石の民「君は星星の船」第21回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
「決まっているだろう。石の男の心底へだ」祭司アルクは言う。彼は娘ミニヨンを石の男の心そこから助けたい一心なのだ。
「ま、まだ心の準備が」光二のひざがわれそうだった。光二はミニヨンが死んだ光二の姉アリサだと信じているのだ。
「いまさら、何をいう、ここまできて」
「お前は男じゃないのか」アルクの祭司仲間ガルナが叫んでいた。今度は祭司ガルナが光二をばかにする番だっ
た。
「このおっさんにいわれると。ようし、早くいこうぜ、アルク祭司」
二人は沈んだ。 目の前にある石の壁、その中心にある石の男の中に。
『わっ、ここはいったい』
『ここが、石の男の『心底』だ』
ここはリあるな世界ではない。石の男の心の中なのだ。
光二のイメージとはかなり違う。灰色の霧がもやっている感じだった。二人のところに一
陣の風が吹く。二人の前に石の男が立っていた。
『アルクか、しょうこりもなく帰ってきたのか。
アルク、いくら私のところへ来ても、ミニヨンを返すわけにはいかんぞ』
石の男はアルクを認めると笑ったようだった。
『今度こそ、ミニヨンを返してもらう』
アルクがはりきっている。
石の男は、アルクのそばにいる光二に気がついた。
『アルク、その男はだれだ』
『石の男、よく聞け、この若者は聖砲をもっている。私が世界のはてまでいって探してき
たのだ』
『なに、聖砲だと』
この若者が聖砲をもっている。ひょっとして。
が、なぜ、アルクが聖砲の事をしっているのだ。
ひょっとして「死せるものの船」になにかがあったのかもしれん。
一度この若者にかまをかけてみるか。
石の男は、光二にいぶかしげに尋ねる。
『光二とやら、君は石の民ではないのか』
『石の民、いったい、なんだ。それは。俺はVグループの光二だ、フッコウドームじゃち
ょっとは知られた名前だ。そんなことより、ミニヨンをわたしな』
こいつは飛び切りのバカかもしれん、石の男は思った。が念には念をいれて。
光二には答えず、逆に急に石の男は光二の心にしずんでいた。
光二は樹里の人々とは異なり心理バリヤーなどはならってはいない。
なんだ、こいつの心の中は、ぐちゃぐちゃじゃ
ないか。光二の心の中は原色のかたまりだった。
それに有沙の思いでがいっぱいだった。
これはミニヨンか、いや少し、違うようだが、何か別のものが、驚くことがあった。 光
二の心のなかに、別の男の意識が隠されていた。
『お待ちしておりました。ムリム。私を助けにきてくださったのですか』
この心はアインという。石の男はよく知っていた。
『ああ、やはり、君か、アイン』石の男の名前はムリムという。
『そうです、あいつに追放されてこのありさまです。この光二とかいう男の心に閉じ込め
られているのです』
石の男ムリムの仲間、石の民アインの心が、光二の心底に閉じ込めら
れていた。
『この若者は石の民ではないのだな』石の男ムリムにアインがたずねる。
『そうです。あいつが私アインをとじこめる檻にしたのです』
『ところで、君は聖砲について知っているかね』
『はあ。どうもこの男、光二がもっているようなのですが、なぜか、わからんのです』
『聖砲は、我々があそこから追放された時に盗んだのですが』
『そうなのだ。なぜ、この男の手に』
『まあ、それはいい。さあ速く、この男の心からでるのだ。アイン、ひとりでも味方が欲
しいところだ。私、を助けてくれ』
『が、ムリム、この男の体と私の心は結び付けられているのです』
『という事は』
『この男も連れていかざるをえないのです』
『あの船へ、対決するために』
『そうです。聖砲を使って』
『よし、とりあえず、アルクを排除するか。そして、この光二とやらを、我々のために働
かそう』
石の男ムリムは自分の心底にまい戻る。
石の民 第21回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/