Wi-Fiが遅いと感じたらチェックすべき9項目、ルーターは金属製ラックに置かない25.01.29五十嵐 俊輔氏 岡野 幸治氏 田代 祥吾氏 服部 雅幸氏 原 如宏氏記事抜粋<
Wi-Fiが遅いとき、その原因を究明するのは意外と難しい。インターネット回線や通信機器、Wi-Fiルーターの置き場所など、さまざまな要因が考えられるからだ。図1に原因究明のためのチェックシートを用意した。項目を1つひとつ確認して原因を探り、解決方法を試してみよう。
図1 Wi-Fiが遅いと感じるとき、原因を特定するのは意外と難しい。このチェックシートを参考にして原因を探り、解決策へと進もう
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まずは通信インフラ 次に設置場所をチェック
恒常的に遅いと感じているなら、ネット回線や通信機器といった土台の部分を点検しよう。まずは回線からだ。
光回線は高速通信が売り物だが、10年以上前に契約したままならスペックを再確認(図2)。特にマンションは注意が必要だ。最大通信速度100Mbpsの光回線でも、建物内がメタル回線のVDSL方式だと実効速度が遅くなる。もっと高速な回線が利用可能になっていないか調べてみよう。
図2 光回線に契約したのが10年以上前なら、回線自体が遅い可能性がある。まずは契約内容を確認し、もっと高速なサービスが利用できないか調べてみよう
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Wi-Fiルーターも10年以上前に購入した製品や、それ以降の製品でも低価格モデルの場合、規格が低速なWi-Fi 4かもしれない(図3)。
図3 10年以上前に購入したり、価格が安かったりしたWi-Fiルーターは、規格がWi-Fi 4かもしれない。それでは高速な光回線を使っていても宝の持ち腐れだ[画像のクリックで拡大表示]
ノートパソコンが内蔵するWi-Fi子機にも注目しよう。大手メーカーのパソコンは10年ほど前にほぼWi-Fi 5に切り替わっている。しかし、ローエンドモデルでは最大通信速度が433Mbpsの機種もあり、高速な光回線の恩恵を十分に受けられない(図4)。子機の性能不足が遅い原因だった場合、最新のUSB子機を導入すれば問題は解決する(図5)。
図4 Wi-Fi子機がボトルネックになることもある。大手メーカーのノートパソコンを調べてみると10年前の機種でもWi-Fi 5だったが、低価格モデルでは最大通信速度が433Mbpsだった
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USB子機でボトルネックを解消
図5 ノートパソコンのWi-Fi子機の性能が低いときは、高性能なUSB子機を追加して解決。Wi-Fi 6E対応の製品も5000円弱で購入できる
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スマホはおおむね4、5年前にWi-Fi 5に対応している。現在もサポート期間内のスマホなら、まずまずのスピードが出ると思ってよい(図6)。
図6 スマホのWi-Fi子機が足を引っ張ることは少ない。iPhoneの場合、サポートが続いているモデルはWi-Fi 5以上。Androidのミドルレンジ機種でも4年前にはWi-Fi 5に対応している
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次は、Wi-Fiルーターと子機の設置環境の問題だ。両者の距離が近いのに速度が出ないときは、障害物が原因かもしれない。一般的な家庭では鉄筋コンクリートの壁、金属ラック、水槽などが電波の通りを悪くする要因になる(図7)。
図7 Wi-Fiルーターの設置環境は、実効速度を決める重要な要素だ。子機との間に鉄筋コンクリートの壁があると電波が通りにくく、水槽があると電波が吸収される。また、Wi-Fiルーターを金属ラックの中に置くと、電波の反射によって性能を発揮できない[画像のクリックで拡大表示]
障害を排除できないときは、有線LANの利用も検討しよう。フラットタイプのLANケーブルなら、ドアの隙間に通せることも多い。LANケーブルは必ずCAT(カテゴリー)5e以上のものを使う(図8)。
Wi-Fiを諦めて有線LANという選択も
図8 ノートパソコンを持ち歩かないなら、有線LANでつなぐという選択肢もある。その際はLANケーブルやハブの規格(カテゴリー)に注意。CAT5e以上の製品を選ぼう
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Wi-Fiルーターから離れると遅くなるなら、電波状況を確認しよう。スマホアプリの「Wi-Fiミレル」を使うと、どの部屋でどの程度遅くなるかがヒートマップでわかる(図9)。
図9 無料のスマホアプリ「Wi-Fiミレル」を使うと、インターネットとWi-Fiの速度を計測したり、間取り図を用意して部屋ごとのWi-Fiの速度をヒートマップで示したりできる
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遠くの部屋でも快適に使いたいなら、中継機の導入を検討しよう(図10)。これを機にWi-Fiルーターを買い替え、以前のルーターを中継機として活用する手もある(図11)。
中継機を導入して電波が届く範囲を広げる
図10 遠くの部屋でWi-Fiが遅くなるなら、中継機を追加する手もある。この製品は本体に電源プラグが搭載されているので設置が簡単だ
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手持ちのWi-Fiルーターを中継機に
図11 Wi-Fiルーターには中継機の機能を持つものがある。使っていないWi-Fiルーターがあれば、中継機として再利用しよう。背面のスイッチや設定画面から動作モードを切り替える(図は設定方法の一例)[画像のクリックで拡大表示]
特に2階で遅くなる場合、外部アンテナを備えたWi-Fiルーターなら調整が可能だ。アンテナを横に倒すと電波が上下に飛びやすくなる(図12)。
図12 外部アンテナを備えたWi-Fiルーターは、アンテナの向きで電波が飛ぶ方向を調整できる。2階でも使うときはアンテナを横向きにしよう
