音数をあまり出さずに多くを伝える第一人者デイヴィスは、空間について自分が考えていることを尊重してくれるピアニストを捜していた。ガーランドはいわゆる「普通のやり方」で、一定間隔をあけてコードを弾かなかったり、時には思い切り手を止める方法で空間を創り出した。対極にエヴァンスは、希薄というよりは、むしろ無限に広がる足場を固めるように、その曲ごとの構造に欠かせない静寂さを注意深く見極めながら、それを明確に演奏した。柔軟性を損なうことなく、そのようにクールな明快さを表現できる部分がデイヴィスには魅力的に映り、エヴァンスに影響されて、自分の音色にも新鮮な傾斜的ハーモニーを取り入れた。またデイヴィス自身、より静かに演奏するピアニストを迎える準備ができていたのかもしれない。…・
(「第5章 マイルスからの誘い」より)
「ビル・エヴァンス――ジャズ・ピアニストの肖像」
ピーター・ペッティンガー著 相川京子訳 水声社 1999年
富翁
(「第5章 マイルスからの誘い」より)
「ビル・エヴァンス――ジャズ・ピアニストの肖像」
ピーター・ペッティンガー著 相川京子訳 水声社 1999年
富翁