先日、海軍の兵学校の跡地に行ってみた。
往時の建物がそのまま現存され、なかなか見ごたえがあった。そして、「貴様と俺とは」の歌い出しで始まる同期の桜を無意識のうちに口ずさんでいた。なぜならこの兵学校が、この歌の発祥の地であるから。
この歌の原曲は「二輪の桜」というタイトルの詞で、昭和13年1月号に「少女倶楽部」に発表された西條八十の歌詞が元になっているようだ。それに大村能章が曲を付け、「戦友の唄」として樋口静雄が歌い、昭和14年にキングレコードから発売された。が、ヒットしなかった。
それを海軍兵学校在学中の帖佐裕が二輪の桜の歌い出しの「君と僕とは二輪の桜」を、「貴様と俺とは同期の桜」に改め、歌い出したらきりっとして、軍歌になり、海軍一般に歌い広められたらしい。
やがてみるみるうちに一般の間にも流行し、軍隊内の歌として大ヒットした。
私はこの歌を俳優の鶴田浩二と松方弘樹、お二人の歌唱をテレビでそれぞれ別々に拝見したことがある。いずれも舞台で、軍服姿だったと記憶している。いかにも凛々しく、無垢な日本の戦時中の好青年らしさが舞台中にプンプンしていたことを覚えている。
戦後生まれの私には、それは写真や映像でしかもちろん見たことはないが、おそらくその時代の青年は誰もが軍人であればそうだったのではないかと思っている。
父母を敬い、先輩や先生や恩師に一目おく。贅沢はせず、仲間を大事にし、国や故郷を深く愛す。これらは私の勝手なイメージだが、まんざら外れてはいないだろうなどと思いこんでいる。他人を蹴落としたり、妬んだりはしない青年たちだったとさえ思っている。
今日は76回目の終戦記念日。もうあんな悲惨な戦争は二度とないだろうし、断じてあってはならない。
8月15日とは、そういうことを日本人なら誰もが肝に銘じて心新たにする日だと思う。
「童謡唱歌歌謡曲など(10)同期の桜」