ロボサムライ駆ける■第51回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■第七章 血闘場(1)
「だんな大丈夫ですかい」
なつかしい声がロボサムライ早乙女主水の耳元に響いた
「びゅんびゅんの鉄」が急にモンドの前に現れていた。
「ありゃ、徳川の殿様もおられる。これりゃ、殿様は誘拐されたんじゃなかったんですかい」
「今、解放されたのじゃ」徳川公が答える
「じゃ、あっしは、今から殿様を介抱しますってね」
笑いをとろうとした鉄だったが、まわりの白い目に気付く。
そういう雰囲気ではない。
「おまえ、どうやってここへ」
「へへぇ、だんな、上空をご覧なさいよ」
徳川空軍の飛行船が、主水の視界を占めていた。
地下空洞の天上部が抜けて、空が見える。
「おおっ、心強いぞ」
徳川公国空軍飛行船「飛天」及び「高千穂」号が降下してきていた。
「この殿様がね、心配して後からこれで追えっておっしゃったんで。おまけにロボット旗本組も乗せてきやしたぜ。いやっ、殿様って先見の明がおありだ。が、敵に誘拐されちまってのがどうもね」
「もう、鉄さんたら、いいかげんにしなさい。ああっ、主水殿、大丈夫なの」
モンドの奥方マリアも続いて降りてきた。主水の腕の中に飛び込んで来る。
大きな空洞がこの地下古代都市のうえにうがかれていた。
「おお、あんな大きな穴がいつできたのじゃ」
主水が抱き着くマリアに尋ねた。
「私達の方もびっくりしたわよ。急に近畿新平野の中心が陥没するのですもの」
「この飛行船のレーダーが、とらえやしてね。早速に駆け付けてきたってわけでさあ」
「ところで、ロセンデール卿はどこなのですか」
マリアが尋ねた。彼女マリアの緑の瞳は復讐に燃えていた。マリアはロセンデール卿との因縁があるのだ。
「先刻、逃げ出しおったのじゃ」
そういう二人の前に、上空に、神聖ゲルマン帝国のバイオコプターが現れている。背後には聖騎士団が続々と現れていた。
「主水君よ、我々は逃げた訳ではありませんよ。君たちが雁首をそろえて我々の手にかかるために、わざわざ、古代都市が現れるのを待っていたのですよ」
バイオコプターから、ロセンデール卿の顔が見えた。
「ロセンデール卿、ひきょうだぞ。一対一の勝負だ。降りて来い」
「ふふん、モンド君。君たち日本のロボット風情に卑怯物と呼ばれるのも豪気ですね。その挑戦にのりましょう」
「よろしいですか。他の方は手出ししないでください」
ロセンデール卿は同じバイオコプターにいるクルトフら家臣団に告げる。
「しかし、殿下、それは」
クルトフが難色を示す。
「よろしいのです。私のいうようにしてください」
「もしか、お負けになれば……」
「ふふ、クルトフ君、君は何をいうのですか?
そんなわけがないでしょう、この実力気力十分な私が、こんな田舎の日本のロボットに負けるなんて。何をおっしゃているですか。気分でもお悪いわけですか?」
クルトフはほほを赤らめる。
「主水どの、大丈夫ですか」
反乱ロボットの長、山本一貫が心配そうにいう。
「まかされよ、この舞台は、このロボサムライ徳川直参旗本、早乙女主水の一世一代の見せ場でござる」
ロセンデール卿が、バイオコプターから降りて来た。
が、シュトルフが率いる後続のバイオコプター部隊は攻撃の間をはかっている。
「クルトフ様、念には念を」
シュトルフの声がクルトフに聞こえる。
「シュトルフ君、心強い言葉ですねえ。後詰めは頼みましたよ」
「お任せあれ。クルトフ様」
「主水よ、神殿の中に隠れている剣を取るのだ」
足毛布博士が叫んでいた。足毛布博士の表情が急変していた。
「よいか、主水。お前のICチップは特別に選ばれたロボットにしか使われないチップだ」
『そうか、足毛布博士。あやつが、早乙女主水が、我々の探している「運命の七柱」の一人のロボットなのか』
急に心柱が足毛布博士に言葉を投げていた。
「そうです。みはしら様。あの主水が古来から伝わる伝説の石を、心に使ったロボットの一人なのです」
足毛布博士が丁寧に答えた。
『そうならば、私めも手助けせねばなるまい』
心柱が言葉を続けた。
神殿の床の真ん中から、棒のようなものが突出する。
「おおっ、あれは一体」
人々が驚く。
(続く)
■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(1)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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