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石の民「君は星星の船」第11回(1989年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
S■ 石の民(1989年作品)■
■ 第3章 光二
第2宇宙サーゴン、ドーム都市。
都市ドームいやゆるフッコウドーム、はこの廃墟を思わせるサーゴン星の表面に異様
に目立っている。
戦雲がさった星に、残ったわずかな構造物のひとつだった。復興という政府のやりかただ。
光二は敵対する少年グループ、Vグループのキッズの一人をホース(馬型ホバークラフト)からたたきおとしていた。
乱戦だった。このドームの支配を大きなものにするために。
「あねき!」光二は叫んでいる。
Vグループのキッズとの抗争だった。光二が横を見ると、
信じられない光景が光二の目に入ってきた。
こんな事がありえるのか。まさかこんな事が。
信じられない。
姉の有沙がホースからずり落ちて、ゆっくりとまるでスローモションの様に地面に落ちて行
くのが光二の目に映っていたのだ。
有沙。たったひとりの姉。その姉の体が落下していくのだった。
「有沙」その光二の声は、フッコウドーム・ドーム都市に反響するほどだった。
地面におちた有沙の体はすこしばかりはねあがり、再び地面でとまった。
首が横に曲がり、赤いものがちびちった。
光二の生きててくれという願いは、むなしかった。確実に死んだだろう。子供の頃から、
死体を、山とみてきた光二にはそれがわかった。
「アネキよう」
光二は地面に突進した。上空では、光二が地上にむかったのを機に、
Vグループのキッズグループがあっというまにいなくなっていた。
Vグループのヘッド(頭目)登が、この機に逃げろとの指示を与えたのだろう。
光二たちのBグループが待ち伏せていたのだ。Vグループは不利だった。光二はホースをあやつり、地面に降り
立つ。いったい誰がおねえをころしたんだ。
光二は動かなくなった有沙の体に泣き崩れ、それから、頭を持ち上げて泣き始めた。
仲間のBグループの連中もいなくなっている。気をつかったのか、
それともVグループをおいかけていったのか。
光二は17歳。かって生存していたという動物、豹のようなしなやかな体をした精悍な
男だ。
この男が生きている時代がこのように光二を変えてしまったのだろう。まだの
びざかりの180CMの体をもちあましていた。だが彼は、このフッコウドームの勢力を
2分するBグループキッズのヘッドである。
姉、有沙、20歳。地下保護ステーションで、ロボットマザーの手によって、光二と有
沙は姉弟として育てられていた。
地下保護ステーションは、この戦争前、両陣営が地上の組織や諸設備が潰滅した場合、何
年かたって地上にもどり、地上を復興するために作り上げた地中ステーションであった。
各ステーションには精子と卵子が冷凍保存され、地上が生物の生存可能になつた場合、子
供を生産するようにセットアップされていた。子供の育児には「育児法」によって研修を
受けたロボットマザーがあたった。
石の民第11回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/