石の民「君は星星の船」 第31回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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『死せるものの船』の上で争いが続く。
「石の男ムリム、そうはいかない」
「女王アルナ、ゆるせ」
光二の指輪の先から光が走った。
目の前にいた女王アルナが消えていた。
光二はアルナが最後に「石の男ムリム、あなた」と叫んだのを聞いたような気がした。
『死せるものの船』の補助機構である2人が消えたのだ。
光二が勝ったのだ。怪我の功名だ。
いままで、黙ってみていた石の民がどよめく。
「アルナが消えた」
が光二は泣き叫んでいる。
「ああ、ミニヨン、ミニヨンが消えちまった」
「アルクのおっさんよ、俺はミニヨンを消しちまった」
光二は叫び続ける。
光二はアルクの所へいき、祭司アルクの体をいだく。
「アルクのおっさん、ひどいことになっちまった。
光二は涙がとまらない。が、光二のからだもどんどん消えて行く。
「アルク、どうすれば」
光二はたずねる。が、アルクのからだは、もう半分になっている。しゃべれない。
『光二、はやく石の棺を開けろ』
アインの声だ。
『石の棺が問題なのだ』
「そ、そうだ、どこだ」
目指す棺は、石舞台のうえに飾られている。石の民が光二をとどめようとする。
光二は、聖砲をむけて相手を牽制する。
そこ石棺へ、すりよっていった。もう光二も立ちあがれなくなっていた。
くそう、力まかせに、石の棺を開く。急に光があふれた。中には男が眠っている。
「おい、おい、男だぜ」
光二は気が抜けたような感じがする。
聖なる棺に男が一人かよ。
光二はその男の体にさわろうとした。
一瞬、男の目がひらかれた。
光二の目とその男の目があった。なんて、むさいおっさんなんだ、光二は思った。
こいつが本当に世界を救えるのか。
「ときがみちたのか」
男は、そうひとりごちた。
光二は答えようがない。
「俺は何もしらん。するだけのことはした」
その男は北の詩人だった。
彼は光二の顔をにらんだ。
「なまいきそうな奴め、あまり、時代は変わっておらんな。こんな若造が活躍する時代なのか。いやはや。」北の詩人は溜め息をつく。そして機械神殿の折の遠い記録を呼び覚ましていく。
「私に歌えというのだな」
いやいや言っている。
「だれもあんたの歌声など聞きたくもない」光二がわけく。
が光二も、もうしゃべれない。光二が、なにかをいう前に、その男は中央の石舞台にたっていた。
「 このおっさんがこの船の、いやこの話の主人公ってわけか。、舞台だけはきれいに用意されているじゃなか」。
「ただ登場人物は誰ものこっちゃいないぜ」。光二の体ももう半分になっていた。
「俺は、最後まで見届けてやるぜ、ここまでして、死んじまうとは、俺も不運さ。
Vグループのやつらを、あの時殺しておくべきだった。特に、アキヨシと登をな。心残りだ」。
詩人を前に敬う様に、石の民はしりぞく。
「おっさん、はやく歌えよ。おれの体が残っているうちに。
しかし、あの恰好はなんだ、帽子に、なげいコートときたものだ」。
「俺の最後の見納めがあの姿かよ」。光二は急に有沙の顔を見たくなった。
「アリサ、最後はアネキの指輪でたすかったありがつよ」。
「でも俺はアネキの体を吹き飛ばしてしまった。許してくれよ。
でも。どうやらもうすぐ、アネキのそばへ、いけるさ」
光二はアルクの方をみた。アルクの体はもうない。
「 ミニヨン、すまん、あんたのおとうさんは助けてやれなかった。ええい、詩人とやらめ、早く歌え」。光二は、この世界が偽りで、自分たちがなにか主人公ではなかった疑念が渦巻く。
北の詩人は必死で思い起こそうとする。
がなかなか思い出せない。あの時、機械神がなにか、そうだ。
はるかな昔、「機械神が支配する世界で」処理した「石の歌」が詩人の頭に蘇ってきた。
機械神殿の地下で処理機構が、詩人の頭に組み込んだ歌。
詩人の口からその言葉が、関をきったように、なだれでてきていた。
詩人の言葉が『死せるものの船』に溢れる。「君は星星の船、、、、」
『死せるものの船』が輝きを増す。
やがて、おおいなる光が船をつつんだ。
光二は言葉もなく、それをみている。「おっさんよ。最後にやったじゃないか。
でも遅いぜ。光二は自分のからだを見る。残っていない。
こころの中のアインがつぶやいていた
『やがて、時の海がみちて、新しき世界が 』
『死せるものの船』は大きく膨らみ、ばらばらにとびちった。
船の部品のひとつひとつが人間の体に変化する。
「石の民」だった。
青き大地、つまり亜空間で分離した船の「石の民」のからだは、吸い寄せられるように、
樹里の世界に落下していく。
いまや光二の意識は「石の民」と共にあった。
急に青い空間を突き抜けていた。落ちる。
そんな感覚が光二を襲った。見た事のある風景が光二の目に飛び込んできた。
樹里だ、石の壁だ。
樹里の里の人々も半分に消えかかった体で、「石の民」が落下してくるのをみていた。
祭司長マニはつぶやいた。
『時の海がみちて、 石の壁に書かれていたとうりだ』
落ちてきた石の民の体は石の壁に密着する。
まるでジグソーパズルのように、その位置が決まっているようだった。
やがて、「石の壁」は、総ての「石の民」で満ちていた。
機械基盤にICがつけられるがごとく。
祭司長マニは考える。
はるかな記憶。機械神が、星を石に集積し、、、
そうか『死せるものの船』とは機械神が作った、滅びた世界を復活させる「シセツノモノノフネ」だったのか、、
石の民 「君は星星の船」第31回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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