イメージ産業という言葉がある。辞書をひいてみたら、イメージが実態よりも先行することによってこそ商品やサービスが成り立つ産業全般のこととある。
つまりイメージをよく見せてお客様に買っていただいたりするものらしい。フアッション、化粧品、広告が20世紀を代表する三大イメージ産業とか。
それなら旅行もイメージを売る商売ということになるのだろうか。 旅行各社が出す旅のパンフレットには「写真はイメージです」という但し書きをよく目にする。広い意味では市町村で作成する観光パンフレットもそれに該当するのだろうし、旅行雑誌やテレビの旅番組もそれにあてはまるのだろう。
だからそういうものは「ここは良くないですよ」という、いわば負のイメージにはめったにお目にかかれない。良い部分だけを大きく載せている。
反面マイナスイメージが載っていれば、これは本物だと私には思えるのだが▪▪▪。実際はパンフレット等に負のイメージではなく、良いとこ見せが当たり前となっている観光業界だ。それは当然といえば当然。
北海道のシーズンがいよいよ開幕する。
シーズンといっても、それは場所によりさまざまだろうが、今年も相変わらずの人気となるだろう。たくさんの観光客が訪ねることだろう。
一番南端である松前の桜の見頃は4月第4週だが、同じ北海道でも北部や東部の山間部ではその頃は雪が降る。なにせ北海道と一口にいっても、その面積はあまりにも広い。南の木古内から網走まで鉄道距離で換算するなら783キロ、それは東京から神戸、岡山を過ぎて、倉敷の少し先までに該当する。その距離が北海道という一つの地区にすっぽり納まってしまう。だから北海道の季節をひとくくりに考えるのは、ほんとうは当たっていないのかもしれない。
機会があって某社の北海道パンフレットを手にした。札幌では、時計台に行くようになっている。まあ募集旅行なら当然だとは思う。
「このコースは札幌は観光しますが、時計台には行きません」というものは見当たらない。それだけ札幌市内では人気の観光スポットなのであろう。だからバス車内からまったく見ないような旅のコースは売れないのかもしれない
初めての北海道で、札幌市内のなかでは時計台へ行きたいと思う人は圧倒的に多いが、旅行アンケートでは札幌の街は気に入ったが時計台はそうでもなかったと答える人がわりと多い。換言すれば、札幌では特に何というよりも、札幌のもつ魅力が好きという人が多いような気がする。
旅行というのは、行きたい人気の場所と、行ってみて良かったと思える場所やイメージは必ずしも一致しないということにそれはなる。
出かける前にいろいろなものから情報を入手し、自分なりのイメージを描く。行ってみてそのイメージ通りだったら良かったと思う。しかし描いていたイメージと違っていると良くなかったと言ったりする。
実は私も札幌へ初めて行った時はそうだった。今では50回くらい、いや正確にはもう少し多く札幌を訪ねてはいるが、観光したのはほんの数回。何を見るというのでもなく、ただこの街が好きだ。
だから今の季節になるたびに、北海道のイメージをあちこち思い浮かべてみる。そんな時は自分勝手に、気ままに、誰にも気兼ねなく。
「詩情豊かな北の都」というイメージの札幌をあれこれ思いめぐらすのは素敵なことだし、四季それぞれの札幌の姿はほんとうに魅力がある。
「心に残る旅(13)北海道のイメージと札幌」