駅の南北を繋ぐ地下道。
路面はタイル、壁面は化粧板に覆われた小ぎれいな姿で、道行く人々もきっとそれが当たり前と思っているだろう。
子供の頃、左側の壁際にはいつも白装束の傷痍軍人が二人座って、一人はアコーディオンを弾き、一人はハーモニカを吹いていた。
いつの間にか、傷痍軍人はいなくなり、その前を通る私の手を引いていた祖母も他界し、駅向こうのデパートからは大食堂や屋上遊園地が消え、駅のこちら側のスロープには手すりが取り付けられていた。
時は倦まずに流れ、人の記憶はいよいよ刹那的・属人的になる。
現在の前に、現在に繋がるどのような時代があり、それがどのような光景であったか、それを記憶しているのはもう、人よりも街でしかないのかもしれない。
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@Fujisawa, Japan
Ricoh GR Lens f=5.9mm 1:2.4, Ricoh GR Digital II (2007)