ロボサムライ駆ける■第56回早乙女モンドの妻マリア・リキュールは、ゲルマン帝国の秘密兵器・流体ロボットだった。リキュールはロセンデール卿の頭脳を持ち、古代大和湖へダイブする。追うはサイ魚法師の潜水艦。
ロボサムライ駆ける■第56回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■第七章 血闘場(4)
「今頃気がついたのですか。そうよ、私はルドルフ大帝の秘密兵器。三人の流体ロボットの一人です」早乙女主水の奥方であったマリア=リキュールの声がこだます。
「ロセンデールの頭脳さえあれば、私たちのグループは再建できる。油断大敵よ、主水」
「くっ、マリア=リキュール、最後の最後まで私に逆らうのか」
「流体ロボットめ、もう一度これを食らえ」
側で見ていた夜叉丸の鉾が、再びマリア=リキュールに投げ付けられる。
が、今度は鉾はマリア=リキュールの体を突き抜ける。
空気のようにマリア=リキュールは立っている。
「これはどうした事だ」
夜叉丸がうめいた。
「誰も私を傷つけられないのよ。私の体は特別製なんだからね」
「博士、あのロボットは」
横で徳川公廣が足毛布博士に聞く。
「ヨーロッパには三体あると聞いておる。異星の生体金属でできたロボットなのじゃ。ルドルフの特殊兵器だ」
マリア=リキュールはロセンデールの首を取り上げ、
髪の部分をつかみ、祭壇から古代大和湖へダイブした。
大きな水音が響き、水面を波打つ。
「マリア=リキュール、待て」
古代祭壇の上から叫ぶ主水だった。
マリア=リキュールが消えた大和湖を見つめ続ける主水。
膝をつき、うなだれている。
「主水、どうする。我々の潜水艦があれば追いかけられるぞ」
側で見ていたサイ魚法師が、呼びかけた。
「やめてくれ、サイ魚法師。マリア=リキュールを逃がしてやってくれ」
呆然とした顔で主水が言う。理屈に合わぬことを、主水は口走っていた。
「しかし、ロセンデールが復活するかもしれんぞ」
なおも、執拗にサイ魚法師は言う。
「もういい、サイ魚法師、申し出は有り難いが彼女のことは忘れたい。今はこの目の前のことを収めたいのだ」
主水の目はうつろだ。
「すまぬが、ここではお前のいうことはきけん。さらばじゃ、主水」
サイ魚法師は、マリア=リキュールを追って、潜水艦に戻り、湖に潜行する。
サイ魚はマリア=リキュールを追うつもりだ。
ロセンデールに対する恨みがあるのだ。
「頭、いずこへ」
乗組員は、戦いの様子を観戦していたのだが、急に法師が戻ってきたのでびっくりしている。
「あの女ロボットを追え」
「ラジャー」
潜水艦「水鏡」は急速に潜水する。
『まて!まて!マリア、いやリキュールか。いい、どちらでもよい。なかなかよい女ではないか』
サイ魚法師は心の中で考えていた。
『無駄ですよ。サイ魚法師』
どこからか、声が聞こえてきた。
「そ、その声は…」
『私は流体ロボット。この水中では、あなたがたの潜水艦よりももっと早く走れますからね』
「ふふっ、物事はやってみなければ気が済まないたちでな、我輩は」
『では、勝手にしなさい』
「そう、勝手にさせてもらう」
(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(4)
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