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ロボサムライ駆ける■第54回■早乙女モンドの妻マリアは倒れ、別の人格マリア・リキュールと自ら名乗り、ロセンデール卿の味方と言う。霊能師・落合レイモンは使番・夜叉丸にリキュールを退治させようと。

2021年07月06日 | ロボサムライ駆ける
RSロボサムライ駆ける■「霊戦争」後、機械と自然が調和、人間とロボットが共生。日本・東京島「徳川公国」のロボット侍、早乙女主水が 日本制服をたくらむゲルマン帝国ロセンデールの野望を挫く戦いの記録。
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ロボサムライ駆ける■第54回■早乙女モンドの妻マリアは倒れ、別の人格マリア・リキュールと自ら名乗り、ロセンデール卿の味方と言う。霊能師・落合レイモンは使番・夜叉丸にリキュールを退治させようと。
 

ロボサムライ駆ける■第54回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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■第七章 血闘場(3)

「マ、マリア」

 ロボサムライ主水は倒れて身動きできない。

「ああ…、マリア…」

「ねえさん」

 思わず、鉄が倒れた奥方マリアの方に走っていく。

 

マリアの体に触る。

その時、鉄の脇腹に何かが突き刺さった。

電磁ナイフである。

 

そのナイフは、マリアの手から鉄の腹に深々と突き刺されたのだった。

 

「うっ、ま、まさか、ねえさん」

 信じられないものを見たような鉄。

 

「そうです、今頃気がついたのですか」

 マリア、いやリキュールは、ゆっくりと起き上がる。

「今までのすべての情報はそれじゃ…」

 つぶやく鉄。膝をつき、苦しげに鉄はマリアを見る。

 

「そうです、私リキュールの方がロセンデール卿に伝えてたのです」

「そ、それじゃ、あんまり主水のだんながかわいそうだ」

マリアは、マリアとリキュールの二重人格ロボットだった。

 

「黄色いロボット風情から、そんな言葉は聞きたくないですね」

 マリアの別人格リキュールは、

「それから、私を姐さんと呼ぶのも気に食わないのです。私の嫌いな黄色いロボットからねえ」

 と言い置いて、握っている電磁ナイフのつかをぐっと押した。

 

電磁波が、鉄の体を貫く。ビクッビクッと鉄の体が動く。

恨めしげに鉄がマリアの顔を見上げる。

「ねえさん、そいつはあんましだ…」

 鉄の下半身が吹き飛んで転がる。

 

「鉄…」

 主水が唸る。

 

「夜叉丸、マリア=リキュールを倒せ」

 観客のように様子を見ていた人間の中から声が上がる。

 霊能師・落合レイモンが夜叉丸に命令していた。

「御前、わかり申した」

 

 夜叉丸が、背中から「鉾」を引き抜いて、祭壇に立っていた。

「異国の女ばら、私が退治してくれよう」

 

「ほほう、霊能師に私淑する魔道師風情が何をおっしゃる。私の腕をとくとごろうじろ」

「マリア」

倒れた主水が、とぎれとぎれにしゃべる。

 

「ふふん、気安くお呼びでないですわ、このアジアの黄色いロボット」

「お前…」

 冷や汗がしきりと主水の顔を流れ落ちる。

 

「ふふ、そのとおり。彼女リキュールは、昔から我々聖騎士の一員だったのですよ、主水くん」

 後ろから、リキュールの肩を抱き、ロセンデール卿が勝ち誇って続ける。

 

「貴様、先刻…。くそっ、背後で糸を引くのは、やはり、ルドルフ大王か」

「陛下を、呼び捨てにしないでください!主水くん」

 

 ロセンデール卿のハンサムな顔は赤くなる。

 

「そうよ。我がルドルフ大王は、ユダヤの血と黄色い血が一緒になって、白色帝国を脅かされるのを嫌っておいでなのよ」

 リキュールは吐き捨てるように言った。

 

「夜叉丸、薬剤タンクを投げろ」

 傍観していた霊媒師落合レイモンが、部下の夜叉丸に、自分の薬タンクを示した。

薬タンクは、霊媒師落合レイモンのいわば、生命維持装置である。

「ですが、御前」

 

「よい、このさいじゃ。後は何とかなろう。心柱をあやつらヨーロッパ勢に取られては後の祭りじゃ。まず、わしの体をより、あやつらを倒すことじゃ」

 

いつもは強気な落合レイモンも青い顔をしていた。

「それでは、御前、許されよ」

 

夜叉丸は、そう叫び、レイモンの背中に張り付いている薬剤タンクを掴み、神殿の最上段から舞台に向け投げ降ろす。

「やーっ」

 夜叉丸が、落合レイモンの薬をばらまいた。

 

祭壇、舞台は、薬のほこりでまいあがっり液体があたりを濡らす。

 

「ロセンデール卿、殿下、ここは私にまかせて。この夜叉丸とかと、勝負します」

 

「OK、リキュール嬢、君にまかせようか」

 ロセンデール卿はしりぞいた。

 

 夜叉丸とマリア・リキュールが対決していた。

 

「マリア・リキュールとやら、私夜叉丸の鉾は特別なのだ」

 夜叉丸は無表情に告げる。

 

「ほう、どこが特別なの。聞かせてほしいわね」

「それはこうだ」

 

 夜叉丸が、力を込めて鉾を投げる。

意外な展開だった。

「何よ、これは」

 

 目の前の出来事をマリア・リキュールは信じられぬ表情で見る。

 

鉾は、十倍に膨らみ突き抜ける。

一瞬後、マリア・リキュールの体をばらばらに吹き飛ばしていた。

 

「ま、まさか」

 ロセンデール卿が一瞬青ざめた。

 

「日本古来の鉾。この古代都市では、古来から、皆様方の霊気を集めて膨張する」

 冷徹に夜叉丸が言う。

「そうじゃ、今回はわしの薬で膨張させたのじゃ」

 

「くそ、マリア=リキュールの敵、私が貴様を倒してやる」

 主水は祭壇の所で倒れたままだ。

 

 主水は無視され、最壇上はタッグマッチの様相を呈している。

「夜叉丸よ、お前の本当の力をお見せしろ」

 

「よろしいので、落合レイモン様」

 

「よいよい、夜叉丸、少しは皆を驚かせてやれ」

 霊媒師落合レイモンは、この古代神殿の舞台で甲高い声で言った。

 

(続く)20210706改訂

■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(3)

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