年をとっていくということは、いいものではない。
誰でもみんなそう思うことは同じかもしれない。でもこれだけは仕方ないし、みんな平等に老いるのだからまあいいだろうと、どうも納得してしまう。
が、年をとってきてからよかったなと思うことが一つだけある。
人にいくらか優しくなれたこと。
若い頃は、自分に気の合う人にはとことん仲が良くできた。でもその反対の人にはなかなかそうはいかなかった。
誰でも同じかもしれないが、若い時には苦手意識な人に対し、つい遠目になる。会話も進まず、疎遠になっていくばかり。
人生半分をとうに過ぎた今、それはもうなくなったような気がする。あるいは相手のほうがそう思って、私より格段上を行っているのかもしれないけれど。
柴田トヨさんに「貯金」という詩がある。
「やさしさを貰ったら 心に貯金をしておくの・・・」
いつでもどこでも人に優しく。
それがほんとうに自分に強い人間なんだと思うようになった。
若気の至りはすっかり消えている。
「つれづれ(9) 優しさの貯金」