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義経黄金伝説●第9回

2005年01月06日 | SF小説と歴史小説
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■義経黄金伝説■第9回 
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(C)飛鳥京香・山田博一
http://www.geocities.jp/manga_ka2002/



第2章3 1186年 鎌倉■■
 頼朝屋敷を出た、西行の背後から声が掛かる。西行は
後方を振り向く。
「西行殿、ここで何をしておるのじゃ」
(聞いたことのある声だが…、やはり、)
頼朝の荒法師にして政治顧問、文覚(もんがく)が、後
ろに立っている。傍らに弟子である、すずやかな眼差し
をした小僧をはべらしている。
「おお、これは文覚殿。先刻まで、大殿(頼朝)様と話
をしておったのじゃ」
「話じゃと、何かよからぬ企みではあるまいな」
 文覚は最初から喧嘩腰である。
文覚は生理的に西行が嫌いだった。
西行は院をはじめ、貴族の方々とも繋がりをを持ち、い
わば京都の利益を代表して動いているに違いない。その
西行がここにいるとすれば、目的は怪しまなければなら
ない。
「西行、何を後白河法皇(ごしらかわほうおう)から入
れ知恵された」
 直截に聞いている。元は、後白河法皇様から命令され
、伊豆の頼朝に旗をあげさせた文覚であったが、今はす
っかり頼朝側についている。それゆえ、この時期に、こ
の鎌倉を訪れた西行のうさん臭さが気になったのだ。
「さあ、さあ、もし、大殿に危害を加えようとするなら
ば、この文覚が許しはせぬぞ」
 西行も、この文覚の怒気に圧倒されている。

文覚は二〇年ほど前を思い起こした。
1166年京都。
「西行め、ふらふらと歌の道「しきしまみち」などに入
りよって、あいつは何奴じゃ」
 文覚は心の底から怒っていた。文覚は怒りの人であり
、直情の人である。思うことは直ぐさま行い、気に入ら
ぬことは気に入らぬと言う。それゆえ、同じ北面の武士
(ほくめんのぶし)のころから、そりが合わないでいた


西行が、佐藤義清(さとうのりきよ)という武士であっ
たは、鳥羽院(とばいん)の北面の武士。院の親衛隊で
ある。西行は、いわば古代豪族から続く政治エリートで
あり、それがさっさと出家し、歌の道「しきしまみち」
に入った。それも政治家など上級者に、出入り自由の聖
(ひじり)である。

 いわば、北面の武士よりも自由を得、知己も増えたの
である。それが故、文覚の気に入らなかった。
 文覚の罵詈雑言は、京都になり響いていた。やがて、
後白河法王に対する悪言が、後白河の耳に入って来たの
である。
「私のことを悪し様にいう、文覚とか申す僧主おるそう
な」
「これは法皇様のお耳を汚しましたか。厳重に叱り付け
ましょう」
「よいよい、その文覚という男に、朕も会ってみたいの
じゃ」
「これは、法皇様も物好きな」
 やがて、文覚が、法皇の前に呼ばれて来る。 法皇に
対して正々堂々と政治の有り様を述べる文覚は、流石で
ある。一応し
ゃべり終えたと思われる文覚に、後白河は思いも付かぬ
言葉を告げた。
「どうじゃ、お主、面白い男じゃ。いいか、伊豆へ行っ
てみぬか」
「伊豆ですと」意外な言葉に言葉もない。
「そうじゃ、伊豆じゃ」
「何を申される。このおり、私を罪に落とされるつもり
か」
「いや、そうではない。良く聞け。源氏の頼朝が伊豆に
流されておる。その男に会って欲しいのじゃ」
文覚は頼朝を説得していた。1180年永暦元年、今から6年
前のことである。
文覚は、頼朝を前に懐の袋から、古びた頭蓋骨を取り出
していた。
「頼朝殿、この髑髏、どなたの髑髏と思われる」
 このとき、すでに文覚の幻術中に、頼朝は入っている

無論、そんなはずはない。それゆえ、常人の常識は通じ
ない。文覚の声が、遠くから聞こえて来るようであった

「亡き父君の骨ぞ」
といい、文覚は涙を流した。
「見られよ。平清盛のために殺された父義朝殿の成れの
果てじゃ。何も思われぬか。お主は義朝殿の子供ぞ。お
前に今源氏
の氏長者は、お主じゃ。頼朝殿、この平家の中でお主が
、今立ち上がらなければ、誰が立つというのじゃ。父君
、また源氏の恨み、このおり晴らすべきではないか。そ
れが「人の道ぞ」。 文覚は大きな声で、一気にしゃべ
り終えた。頼朝の質問の暇など与えはしない。頼朝も、
もう文覚の言語の勢いに飲まれるようだった。
 本来ならば、判断力の鋭い頼朝であったが、このおり
は熱病に取りつかれたようであった。
「よし、余が源氏の旗をあげるのじゃ」
サイは投げられていた。が、本当の振り手は、京都にい
た。後白河法皇である。
(続く)
(C)飛鳥京香・山田博一
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