ロボサムライ駆ける■第29回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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「神聖ゲルマン帝国のルドルフ大王の宮廷で、何度かお目にかかっております」マリアは顔色一つ冷静に話す。
「どうじゃ、お主はゲルマンロボット。いざというとき、つまり、もしロセンデールと戦わなければならなくなったとき、そちは徳川、いや日本のために戦ってくれるかのう」
「もちろんのことでございます。私を受け入れてくれました日本こそ、今の私の故郷でございます」
「それは、ありがたい」
といいつつも、不安を隠せない徳川公廣だった。
もしマリアが変身するような事があったらどうなるのだ。
マリアの変身は世界に恐ろしい効果を及ばす。
マリアの体に秘密があるのだ。
その心配が幸いに徳川公廣の心を占めていた。
が、他に方法はないのだ。
「鉄、よいか。今からお前は旗本に回状を出して皆を集めよ。一丸となって、大阪湾に向かうのじゃ。ロセンデールの野望を崩せ。頼むぞ、マリア」
「わかりました殿様。お望みの通りにいたしましょう」
◆
三時間後、
鉄、マリア、そしてロボット旗本組の面々は、徳川空軍機「高千穂」「飛天」に乗り込み、西日本へと向かった。
徳川空軍基地から飛行船が飛び立つのを見送る男が一人。
「これで仕事がやりやすくなったわ」
その影は走り去った。
◆
その日の夜、東京城の建物は、夜風が吹いてビューツと唸っている。上層から東京の夜景が奇麗に見える。
徳川公廣は、その夜景を楽しんでいた。
「徳川公でござるか」
急に声がした。
「誰じゃ」
徳川公は回りを見る。
数十メートルの高さにある、東京城展望オフィスの窓から侵入して来るものがあった。
展望オフィス警報装置は作動していない。
その男は黒い服で身を固めている。顔も覆面で隠れている。
「貴様、何奴」
徳川公は小刀を引き抜いていた。
「やつがれは、西日本都市連合に仕えるロボ忍。花村一去。お見知りおきいただきたい」
ぐいと徳川公に近づいて来る。
「その一去とやらが、余に何用がある。また、この東京城の展望オフィスまで、どうやって上がってきたのじゃ」
あとずさりしながら徳川公は問いただす。
「ふっふ、ロボ忍にとってはたやすいこと」
「が、我らが護衛いかがいたした」
「全員、眠っていただいており申す」
「くそっ、肝心のおり役にたたない奴らじゃ」
「何しろ、ロボ忍者は、西日本が本場にて。徳川公、お体お預かり申す」
「何を申すか」
一瞬後、徳川公は当て身を食らわされていた。
「ふふっ、たわいもないのう」
にやりと笑う花村の笑みに折から上がる月の光が凄絶な凄みを与えている。
(続く)
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