新人類戦記 第三章 聖域 第16回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
(アメリカとソビエトの冷戦時代の話です)
■ビサゴス共和国 ジョバ川
トルワイユはまだまよっている。彼はポートモレスビーの裏の世界では知られた男であ
る。トルワイユは数日前、CIAのアランという男から接触を受けた。男と女をアコソー
アコンカグワ山まで運んでくれというのだ。
それも、彼らにトルワイユがCIAから碩まれたという事を気づかれずにという条件つきであった。
二人は危険な超涵力者であると聞いていたそれゆえ、けっして彼らに手を出してはなら
ないと、CIAのアランから厳命を受けていた。
が、この旅の途上での二人の行動を見ていると、そのアランの言葉が信じられなかった。
しかも、アランの指示をあおごうにも、連絡のしようがなかった。無線がたたき巣され
ていたのだ。さらに。プロペラシャフトに時限爆弾を仕掛けた者がいる。日本の情報部の
息がかかった男なのだ。
まだそいつは乗組員の中に潜り込んでいる。ヌノ、チャウ、ファイ。ヌーラ、マッセ、
この5名の中の誰かだ。 事態は一同悪くなっている。
クリスチャン号から運び込んだ三発の原爆だ。そいつは恐く、原爆が、解放戦線の手に渡る事を何と
か防ごうとするに違いない。
ビザゴス解放戦線の大多数の連中は今、姿を隠している。イデア号に十名の男達が武器
を各々手にして乗り込んでいるだけだ。地の応援部隊は両岸から、この船の行途を秘かに
監視しているに違いない。
トルワイユは考える。陳と秀麗と手をくんで、このダマル以下のビサゴス解放戦線の奴らをやっ
つけるプランもあり得る話だ。どちら側についた方がメリットがあるかだ。
突然、横に居たダマルが銃身を背中にあてていた。
「トルワイユ、あまり、むつかしく考えない方がいいぞ。少なくとももっと長く生きてい
たければな」
トルワイユの考えを読みとっているような口ぶりだだ。
「いいか、トルワイユ君達がいなくても、この船は劾かせるのだ。いいかね。我々の手だけで勁かせ
るのだよ」
その時、振動が二人を襲つた。船の後部で爆発がおこった。
「どうした」トルワイユは叫んでいた。
「また、エンジンがやられたようです」
後部から声が返ってくる。日本の情報部の手の者の仕わざに遼いない。トルワイユはそう思った。側
にいた解放戦線の男達が後へ走った。船倉の原爆の事を気づかっているんだ。
水音がした。誰かが、ジョバ川へ飛び込んだようだ。解放戦線側の男が。その場所へA
K47の銃弾を注ぎ込んだ。が、何も浮びあがってはこない。客室を調べにいったファイが叫ん
だ。
「陳と秀麗がいない」
解放戦線のダマルは決意したらしい。と瞬間トルワイユはダマルに飛びかかっていた。
奴らは船員の全員を殺すつもりだ。
解放戦線のダマルの叉ぐらをトルワイユの右足が蹴り上げていた。のけぞっ
たダマルに左のアッパーカットがきれいにきまった。昔やったボクシングのおかげだ。ダ
マルのモーゼル挙銃をひろい上げ、トルワイユもジョバ川ヘジャンプしょうとした。
「船長、飛び込むのはまだ早いぜ」
後から、淮かが押えた。ロッセだった。
「ここは一つ、一緒に励いてもらおうか」
「くそっ、それじゃきさまが」
銃弾が、耳元を走った。
「話はあとだぜ」
ロッセがトルワイユにAK47アサルトライフルを放り投げた。
続けてブリブジに飛び込んできた三人の男をトルワイユはT趨射でなぎ倒した。
船の後部で断続的に銃声が続いていたが、やがて静寂が戻ってきた。
残りのトルワイユの部下四名がブリッジへ 入ってきた。
「全員、無事だったのか。解放戦線の連中は」
「全員やっつけました」
ヌノが片手チにFLライフル、片手にまだ血にぬれている蛮刀を持って、にやっと笑った。
「ようし、このロッセをつかまえろ。こいつは日本清報部の手先だ」が誰も動かない。
