ドリーマー・夢結社第6回
(1987年)星群発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
「夢工場?」
「Kは不思議そうな顔をする。
「君は、我々の質問に答える気はないらしいな」
「答えようにも、答えられない。俺は偶然ここに来たんだ。つまり俺はからっぽの人間だ」
「偶然だと。わかった。我々もそう悠長ではいられない。時間を省略しよう。君を分析してやろう。こ
こは夢工場。夢分析機械にはことかかないからな」
「夢分析だと、何をするつもりだ」
「すぐわかる。侵入者くん」
男がライフルでこづきながら、Kをとなりの部屋に連れていく。
そこにはにわけのわからない機械が数多く並んでいる。
中にカマキリを思わせる機械がある。
人一人が横たわれるベッドが真中にあり、その前後左右に大小のアームが無数に突き出ているのだ。
歯医者の治療機材をもっと大きく複雑にした形だ。
■夢の島のそばに、潜水艦が浮上する。
船外機付きのゴムボートが出され。仮面の男が、一人それに乗り込んだ。
「艦長、世話になったな」
「いえいえ、長官、あなたのお役に立てるのでしたら、いつでも、この艦を御利用下さい」
「わかった。せいぜい利用させてもらうよ」
男はボートの船外モーターを廻し、夢の島へ向かい始める。
仮面の男は、しばらくして、後ろをふりかえり、潜水艦が完全に沈下した事を確かめて、手元のスイッチを押す。
大音響と共に水柱があがる。小型のスイッチを海中へほおり投げる。
「グッドバイ」
潜水艦の部品が浮かびあがってくる海面に向かって、冷たく機械的にそうつぶやく。
そしてゴムボートで夢の島の方を目ざす。
「さあて、あとかたづけが大変だろうな」
男の表情は仮面の下でみえない。
■「さあ、これが自白機械だ」
彼らは、自白機械のベッドにKの体をくくりつける。
頭にはヘルメットをかぶせる。体を身動きできない程、金属リングでしめっける。体の各所にコードがつながれている。
「この自白機械は我々と違って容赦はしない。何しろ精密な機械だからな。侵入者くん」
そう言って。彼らはKを残し部屋から出ていく。
ヘルメットの内部からの声が響いてくる。
「いいかね、まだ時間は充分ある。君が自発的にしゃべりたいというのなら、その機械を止める事もで
きる」
Kは無言だ。
「その自白機械は一度、動き出せば、とどまるところを知らないからな。君の精神は。ごフバラになる。
それは確実だ」
機械による分析内容はとなりの部屋でモニターされている。Kの思考は解析され、結果はここのモニターにディスプレイされる。
すぐさま
自白機械の解析士が声をあげた。
「こやつはドリーマーだ」
「なぜ、ドリーマーがこの夢工場へ来たのだ」
工場長は、命令を下した。
「よし、白白機械のスイッチを入れろ」
「彼のドリームマスターは誰か調べてみよう」
解析士が言う。
ディスプレイは不明と出る。
「不明だと、そんな事はありえない」
ドリーマーはほかの人間の夢からしょうずる。
自分からは創造できない。あくまでほかの人間の夢からだ。
工場長は叫んでいた。
解析士も叫んでいた。
「この脳波は何だ。読みとれない。機械のキャパシティをこえる。オーバーランする」
『分析不可能』を機械のミニターは
繰り返し表示する。
ドリーマー・夢結社第6回
(1987年)星群発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/