近視は「万病のもと」
発症率が845倍のケースも

 では具体的なデータをお伝えしていきますね。

 近視のレベルは3段階に大別されています。メガネの処方箋やコンタクトレンズのパッケージなどに明示されているので、ご自身のレベルを確認してみてください。

・軽度の近視……「-3」まで
・中等度の近視……「-3」から「-6」まで
・強度の近視(強度近視)……「-6」よりもマイナスの値

■白内障について

 白内障は目の「水晶体」が濁ることで発症します。

 水晶体はタンパク質でできています。透明な卵白が熱で白く固まるのと同じで、一度濁ると元の状態には戻りません。

 白内障は「年をとれば誰でもなる病気」というイメージが強いかもしれません。

 しかし、近視がない人を1とした場合、軽度の近視がある人は1.56倍、中等度の近視がある人は2.55倍、強度の近視がある人は4.55倍、白内障になりやすいことがわかっています。

■緑内障について

 緑内障は、日本人の中途失明原因の第1位です。若い人にはなじみがないかもしれませんが、視力が末期まで落ちないまま、視野(視える範囲)が徐々に欠けてくる厄介な病気です。つまり発症に気づきにくいということです。

 点眼薬で悪化を食い止めることはある程度可能ですが、放置して悪化した場合は元に戻せず、失明へと向かいます。近視がない人を1とした場合、軽度の近視があると3.2倍、中等度の近視で4.2倍、強度の近視がある人は7.3倍、緑内障になりやすいことが明らかになっています。

■網膜剥離について

 網膜剥離とは、目の奥の「網膜」という膜がはがれる病気です。これも放置すると失明へと至ります。近視がない人を1とした場合、軽度の近視があると3.15倍、中等度の近視で8.74倍、強度の近視がある人は12.62倍、網膜剥離になりやすいとされています。

 さらに「近視性黄斑症」という病気もあります。

 眼球の壁が引き伸ばされた状態で、黄斑の網膜にスキマができたりはがれたりして、視力が低下する病気です。近視がない人に比べて強度の近視がある人は845倍もなりやすいといわれています。

 つまり、近視の度合いに応じて、病気の発症率が明らかに上がっていくことが検証されています。近視とは「万病のもと」なのです。

基本は眼科で定期検査
目の病気は早期発見が大切

 いったいなぜ、近視になると、さまざまな目の病気を招きやすくなるのでしょうか。

 それは、眼球が大きくなるため、あらゆる組織に負担がかかるからです。

 近視になると目の直径(眼軸)が伸びます。

 通常、眼軸は生まれたときは約16mmで、成長とともに24mmほどになります。

 これよりも眼軸が短いと遠視、眼軸が長いと近視です。要は、近視があると眼球が大きくなります。眼球が大きくなるとは、目が本来あるべき長さより引き伸ばされてしまうわけです。結果、あらゆる組織に負担がかかり、白内障・緑内障・網膜剥離などの病気にかかりやすくなるわけです。

 ですから近視がある人は、それ以上進ませないことが肝心です。

 なぜなら、大人になっても近視が進むことがあるからです。特に、手元を視る生活が長かったり、屋外で過ごす時間が少ないという人に、その傾向が視られます。

 よく聞くのが「これまで営業職だった人が内勤になり、パソコンを使う機会が増えて近視が進んだ」という例です。

 目によくない生活習慣が近視を悪化させる要因なので、手元でものを視る時間を少なくしたり、仕事中にこまめに休憩を取り入れて遠くを視るなどの工夫が有効です。

 目の病気の早期発見を心がけることも大切です。基本は眼科で定期検査を受けること。難しい場合は「眼底カメラ」を健康診断の際に受けるようおすすめします。これは緑内障を初期から発見できる検査です。

 10分ほどで体への負担はありません。

 そしてお子さんの場合、日常生活で日光を浴びて外で遊ぶ時間を増やすことです。外遊びには「遠くを自然に視る」というメリットもありますし、昨今は「日光を浴びることが近視の抑制になるのではないか」ともいわれます。また外で遊ぶ分、部屋の中で本を読んだり、ゲームをしたり、タブレットを眺めたりする時間を減らせます。