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電子レンジの使用中だけ 極端に遅くなることも
続いて、通信環境を精査していこう。最初に確認したいのが周波数帯だ。Wi-Fiで使える周波数帯には2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯の3つがある。このうち2.4GHz帯はBluetooth機器やワイヤレスマウス、コードレス電話などWi-Fi以外の機器も利用するため、干渉による速度低下が発生しやすい(図13)。特に注意すべきは電子レンジ。食事時に「遅い」「切れる」が多発するときは、電子レンジが原因というケースも多い。
図13 Wi-Fiは利用する周波数帯によって特性や混雑具合に違いがある。2.4GHz帯は障害物に強いが、Wi-Fi以外の家電なども利用するので干渉が起こりやすい。5GHz帯と6GHz帯は障害物には弱いものの、利用する機器が少なく独立して利用できるチャンネルも多い[画像のクリックで拡大表示]
近所にあるほかのルーターにも注意。それらも含めた混雑状況は「WiFi Analyzer」というアプリで周波数帯別に確認できる(図14)。2.4GHz帯が混み合っているなら、5GHz帯や6GHz帯を利用しよう。なお、Wi-Fiルーターが「バンドステアリング」機能に対応しているなら、手動で接続し直す必要はない。ルーター自身が自動的に最適な周波数帯を使ってくれる(図15、図16)。
図14 「WiFi Analyzer」を使うと、周波数帯別に電波の利用状況を表示できる(1)~(3)。2.4GHz帯は電波が届く近所のルーターで混雑して、チャンネルが重なっていることも多い
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図15 Wi-Fiルーターには「バンドステアリング」という機能を備えた製品がある。いずれかの周波数帯でWi-Fiルーターに接続すると、混雑の状況に応じて最適な周波数帯に自動で接続し直す[注1]
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[注1]TP-LinkやASUSの製品では「スマートコネクト」と呼ぶ。Wi-Fi 6またはWi-Fi 5対応でこの機能を搭載する機種は、2.4GHz帯と5GHz帯の自動切り替えに対応する
図16 バンドステアリングを有効にするには、Wi-Fiルーターの管理画面で機能をオンにする必要がある
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家族がそろう時間帯になると遅くなるなら、接続台数の問題かもしれない。特に古いルーターは、それほど多くの通信機器の利用を想定していない。利用できる周波数帯が2つだけで、しかも複数の子機を同時利用する際の方式が古いからだ(図17)。接続台数が遅い原因だった場合は、Wi-Fiルーターの買い替えを検討したい。
図17 Wi-Fi4のルーターを使っている場合、接続台数が多くなると速度が遅くなることがある。利用できる周波数帯が少なく、複数の子機を同時利用する際の方式が古いことが原因だ
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[注2]Wi-Fi 6ルーターで2.4GHzと2つの5GHz帯を利用する場合も「トライバンド」と呼ばれることがある
いつも決まって遅くなる時間帯があるなら、インターネット回線の混雑が原因かもしれない。IPv4通信に使うPPPoE方式は混雑しやすい。「IPv4 over IPv6」というプロバイダーのオプションを利用すると、高速なIPoE方式でIPv4通信ができる(図18)。プロバイダーによっては申し込みが必要だ(図19)。
図18 遅くなる時間帯があるときはネット回線の混雑が原因かもしれない。「IPv4 over IPv6」を使うと、混雑しやすいPPPoE方式ではなくIPoE方式でIPv4のインターネットに接続できる
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図19 「IPv4 over IPv6」はほとんどのプロバイダーで無料だ。ただし、プロバイダーによっては申し込みが必要となる[注3]Wi-Fiルーター側も対応している必要がある。古いルーターではファームウエアの更新が必要なこともある
ダウンロードマニアのせいで動画の画質が落ちることも
ネット回線やWi-Fiが遅いと、YouTube動画の画質が落ちたり、ファイルのダウンロードに異常に時間がかかったりする。そもそも通信速度はどのくらい必要なのか、図20に目安を示した。
図20 高速な接続が必要なのは、高画質動画を再生するときだ。複数の機器で同時に再生するならトータルで少なくとも60M~80Mbpsの通信速度が必要となる。巨大なファイルの送受信にも注意
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特に速度が求められるのは動画再生だが、1台だけなら20Mbps強で事足りる。しかし、家族みんながそれぞれとなると、トータルではそれなりの通信速度が必要になる。また、何百MBもの巨大ファイルを送受信する家人がいる家庭でも速度が必要だ。
パソコンで発生している通信状況は「タスクマネージャー」で確認できる(図21)。アプリごとの通信状況は「リソースモニター」で調べられる(図22)。
タスクマネージャーでパソコン全体の通信状況を確認
図21 パソコン全体のWi-Fi通信状況を知りたいときは「タスクマネージャー」で「パフォーマンス」→「Wi-Fi」と選択しよう(1)~(3)。送信と受信の通信状況を確認できる(4)。アプリごとの通信状況を知りたいときは「…」から「リソースモニター」を選択する(5)[画像のクリックで拡大表示]
リソースモニターでアプリごとの通信状況をチェック
図22 リソースモニターで「ネットワーク」タブを開くと、アプリごとの通信状況(1秒当たりの通信量)がわかる(1)(2)。意図していない通信が実行されていないかもチェックできる
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