その腕もて闇を払え第8回
(1980年)「もり」発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■2071年、10月デス=ゾーン境界線の橋上
クロス・クライストは思いきり、体を前後にふり、いきおいをつけ、橋の上へとびあがろうとした。が二振り目で、アンテナが真中から折れた。体は空にあった。
クロス・クライストは体をひねり、橋げたへ飛ぶ。へぱりつこうとするが、すべり落ち、足先が瞬間川につかり。靴の先が硫酸焔で溶けてなくなっている。
車から落ちてきた内容物のしぶきがクロス・クライストの防護服にかかり、じゅっと音をたてて。溶解する。
ゆっくりとクロスは橋げたをよじ登っていく。ようやくのことで橋の上に立つことができた。
硫酸で腐蝕され始めた服をぬぎすて、軽装になる。
地球連邦軍所属の探索トレーラーを直しゆっくり、バブクさせ。橋の中央部分にもどした。
車と橋をゆっくり調べ始める。
後を振り返っても地球連邦軍所属の監視塔は立ちのぼる湯気の中でかすんで見えはしない。
車の下部シャフトのそぱと、橋のアスベストの上に小型の爆弾がしかけられていたようだ。
トレーラーがその上を通ると同調して、爆発するようセットしてあったらしい。
誰かが仕掛けをしていたのだ。
恐らく監視塔の男がやうたのだろう。
リチャード・コーヘソの反対陣営の奴らに扇われたのだろ。うか。
クロス・クライストはゆっくりと右手をみた。
この苦労の賜物である右手はロボットアームであり、病気はどういう影響を表わすのだろうか。
体全体に寒気がした。
それは降りつづく雨のせいかもしれない。
クロスは橋の上からもうI度もとの世界をふりかえる。もう、人間の姿では帰れない場所だ。
まだ同じような爆発物が2つや3つあるかもしれなかったのでゆっくりとトレーラーを動かした。
橋をやっとのことで渡り切った。
橋をすぎ、1キロほど行くと、アメリカの典型的な町の広場があった。雨やどりできる廃屋をクロス・クライストはさがし始めた。
くち果てた町並がまだ残っていた。
うち続く雨。寒気が再びてクロスの体を、急におそった。
いけない。細菌の変態作用が始まったのかもしれない。
クロスは手近かにある無人の家にはいる。
突然。クロスは、体が燃えあがったような気がした。
病気の第一期症状がやはりあらわれたのだ。体の変態作用だ。
人間以外のモノになる。恐れがクロスを襲う。
しかしクロス・クライストは、その家の床に倒れて、意識が遠のいていく。
そいて、今クロス・クライストの新しい精神の旅が始まろうとしてい
た
(つづく)20210706改訂
その腕もて闇を払え第8回
(1980年)「もり」発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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