花といえば桜。紅葉といえば楓をさすのは詩歌の世界である。 春の楽しみが桜であるなら、紅葉は秋の楽しみの一つ。花・月・雪・時鳥に加え、古人はこの紅葉の美しさを「五個の景物」として好んで詠んでいたようだ。
秋深まり、気温が下がり、空気が乾燥すると紅葉のはじまり。昼暖かく、夜寒く、一日の寒暖の差が大きいほど葉はよく染まる。
日光・上高地・十和田湖など新緑の美しい所は紅葉もすばらしい。北の地方や高地などは早く紅葉しはじまる。それは10月の始め頃から、11月中旬・下旬にかけてほぼ本州一帯は紅葉の時期を迎える。
先々週に奥久慈へ2回ばかり出かけた。紅葉の初期だったが、かなりの人出であった。そして数日後、鹿沼の渓谷に車を飛ばしたが、赤がひときわ目にしみこんだ。朝からの雨のせいと、平日ということもあり、車の数はさほどではないのが幸いし、十分に目のほようになった。
そして数日前には福島の紅葉から帰ってきたばかりである。
そもそも、かえでというのは葉の形が蛙の手に似ているから「かえるで」と名付けられたのが転化したらしい。かつては葉が紅葉することを「もみつ」といい、染まった葉を「もみち」や「もみち葉」などといったのが「もみじ」の語源とされているようだ。
俳句では紅葉(こうよう)、紅葉(もみじ)、黄葉(もみじ)、色葉(いろは)と詠みかたもさまざまで秋の季語であるが、単に「紅葉散る」と詠めば、これは冬となる。
散る美しさよりも染まる美しさに胸打たれるのは、紅葉は桜と違い枯れる間際の葉だからなのであろうか。
「季節の花(54)紅葉」