オリンピックが終わって一週間。大会は今一つ盛り上がりに欠けたような気もしないではないが、それでも自分なりにはテレビ観戦でだいぶ興奮した場面があったと、今振り返ってみて思う。
開幕前から楽しみにしていた野球とソフトボール、それに柔道は、悔いのないほどよく観た。特に野球とソフトボールの日本戦はすべての試合を楽しませてもらった。日本の実力も相当なものだと感じたし、各選手の試合に対する心意気のようなものも、テレビ画面でありながらさえひしひしと伝わってきた。
目立った選手は特に感じなかった野球ではあったが、逆にそれこそ日本が得意とする全員野球だと思う。そんな中でも1、2番の山田、坂本のコンビがすばらしかったと思う。甲斐捕手の健闘も見逃せない。
ソフトボールは反面、個人の活躍を感じた部分が記憶に残った。打では藤田がよく打ってくれたと思う。投ではやはり上野だが、これはある程度予測されていたので、いわば期待通りといったところだろうか。特筆すべきは後藤の存在である。あの若さで、あのような見事なボールで相手に正面からぶつかり、三振の山を築く。これは私には予想できなかったし、彼女の経験の浅さからいったら、「ビックリ」以外の何物でもない。捕手我妻のリードや、渥美の守備もすばらしかったこともあるが、後藤のピッチングに、近い将来の日本ソフトボール界の姿が感じられた。
オリンピックが終わり、その彼女の地元である名古屋に帰り、早速名古屋市長に金メダルの報告に行ったことが先日の新聞各紙に報じられていた。と思ったのだが、実際はその記事の内容が彼女の報告そのものに重点がおかれたものではなく、彼女が持参した金メダルがその記事の主役であった。
名古屋市長の河村氏がその栄光の金メダルを己の歯で噛んだとのニュースである。市長は悪気があってやったのでは決してないし、ほんのジョークのつもりだったのだろうが、それがこの場面で通用するはずがない。ジョークにはジョークの場面とマナーがあるはずだ。 その後に謝罪したようだが、それだけではたして事は収まるだろうか。後藤本人はもちろんだが、噛まれた金メダル自身でさえ哀れだと思わずにはいられなかった。
不安に思っていたら、その噛まれた金メダルはIOCが交換するとの旨。なかなかIOCにも人の心がわかる担当者がいるものだと私は感じた。
その部分を読売新聞のUSO放送に投稿したら、偶然今朝の紙面に掲載されていた。やはり全国版に載るということはさすがにうれしい。
金メダル交換
私もだろうか
ー河村たかし
令和3年8月14日 「USO放送」 読売新聞
「つれづれ(31)大事な金メダル)