ヤバすぎる「某100円回転寿司」の裏側大手回転寿司チェーン2店を食べ比べてみた【後編】河岸 宏和様記事抜粋2014/07/24 6:00
前回に引き続き、ここは首都圏にある某大手回転寿司チェーン店です。新刊『「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。』がおかげさまでベストセラーになっていることもあり、続編執筆のための“市場調査”で、編集者のN君(34歳)と一緒に足を運びました。
前回は「回転寿司のよしあし」を見抜くスキルとして、「イカ」と「鉄火巻き」に注目するという話をしました。「表面に切れ目のないイカ=冷凍品」「鉄火巻きのマグロを指で潰す=潰れたらニセモノマグロ」で、その2つを見れば誰でも店の実力が簡単にわかるという話をしました。
前回のA店は、店内調理にこだわり、ネタを店内で切り、酢飯を厨房で炊いていました。だから、100円寿司のわりには十分おいしかった。
一方、同じ100円寿司でも、今回のB店はどうか? A店と何が、どう違うのか? 今回は、大手回転寿司チェーンB店の「ヤバすぎる裏側」を公開します。
大手回転寿司チェーンのB店の「イカ」には切れ目がなかった!
N君:まずは「イカ」と「鉄火巻き」から食べましょう。
河岸:ほら、この「イカ」を見てごらん。言ったとおりでしょう。
N君:ホントだ! イカの表面にまったく切れ目がない! 前回解説したように、これは冷凍品ですね。
河岸:そうだね、100%間違いない。もちろんおいしさも抜けている。イカからして、同じ100円寿司でもA店とは全然違うね。
N君:続いて、「鉄火巻き」はどうですか? このマグロは、赤身に植物性油を混ぜ込んだ「ニセモノマグロ」ですか?
河岸:これは本物のマグロ。指で押さえてみても、潰れないでしょう。
N君:確かに、指で潰れませんね。これは合格じゃないですか?
河岸:いや、見方によっては「ニセモノマグロ」よりも、もっとひどい。
N君:どういうことですか? 本物だけど「ニセモノマグロ」よりもひどい理由は?
河岸:中を解体して見てごらん。マグロに黒い筋が入っているでしょう。これは筋の部分で、食べるところじゃない。本来は捨てるところ、ゴミの部分だよ。それを平気で使い回している。
N君:なぜそんな部分を使うんですか?
河岸:そういうことを知らない素人のアルバイトがやっているんでしょう。もしかしたら「マグロは厨房で切って、そこで出たクズの部分は鉄火巻きに使え」と指導している確信犯の可能性もあるけど……。
N君:ひどいもんですね……。でも、裏を返せば、「マグロは店内で切っている」ということですね。マグロの握りも食べてみましょう!
河岸:(食べてみて)どう思った?
N君:これは僕でもわかりますよ……。すごく水っぽくて食感も悪い……。変なマグロを使っているんですか?
河岸:いや、これはマグロの問題じゃなくて「切り方」の問題。マグロは「繊維に逆らって」切るのが正しい切り方なんだけど、このマグロは間違って「繊維に沿って」切ってしまっている。
N君:同じマグロでも「切り方」でそんなに味が変わるんですか?
河岸:全然違う。「繊維に沿って」切ってしまうと、ドリップが出やすくなって、おいしさが抜けて水っぽくなってしまう。だから、このマグロはスカスカで全然おいしくないの。
N君:なぜそんな切り方をするんですか?
河岸:アルバイトが知らずにやっている可能性もあるし、マグロのサク(刺身のカタマリ)から切っていって、残りの小さな部分が切りにくいから、逆から切ったのかもしれない。いずれにせよ、誰も「品質管理」をしていない証拠。回転寿司はどこもアルバイトが多いけど、これはちょっとひどいね。
N君:「100%冷凍品のイカ」「ニセモノじゃないけど“ゴミ”から作った鉄火巻き」「切り方を間違えた水っぽいマグロ」って、この店、ボロボロですね……。気を取り直して、包丁で切ったりしない、ウニとイクラをとってみましょう!
ウニは○○臭い。もはや「食べ物から遠ざかった物体」
N君:ウニやイクラは好きな人が多いですよね。それも同じ100円で食べられるんですから、やっぱり回転寿司っていいですよね。
河岸:どう、このウニ、おいしいと思う?
