ガーディアンルポ02「人間樹の星」第12回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
地虫族スキャッグが言った。ナーダ77の空が静かになり、つぶやいた。
「うまくいきましたね。スリーパー・ガーディアン・ビッグ様。奴らは完全に信じきっていますよ。あの種人間がグレイだとね。地球に辿り着いてからの奴らの行動が見物ですね」
ビッグは、表層人格を、今の今まで、人工的に作りあげていた人間樹木の番人という偽りのパーソナリティをかなぐりすてた。
「そうだ。彼らを監視していれば、コンタクトしてくる他のROW星人、つまり侵入者を突きることができるからな。彼らの表層人格はかなり厚い。君といる間、私といる間でもすきを見せなかった。二人は完全にガーディアンのクリスとヘルムになりきっている。いつROW星人の本隊から指令を受けるか、それを察知しなけれぱ」
「本物のグレイはどうしました」
「だいじょうぶ。安全な場所に隔離してある。後から私の船で地球へ連れて帰るよ。グレイには休息と治療が必要だ。それに新しい家庭が必要だ。それにMEを生じるための先祖にあたる子供がね。彼はかなりROW星人に痛めつけられていた。彼の話を聞いて私にはそれがよくわかった。彼が気づかないうちに私がかなり治療を行なったんだ。彼と対話しながらね」
「先刻、彼らが連れていった人間樹は?」
「ああ、彼には囮になってもらう。グレイということでROW星人のクリスとヘルムがこれからも守りをかためることになるだろう。もう我なに過失は許されない。今回のグレイのようにね」
煙の中から人間が数人とびだしてきた。
バル船長と船員達だ。彼らは煙で真黒になり、地獄船が乗っ取られて出発したのを見て怒り狂っていた。
ビッグは隠し持っていたレイガンを抜き、落ち着きはらい、全員を撃ち殺した。反撃のひまを与えなかった。
「地獄船のような害虫は削除すべきだ」
「これで、もう、地獄船もナーダ77に来ることはないだろう。約束通り、この星ナーダ77は君達地虫族の支配下となった。人間樹園も消滅した」
「その点に関して感謝しています。ビッグ様」
「いや、お互いさまさ、スキャッグ君」
「しかし、ROW星人の擬態技術には驚きました。私もあの船にセ″トされていた映像データを見なければ信じられませんでしたよ。あのガーディアンそのもののクリスとヘルムが、ROW星人だとはね」
クリスとヘルムのガーディアンロケットの残骸から、スキャッグが拾ってきたブラック・ボックスてには映像データが収められていた。 その映像データには驚くべき事実が写されていた。
ナーダー77への途上でロケ″トは攻撃され、クリスとヘルムは死亡した。
時をおき船の側壁から緑色のゲル状の生物が侵入してきた。
その生物は二つに分かれ、それそれヘルムとクリスの死体に被いかぶさった。
しばらくして二体の生物は二人の死体から離れて起きあがった。
始めはぼんやりした形だったが、人間の形をとり始める。
数分のも、そこにはガーディアンのクリスとヘルムそっくりの男が出現した。
彼らは死体を始末し、船をナーダ77へ向けたのだ。
それからコッタビッグヅト内で彼らは眠りに着いた。人間のパーソナリティを学習するのには時間がかかるのだ。
船が爆発したのは、医療チューブでクリスの体が入間でないと感知されたからだ。自動的に自爆装置か働いたのだ。
スキャッグはビッグに言った。
「これでスリーパーとしてのあなたの役目は終了しましたね」
「そうだ。今までの協力を感謝するよ、スキャッグ君」
スリーパー・ガーディアン・ビッグはガーディアンのヘルムとクリス2人のすぐ後で地球を出発したのだ。
ビッグの事はガーディアンの内部でもあまり知られていない。
彼はタイム・ジャンプを行ない過去へ瀕り、赤ん功の姿に変身して地獄船にわざとつかまったのだ。
先行してナーダ77に来ていたのだ・
今のビッグの姿は十才の子供なのだが、すでにもう数百歳陀なっている。
ビッグは長命族でもあり、最上級ガーディアンに属している。
いつまで、俺は戦い続けることができるだろう。
新生人類は果たしてROW星人に打ち勝つことができるだろうか。
ビッグは自問自答する。
俺はしかし、新生人類のため、自らの生存のためにもどうしても戦い続けなければならぬ。
ナーダ77の薄紫色の空を見上げながら、ビッグは思った。
終 20201231作成
ガーディアンルポ02「人間樹の星」第12回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/