■聖水紀ーウオーター・ナイツー■第4回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
■聖水紀■(1976年作品)
アマノ博士は苦い思いをかみ締めながら、自分の研究所に戻った。
昨日まで、イタリア、トリノ市で開催されていた「宗教科学学会」の国際会議では、罵声はアマノに集中していた。
アマノは自分のデスクに座り、頭を抱える。もう、誰も彼を弁護しょうとはしないだろう。永久に学会へ復活の見通しはない。アマノは引き出しにある銃をつかんだ。自らの命を
その時、アマノは壁から侵入してくる何かを発見した。
そいつは、アマノに何かをいう。
『アマノくん、我々が君を選んだのだ。光栄に思いたまえ。我々は聖なる水。この地球をカイホウしに来たのだ』
「解放だと、一体、お前は何だ」
『宇宙の存在だ。地球人類に本当の自由を与えにきたのだ』
「宇宙生物がなぜ私のところへ」
『君が最高の科学者だと信じたのだ。我々は君が学会で何と呼ばれているか、知っている』
『めぐまれない科学者』水人たちが続ける。
『現代の錬金術師』水人たちが続ける。
「や、やめてくれ。君立ちは私に引導をわたしに来たのか。いわれなくとも、私は自分の意志で命を絶つ」アマノは頭に銃をあてる。『おまけに、我々は君が古代の宗派ドルイド派の狂信者だと知っている』
「そんな情報をどこから入手したのだ」アマノは驚く。
なぜ、かれらが、そのことを、闇の宗教であり2005年、地球政府によって弾圧撲滅、根絶されたはずのドルイド教の信者であることを。
『君を知るある男からだ』
『君の好きなイメージで地球を真実に目覚めさせるドルイド教による聖なる騎士団を組織してよい』
「騎士団だと」アマノにとって興味がある内容だった。
『君が学会で発表したとうり、地球には浄化が必要なのだ』
アマノは、銃を引き出しにしまった。奇跡がおこったのかもしれん。私に運命の神がほほ笑んだのかもしれん。「話しを聞こうか」アマノは、侵入者たちの方に顔と心を向けた。
■ インドネシアのアンダマン諸島。このエリアは驚異的な豪雨地域だ。
その中にあるスキャン島。その山岳地域に人々が集まっていた。その木は覚醒していた。地球の地霊と呼ぶべきだろうか。ともかくその木は地球の危機を感じていた。それゆえ、この木がたばねている世界中の呪術者が集められていた。
奇妙な形をした樹木のそばに、人々は集まっている。その中の二人が話しあっていた。
「ロイド、いよいよ我々の出番がきたようだな」
「そうだ、我々が単なる呪術師でない事がわかるだろう」
「地球を救う大地の使者だからな」
「レインツリーよ、我々は感謝します」
彼らは樹木の前にひざまずいていた。
その木レインツリーは樹液を流した。
ひざまずく人々の元まで、その液体は流れていく。真っ赤な血の色だった。
「吉兆だぞ」先刻の男が叫んでいた。
■ 聖水を含んだ雨が地球全体を覆っていた。
いかなる機械的防御も聖水の前では無力だった。
例えば、聖水は電気回線に侵入するのもたやすい。どんな地球上の物質も聖水を遮ることはできない。聖水は物質の組織のすきまを通過した。聖水の前では無力化された。
■宇宙連邦軍は滅亡し、地球の機械文明も滅ぶ。地球は聖水紀にはいったのである。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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