源義経黄金伝説■第51回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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奥州平泉、高館屋敷で寝ている義経の枕元に、異形の者が現れていた。
義経は、気付いて起き上がり、とっさに刀を構える。
「何者だ」
「さすがでございますな。義経様、お静かに願います。私は東大寺闇法師、十
蔵にございます。ここに西行様からの書状を携えてございます」
十蔵は書状を差し出している。
「なに、西行殿の…。おう。お主は十蔵どのだな」
義経は、先年にあった十蔵の事を思い出し、書状をあらためる。
「西行様に、秀衡様からの密書届いております」
「秀衡様の密書、何ゆえに西行殿の手に」
「秀衡様のお子様たちのことを考えてのことでございましょう。西行様と京の
後白河法皇様。すでにご相談なさっておいでです」
「して、何と」
「義経様、この平泉で死んでいただきましょう」
十蔵は冷たく言い放った。
「何を申す」
義経は驚いている。
「よろしゅうございますか。鎌倉に、静様の和子様、生きておられます」
加えて、驚くべきことを、十蔵はさりげなく言う。
「なに……、それは誠か。して男の子か」
義経の驚きは、喜びに変わっている。
「はい、さようにございます。今は大江広元様が手の者が、育てております。
また、この事は、頼朝様はご存じではありません」
「大江殿が…。つまり、兄者が平泉を攻める時の人質という訳か」
義経は考え込む。
「いえ、頼朝殿の策は、泰衡様に義経様を打たせるおつもり…」
「む、何と、兄者はなんと汚い策をお使いになるのか。それで、我が子はどう
いう策に使われるのだ」
「おそらくは、義経様を平泉の武士たちと団結し、頼朝殿に当たらせないがた
め…」
「さすれば、私はどう動けばよいのだ…」
義経は悩む。もうあの源平の戦ではないのだ。この平泉の義経は別人のごとくなのだ。
「私が、義経様の身代わりになって、この地にて果てさせていただきます。義
経様は平泉からお逃げ下され」
十蔵は冷静に答える。義経が驚く番だった。
「何だと、私には縁のないお前が…代わりに討たれるだと、、」
「さようでございます。西行さまの命令でございます。十蔵のこの命、東大寺のもの。すでに闇法師となった段階ですてております。義経様はご存知あるまいが、私は源平の争いですべてを失っております。魂の抜け殻でございます。よろしゅうございますか、義経様。このときに乗じ、北、蝦夷へ落ち伸びてください。吉次殿が手の者が、お助けするでございましょう」
「重蔵殿、、」
義経は言葉がでてこない。
何ゆえにこの男は、私のために、、
そして、吉次殿が。
「吉次殿が、私を助け出すといわれるか……」
ようやく、言葉を発した。何かの感動が、義経の心をとらえている。
(続く)2012改訂
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