天気がいいのを理由にふらっと近くまで出かけてみる。平日のためか公園には人影はパラパラ。お年寄りのご夫婦や中年のご婦人のおひとり散策。それに市役所の職員らしき男性も首からたらしたカメラを構えている。何か資料用の撮影なのであろう。ぶら下げた名札と服装から判断して、そう思わざるをえない。いくらか今の時期に咲く花に関しての言葉を交わす。若くても律儀で、はっきりした口調であったのはうれしい。
歩き疲れると、次に数百メートル離れたもう一つの公園にも車で足を伸ばす。ここは昔お城があって、お殿様が住んでいたらしい場所。石碑脇の説明文にはそんなことが書いてある。
今の瞬間だけはそんなエラい気分になって歩いてみるのも悪くない。まもなく満開になる花を眺めながら木道を歩く。
遊歩道最後の部分で思わぬ花に出くわす。白い可憐なドクダミがいっぱい花を咲かせている。大群と呼ぶにはいささかオーバーだが、思いもよらぬ出迎えに心を踊らせてしまった。白い花はまるで妖精のごとき気がする。
「あ~、こんな所にドクダミがある~」。連れのその一言が、ジメジメした梅雨に近い気候を吹き飛ばせてくれた。
ドクダミという名称は「毒を抑える」からきているみたいだ。葉を乾燥させて用いるどくだみ茶は広く知られているし、生薬としても利用され、漢方薬としては単独で用いられているらしい。
それにしても別名を地獄蕎麦(じごくそば)と呼ばれているのを知って驚く。蕎麦を食べられない者にとっては、その名前のするどさだけが心にいつまでもひびく。
「季節の花(59)ドクダミは茶や生薬や漢方薬として」