N君:うーん、「ウニを食べた」という満足感はありますが、正直、別においしいわけではないですよね……。なんか変な味がします。これは「ミョウバン」のせいですか?
河岸:いや、ミョウバンのせいじゃなくて、単に古くなって腐りかけているだけ。
N君:腐りかけですか!
河岸:もちろん、もともといいウニじゃないけど、本来は廃棄してもおかしくないレベルのものを使っている。このウニはひどすぎるよ。食べ物から遠ざかった物体。○○臭い。
N君:なっ! そんな、とても書けないNGワードを出さないでくださいよ、食事中なんですから。
河岸:一方、このイクラは「100円ではこんなものかな」という感じだね。
N君:イクラといえば、「外食には、添加物だけで作った『ニセモノイクラ』がはびこっている」という話もあるじゃないですか。このイクラは本物ですか?
河岸:もちろん本物のイクラ。「イクラ」と称して、「ニセモノイクラ」を使っていたら、それは完全に法律違反。だから、「イクラ」と称して売っているものは、回転寿司に限らず、「ニセモノイクラ」をごまかして使っているなんて、ありえないよ。
N君:なるほど。でも、逆にいうと、「イクラ」と称して売らなければ、別に「ニセモノイクラ」を使っても問題ないということですね。
河岸:ただ、このイクラは本物だけど、作り方がダメだね。このイクラの軍艦巻きはキュウリが半分載っているけど、キュウリの載せ方が悪い。
N君:キュウリの載せ方ですか?
河岸:キュウリを斜めに切ると、緑の皮の部分が見えるでしょう。そちらの部分を上にして載せないと。
N君:確かに、緑がちょっと見えるのと見えないのでは“見た目”が全然違いますね。
河岸:それから本来は最初にキュウリを載せてから、その上にイクラを載せるのに、キュウリを後から載せてしまっている。だから、ただでさえ少ないイクラが隠れてしまっている。
N君:まあ100円なんだから、そこまで言わなくても……(笑)。
河岸:ほんのちょっとした手間の違いだよ。そこに「お客さんにおいしいものを食べてもらいたい」という気持ちの有無が出ている。A店は同じ100円だけど、もっとちゃんとしていたから。
N君:なるほど、値段のせいにはできないわけですね……。玉子やシメサバなどの、ほかのネタはどうですか?
甘すぎる冷凍玉子、ネタを載せただけのシメサバ
N君:僕がいま食べたこの玉子は、玉子部分だけを食べたら、なんだか「クッキー」みたいな味がしますね(笑)。なぜこんなに甘いんですか?
河岸:冷凍変性を防ぐために砂糖をたっぷり使っているから。完全に冷凍の仕入品だね。
N君:それにしても、甘すぎまずね……。こちらの、いまイチオシのだし巻き玉子はどうですか? これはさっきの玉子よりもおいしいですが。
河岸:これはこの店の厨房で作っている。家庭料理の味と同じで普通においしい。
N君:だったら、ふつうの玉子も焼けばいいのに……。シメサバは? なんかシメサバがシャリの上に、宙に浮くように、ドンと反り返って載っていますが(笑)。
河岸:このシメサバは締めすぎで、酢の味しかしない。ネタが反り返っているのは、ネタを載せただけで握っていない証拠だね。
N君:でも、こういう店はたいてい前回紹介した「寿司ロボット」がシャリを握るんですよね。その上にバイトがネタを載せているのは同じでは?
河岸:そうなんだけど、ネタを載せたあと一握りしないといけないのに、それをやっていない。さっきのA店はちゃんと一握りしていたよ。
N君:たんにネタを載せるか、そのあと一握りするか、そこの違いのわけですね。「寿司=握るもの」とばかり思っていましたが、「ダメな寿司=米にネタを載せるだけ」になっているわけですね。
河岸:寿司はご飯とネタが一体化して、それを食べるからおいしいわけだから。これは「おにぎりの上にネタを載せた」のと同じ。
N君:「おにぎり」ってまたひどい言いようですね(笑)。このシャリはどうですか? 前回の話だと「寿司はご飯が決め手」「温かいシャリと新鮮なネタが本当の寿司」で、A店のシャリは厨房で炊いているからおいしい」という評価でしたが。
河岸:ネタをはずしてご飯だけ味わってみてごらん。妙に甘いでしょう。
N君:確かに! かなり甘いです。
河岸:これも砂糖を入れすぎだね。ご飯の劣化を防ぐために大量に入れている。
N君:それを聞いて味わって食べると、この寿司シャリはなんだか「おにぎり」に近い気がしてきました……。
セルフサービスの「瓶ビール」は論外。食のいちばんの土台「安全性」を軽視している
N君:ちょっと口直しに、ビールでも飲みましょうよ。仕事中なので我慢していましたが、もう限界です(笑)。この店は「セルフサービス」で、自分で飲み物を冷蔵庫から取ってくるシステムなんですね。
河岸:外食店でこういうのはダメだよ。店として論外。これは怒っていいと思う。
N君:えっ、なぜですか?
