバーで済む。
何よりも喜ぶのが、座って話を聞くこと。
話は始まるとエンドレス。決して尽きない。
依然聞いた話が新しい衣を纏って現れる。
昔の美しい話はより美しく。
つらい話はよりつらく。
そうして、祖母の人生は織り上げられていく。
「トントン、からから~」
ひとりきりの時を使って、次に誰かが訪れるまで
「トントン、からから。トントン、からから~」
美しい話はより美しく
つらい話はよりつらく
悲しい話はより悲しく
「トントン、からから。トントン、からから~」
また、来るから。
なんかあったらすぐ電話するんだよ。
「はいはい。風邪引かんようにな。気をつけてな。
車乗ってるのか?事故しなや。お前はのどが弱いから…。
早よ帰らなぁ。子供が帰って来んで。
おかあちゃんとこにもたまには行くのか。
忘れ物ないか。前にもらったお茶おいしかったわぁ。
義母さんは元気にしてはる?
気をつけたげんねんで、もうお年やさかい。
あ~あ~、いつまでも玄関先でしゃべってんと、
早よ帰らなぁ。子供、帰って来んで。
電話持ったか。スキーは遭難するからやめときや。
天気悪そうやなぁ。傘持ってるか。
早よ帰らなぁ…」
…また、来るわ。