「残念だが、船長。あんたの味方はいないぜ」ロッセが言い放った。
「我々は、皆、仲間なんだ。これからは我々と共に励いてもらおうか。さあ船を右に向け
るぞ」チャウが言う。
床にころがっていたハンディトーキーをヌーラがひらう。
「よし、俺は解放戦線のこのトーキーで、何とかビザゴス軍に連絡をとる」
舵を右に向けようとした一瞬、爆音がきこえ戦闘機の一連射がイデア号を襲った。
チャウの首が吹き飛んでいる。
「くそっ、あれはビザゴス空軍ではないぞ。ソビエト製の飛行機だ」
外へとびだしたロッセが叫んだo
「解放戦謎の奴らか。しかしなぜ」トルワイユも叫んでいた。
その戦闘機は、ルンのフオージャー戦闘機であつた。超能力者ルンはイデア号の様子を先刻から透視していたのだ。
再度、両誦からイデア号めがけ。23ミリニ連泡の呼撃が行なわれた。
船倉に固定された三発の原爆の止め金がはじけ飛んだ事に誰も気がつかなか
った。
そして三発の原爆はゆっくり浮き上がり、次の瞬間、消えていた。
ルンが、前もって、テレパシーで解放戦線のダマルに連絡をとったのだ。
原爆は、解放戦線の基地に向かいつつあったが、ルンが、原爆を念力でテレポートさせたのだ。
ルンが、不思詣に感じた。なぜ自分自身の体がテレポートできないのに、物体は移
勁でぎるのか。
ルンは思う、そうこのビザゴスにはいってからは超能力者の自身のテレポート能力は封じられていた。
悪魔の山アコンカグワ山の霊力が干渉を行なっているのだ。
原爆が消蔵したトルワイユたちのイデア号に、ルンのフオージャー戦闘機のミサイルが、発射された。イデア号は爆発をおこし、吹き飛ぶ。
トルワイユは寸前、ジョバ川へ飛び込んでいた。轟音と閑光が製った。
破片が落下して
くる。
トルワイユは水面に頑をあげた。
「くそっ、これまでか。庫論が誘発するぞ」
が、それは起らなかった。他には生存者はいない。さらにトルワイユの目の前で不思議
な筝がおこった。
百m先の川面から、男と女が浮びあがった、
欲分後、彼らは空中に浮いていて、さらに消滅した。
トルワイユは泳ぎながらも目をこする。
二人はまぎれもなく陳と秀麗であった。やはり、あの二人は超能力者だったというの
だ。そして彼らは消滅した。
■ビサゴス共和国 上空
その陳と秀麗は、今度は遠く離れたビザゴス空軍のコイン機の後部座席に出現する。
このブロンコ機は夏員二名の他に兵員六名が乗れるtイプだ。宣告のビサゴス空軍、マルノ中尉のブロソコである。
「ごくろうだった、陳、秀麗。みんなの目をイデア号にひきつけてくれていた事に感謝する。
我々は時間をすこしぽかりかせげた」
東郷竜が、彼ら陳と秀麗をこの竜とジウの載るコイン機ヘテレポートさせたのだ。
「日本の府報部の連中や、CIAの連中がまどわされたようですね」陳が言った。
「トルワイユなど真剣に悩んでいたようよ」秀麗が付け加えた。
話の最中、二人の顔は徐々に変貌してくる。
彼らの本来の顔に戻りつつある。
竜とジウもまた超戦士部隊の収容所から逃れた後、二人を探り出し、協力を求めたのであった。
二人は変身能力を持っていた。
「近くにいるソビエト戦闘機のルンが我々の在存に気づいたようだわ」ジウが警告を発した。
「ルン、決着はアコンカグワ山でつけよう。どうせ目ざす所は同一だ」
竜がテレパシーでべトナム人ルンに話しかけた。
Yak36機に乗っているルンはかってはベトナムにおけるアメリカ軍のパラ
サイコ=コマンドであり、彼らとは同僚であった。今はソ連の超能力戦士となっているル
ソであったが、竜の言う所、アコンカグワ山で彼らは出会えるはずである。
Yak36フォージャー機にとってコイン機に対する攻撃は容易だが、相手機は四名の超能力者が乗っている。
今は対決をやめておこうとべトナム人ルンは思った。
新人類戦記 第三章 聖域 第16回
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