長い間ハワイ在住の日系人を相手に仕事をしている友人がいる。もう何十年くらいになるのだろうか。彼とはよく飲みに行ったし、その度に人生論を交わしたり、旅行の話をしたり。今でも親友といえる仲だと思っている。
一昨年の1月だったか、まだ日本がコロナウィルスの感染が広がる前の頃。そのハワイから彼の元に、マスクが足りないので送ってほしいと依頼があり、たくさんの量を送ったとの話を直接聞いた。
いかに仕事相手とはいえ、無料で送るとは人の良い性格だなとその時は思った。送った一ヶ月後くらいに、居酒屋で聞いた時の話である。
そういえば、その何年か前に彼と飲みに行った時、私の好きな歌である「望郷ホレホレ節」を知っているかと彼に尋ねたことがある。その時の彼の返事は、よく知っているとのこと。ハワイのお客さんたちから教わったと言うのだ。
それを聞いた時、私はその歌を早速DVDにダビングして彼に贈ったことを思い出した。彼は大いに喜んだものの、その何日か後にDVDの機械は持ってないとのことを言われた。二人で大笑いしたことを覚えている。
その「望郷ホレホレ節」は「花嫁御陵でよー呼びよせられて」で始まる平成22年の名曲。といってもこれは日本国内でのCDの発売日のことだ。なにせハワイの歌だとその彼から聞いたので、私なりにその歌のことをいろいろ調べてみた。すると意外なことがわかってくる。
この歌はハワイへ移住した日本人が作った労働歌であり、さらに望郷歌であるということ。歌詞はいろいろあったらしく、今回歌われているのは、そのほんの一部らしい。
だが、それでも
海の向こうによー 胸はずませて
想いめぐらせ 夢の中
きびの畑でよー ふるさと想い
いつかこの地に 花咲かす
との、3番の歌詞がやはり、離れた故郷の日本への想いをめぐらす心境を表していると同時に、嫁いだハワイの地での新たな深い想いを歌いこんでいる。
"ホレホレ" とは、さとうきびの枯れ葉を手作業で掻き落としていくことを指しているとのこと。
作詞者作曲者ともに不明であるが、おそらく西日本の各地からハワイへ移民した人々の故郷の民謡などを歌い継ぐうちに、次第に一つの歌になったのがこの「望郷ホレホレ節」ではあるまいか。
日本人移民がハワイで歌い出した唯一の歌であり、米国広しといえど、おそらくこの歌が唯一の移民から生まれた歌といえる。
私は直接ハワイには関係ないのだけれど、何度か訪ねたよしみからか、何となくこの歌が心に強く残り、好きだ。
哀愁を帯びたメロディーは日本への望郷心をうまくとらえていると思い、自分の愛唱歌の一つに入れている。コロナが終息して、カラオケに行ったら、仲間たちの前でたぶん最初に歌いたい曲の一つである。
「童謡唱歌歌謡曲など(16)ハワイへ嫁いだ人たちの望郷歌」