河岸:だって、グラスも一緒にセルフサービスで置いてあって、客が自由に取ってこれるでしょう。店は人件費の削減のためにやっているのだろうけど、悪意があれば誰でも簡単に、ほかの人が飲むグラスにイタズラできる。
N君:じゃあ、ファミレスのドリンクバーもダメってことですか?
河岸:ドリンクバーも本来はダメ。ただ、ファミレスのドリンクバーは 店員の目の届くところに設置してあるでしょ。でもこの店では、店員の目の届かないところに、ビールグラスなんかが管理されている。だから危ない。
N君:言われてみれば、そのとおりですね……。
河岸:この店は「安い」とか「おいしい」以前に、最低限の「安全性」の部分をきちんとやっていない。食べ物というのは「安全性」がいちばん下の土台にあって、その上に「おいしい」とか、体にいいといった「機能」が来るものだから。
N君:「おいしい」も「機能」も、すべて「安全性」という土台があってこそ、というわけですね。その点でいえば、そもそも回転寿司は「非常にお客さんを信用しているシステム」と言えますね。ビールグラスに限らなくても、目の前の皿にイタズラしようと思えば、簡単にできてしまうわけなので。
河岸:そうだね。その辺は回転寿司全体が抱えている問題だと思う。ただ、それは別にしても、やっぱり「食中毒」は飲食店が絶対に起こしてはいけないもので、この店はそれができていない。冒頭の話に戻るけど、汚れた厨房といい、ご飯粒が干からびている寿司レーンといい、手袋のままネタとレーンを交互に触っている従業員といい。安全教育がまったくなっていないよ。
N君:でも、100円均一なんだから、少しは大目に見てくださいよ(笑)。
河岸:「安さ」を追求するのはいいけど、何かを犠牲にして「安さ」を出すのは違うと思う。ましてそれが、飲食店では最も譲れない「安全性」を犠牲にしているのでは話にならない。
N君:まあそれはわかりますけど、でも、この店は安くて人気があって、これだけ混んでいますよ?
河岸:そこだよね。安いのは間違いない。だから、「シャリが仕入れ品」とか「イカが冷凍品」とか「鉄火巻きが本来廃棄すべき筋を使っている」とか、そういうのは全部、見逃すとしても、食中毒を起こしかねない「食の安全の欠陥」については、食を仕事にしている人間からすると、やっぱり看過できない。
N君:確かに、回転寿司は、小さい子どもと一緒に家族連れも大勢来ますよね……。小さい子どもやお年寄りは、食中毒になると命を落としかねないわけなので……。
河岸:それに、外国人がこんなにいっぱい入って「これが日本の寿司だ」と思って食べているのも哀しいよね。本来、寿司は日本が世界に誇る伝統食なのに、これを寿司だと思われたんじゃ泣けてくるね。
次回はテレビで「話題」の人気寿司店をメッタ斬り!
というわけで、「回転寿司の裏側」はこれにて終了します。
字数の関係で、どうしても「回転寿司の裏側」を見抜く“もうひとつのスキル”を盛り込むことができませんでした。イラストだけ掲載しておきますが、「回転寿司に行ったら、醤油差しに注目する」というものです。
大手回転寿司チェーンの中にも、わざと注ぎ口の大きい醤油差しを使っている店もあります。その理由は? 「醤油差しのカラクリと裏側」を知りたい方は、ぜひ新刊をご覧ください。
次回は、あの「話題」の人気寿司店の裏側です。「これで1人6000円は許せない」と激怒した話をしたいと思います。楽しみにお待ちください。
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