夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第21回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube
■第21回■
ビブラフオーン・コンテストの日がやってきた。空は天頂まで晴れ上っている。
大教界に、その日移動して来ていた移動宮殿フォトン、
そのまわりに仮設された舞台には、ひとだかりができていた。
「デルガ、デルガ」
と大導師デルガをたたえる声が、渓谷にある大教界の壁に反響し、
段々と大きくなっていく。
「どうだな。私の人気の程は?」
デルガが、となりにいる道化師マリクに聞く。デルガはこころなしか
疲れているようだった。
「宣伝が効いたようです。これで、このビブラフオーンコンテストが成功すれば、デルガ様の
導師としての地位は磐石たるものになるでしょう」
「ふふ、君もそう思うか、朕もそう思うぞ。かわゆいい事をいうのを、道化師マリク、君の地位も朕に相応して同じく磐石となろう」
「ありがとうございます、デルガ大導師。未来への階段が今そこに
ございます。どうぞ、のぼらせたまえ」
「それでは、愚民なるゴルゴダシテイの民ばらの前に我姿をあらわそうぞ」
フオトンの壁の一部が開き、仮説コンテスト会場に階段がつながっていく。
観客のどよめきがおこる。
デルガは、舞台バルコニーに身を乗り出し、群衆にむかってはなした。
「ゴルゴダシテイの賢人諸君、よく集まってくれました。
ここ、聖なる「大赦界」渓谷の場所を借りて、私神のご加護を受けた「ゴルゴダシテイ」聖なる大導師、デルガはゴルゴダシテイの賢人を代表してビブラフォーンコンテヌトの開催を宣言するものである。
賢人諸君楽しまれよ。
ビブラフォーンの神なる調べを聴き、こよいのひととき、酔いしれられよ」
拍手が小さくおこり、それは拍手の嵐となり渓谷に響き渡る。
ビブラフォーンに対するゴルゴダシテイ住民の期待が、極度に大きいのだ。
デルガは続けた。
「今年も、多くのビブラフォーンプレイヤーが、他の都市から我々ゴルゴダシテイのために
参加してきてくれている。我々ゴルゴダシティの人間を楽しませてくれる
ために、はるばる参加してくれたのだ。
感謝とねぎらいの拍手を、彼らに与えられよ」
拍手が一段と大きくなる。フオトンから壁が舞台へせり出してくる。
昆虫の標本箱の大型に見える。しかしそれは、プレイヤー達が壁に虫ピンでとめられ
たようにとりついている。
そんな壁が、舞台の上に迫りよってきた。
もちろん、ジェイもいた。その他の多くのプレイヤーは、デルガが命
令したプレイヤー狩りでつかまった人達なのだ。
バイブレーターの「ハーン」、ハートブレーカーの「ムスカ」、クラッシャーの「プラス」の3人組の姿もその中にあった。
観客たちも、もちろんビブラフォーンのプレイヤー達全員が喜ん
で、プレイするとは思ってはいない、
「ブレイヤー狩り」の事は知って
いた。知っていなから、自分達がプレイヤーにならなかった安堵感
もあり、よけいにビブラフォーンが作りあげる「感覚世界」への期待に
胸おどらせている。
歓喜の声が、ビブラフォーン演奏の前からあちこちで
上がり始める。
(続く)
1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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